まず仕事をやめてみる

白河 そうは言っても、長くなじんだ働き方を変えることに抵抗がある方も多かったのではないでしょうか。

橋本 私がはじめに強調したのは「まずやめてみろ」ということです。目の前にある仕事が本当に必要かどうか、疑問に思ったらとりあえずやめてみなさい、と。やめてみて、もし支障が出たら、そのときは復活させればいい。

ポイントは、「まずやめよう」という決断を管理職が明言することです。管理職がそう決めなければ、現場の担当者は手元の仕事を手放せるはずがありませんよね。勝手に手放して、何かあって怒られるのは嫌ですから。だから、上司が「やめていい。ダメなら戻していい。その失敗は絶対に責めない」と保証してあげることが重要なんです。そうやってどんどん業務を手放していった結果、ほとんど問題は起きなかった。少し不便になったとかはあるかもしれませんが、会社の業績が揺らぐほどの問題は起きない。「あったほうがいい」という程度の仕事は「なくてもいい」。まず積極的に手放していくことがスタートです。

白河 やめていいという、管理職のゴーサインが重要なのですね。

橋本 そうです。よく「改革はボトムアップから」なんて言われますが、現実には抜本的な改革は下から起こらないというのが私の考えです。まず、上から変えることを宣言して、率先する。その後に、下から「だったら、こうしたほうがいい」とアイデアが集まってブラッシュアップされていく。意思決定できる人間が進めないと改革は成り立ちませんよ。

白河 もう一つ、私が深く共感したのが、「20%スタート・80%クロージング」というスローガンです。これは社長のアイデアですか?

橋本 副社長の提案で始まったと記憶していますが、他社の取り組みを参考に導入したもので、要は「社内向けの仕事の過剰品質を防ごう」という業務効率化の一つです。

白河 上司に何か新しい企画を提案する際に、資料の完成度は20%くらいの準備で相談して、いざ動き出しても100%の完成までは目指さない。資料は80%くらいの完成度を目指せばいいという考えですね。これはなぜ必要だと考えられたのですか。

橋本 やはり無駄をなくしたいという理由ですね。半期の業績資料を作成する係の職員が、グラフにつけるコメントに「やや増加」と書いたり、「やや減少」と書いたり、延々と直しているわけです。私に持ってきた段階でまだ「このコメントはまだ調整中で変わるかもしれません」とか言っている。「これでいいじゃん。だってコメント変えたところで業績の数字は変わらないだろう?」と言って終わり。その資料も役員会議で一度配られるだけの用途ですから。社外にお見せする資料ならまだしも、社内の議論で使うだけの資料に労力は割かなくていいと言ったんです。ペーパーレスも徹底しました。「資料作成がうまい職員が評価される」という誤解が生まれないように、「脱・過剰品質」を言い続けています。

白河 大賛成です。過剰品質主義による無駄は、多くの会社で生じている現象だと思います。目的を履き違えていることが多いです。

橋本 原因は、資料を作っている担当者ではなく、上司にあるんです。作ったものに対して「もっとこうしたら」とか余計なことを言うから、先回りして部下の手数が増える。管理職になったら、とにかく余計な口出しはしないに尽きます。私が社長になった1年目にも、相当、仕事をカットしました。毎日のように、いろんな職員が社長室にやってきて、いろんなことを報告に来るんです。その都度、「この件に関しては次回から来なくていい」と言っていました。

次のページ
報告だけには来なくていい