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大勢の聞き手を前に「笑わせよう」と力むと口を滑らせやすい(写真はイメージ) =PIXTA

大勢の聞き手を前に「笑わせよう」と力むと口を滑らせやすい(写真はイメージ) =PIXTA

朗らかな会話に、適量の「笑い」は欠かせない。笑いを引き出す軽口やジョークは古来、しゃべりテクニックのコツともいわれてきた。しかし、どうやらしゃべりと笑いの間柄を勘違いしている日本人が少なくないようだ。使い方をわきまえない「冗談」は笑えないどころか、せっかくのキャリアに、みっともない「オチ」をつけてしまいかねない。

発言するにあたって、サービス精神の豊かな人が結構、いるものだ。「自分がマイクを握ったからには、絶対に聞き手を笑わせなければ」といった使命感に駆られているのか、随所に「笑いどころ」を用意してくれる。

だが、多くの場合、残念なことに、聞き手の笑いには「笑ってあげなきゃ、かわいそう」といった忖度(そんたく)がにじみがち。その最大の理由は単純に「冗談の程度が低いから」だ。

しばしば「失言」として騒ぎになる、政治家の発言にも、この種の冗談めいた物言いが少なくない。よく報じられるケースは、ゲストに招かれた政治家がパーティーで述べるあいさつや講演での「失言」だ。

たとえば、2017年4月に自民党二階派の政治資金パーティーで講演した、当時の復興相だった今村雅弘氏は東日本大震災の被害について「まだ東北、あっちの方でよかった。首都圏あたりだと莫大、甚大だったと思う」と語った。当然、辞任に追い込まれた。

こうした愚かしい発言はその後も後を絶たない。例を挙げればきりがないほどだ。メディアはその都度、政治家の言葉選びを糾弾するが、一向に収まる気配はない。底の浅い発言が批判を浴びるのはわかりきっているはずなのに、連鎖が止まらない理由の一つは、先に挙げた「冗談を言わないと、座が持たない」という、誤った責任感にも一因があるように思える。

もちろん、「つい、うっかり」の粗忽(そこつ)者もいるだろうが、それだけでは頻度の高さに説明がつきにくい。「面白いことを言わねばならない」というミッション意識がこのあしきハイアベレージの背景にあるのではなかろうか。失言や放言の多くが大勢の来場者や聴衆を前に生まれていることがこの仮説を裏付ける。

もし、そうなら、発言者たちが持つ「笑い」のセンスをレベルアップさせる必要がありそうだ。なぜなら、笑わせ方が根本的に間違っているとみえるからだ。

間違っているという言い方がきついなら、「古い」と言ってもいい。たとえば、彼らは「高低差」を笑いの源泉として好んで用いる。誰かをくさしたりからかったりして、優越感を際立たせるような話法だ。

大問題になった森喜朗元首相の「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」という発言は性別で「高低差」を印象付けた。結果的に女性をくさして、会場の大半を占める男性からの笑いを引き出す狙いが透けてみえる。

先に引いた東日本大震災のケースでは東北と首都圏に差を付けた。パーティーの会場だった首都圏の来場者を喜ばせようと考えたのだろうか。東北をおとしめて、被災しなかった首都圏在住者に「優越感」を与えるような物言いだ。差別やいじめと同じ根っこを持つ、レベルの低い「笑い」の演出だ。

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