どんな格好かというと、今どき見かけないグリーンの配色が懐かしいノルディックセーターに、グレーのスラックスとグレーのハンチング帽でグレーのウォーキングシューズ。ご本人はまったくお洒落なんて考えていないスタイリングなんでしょうけど、まるで北欧のアルプス辺りのコテージで見かける、おじいちゃんみたいで、カッコいいったらない。
見習いたい 大先輩のファッション
一方で、決してアンチファッションではなく、年齢と経験を積み重ねて自分のスタイルを持っているファッションの大先輩も、まだまだ現役でおられます。当NIKKEI STYLEメンズファッションで対談させていただいた服飾評論家の石津祥介氏(86)など、まさにそのひとりだ。
筆者がお会いした時のスタイルは、若々しいイエローのカシミヤのケーブルニットに白いボタンダウンシャツで、襟元からアスコットタイに見立てたバンダナをのぞかせて、上品なグレーヘアに合わせた薄いグレイのウールパンツ。靴は「最近はこれしか履かない」と、サイドに脱ぎ履きしやすいファスナーが付いたウイングチップ風の黒いビジカジスニーカー。

さすがメンズファッションの教本である「TAKE IVY」の仕掛け人だけあって、アイビーを基本とした石津氏のコンサバなスタイルは、まさにシニア世代のファッションのお手本といえよう。
石津氏とは盟友であり、日本のファッションイラストレーターの草分けである穂積和夫氏(90)も、SNSでフォロワー数が何万人もいる今どきのファッションインフルエンサーが束になってかかってきても、まずかなわない。
筆者とはこんなエピソードがある。ファッションイラストレーターのソリマチアキラ氏の個展が代官山であり、その時に穂積氏が「ちょっと服でも買いたいから一緒に行こう」と、弟子でもあるファッションイラストレーターの綿谷寛氏と3人で近くの「ハリウッドランチマーケット」に行くことになった。
そこで穂積氏は派手なチェック柄のCPOシャツを見つけて「暖かそうでいいね」と即決で購入。そのまま着てソリマチ氏の個展に行ったのである。これがまた履いていたジーンズにキャップとよくお似合いで、驚いたのをよく覚えている。
どこぞの国では偉そうに「老害が粗大ゴミになったら掃いてもらえばいい」なとど言って困ったおじいちゃんがニュースなルックになりましたが、ワレワレの大先輩たちはイケてるシニアのお手本であり、カッコいい人生の教本なのである。

1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN’S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。
SUITS OF THE YEAR 2021
アフターコロナを見据え、チャレンジ精神に富んだ7人を表彰。情熱と創意工夫、明るく前向きに物事に取り組む姿勢が、スーツスタイルを一層引き立てる。