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ビートルズ映画『ゲット・バック』 未公開映像に興奮

特別映像から読み解く『ザ・ビートルズ:Get Back』(前編)

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NIKKEI STYLE

2021年8月27日、1969年のビートルズを捉えたドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』が公開される。20年12月、映画に先駆けて、短い先行特別映像が公開され、ビートルズファンの間で話題になった。5分程度の短い映像なのにファンたちが興奮したのは、そこに見たことがないビートルズの映像が詰まっていたから。同じ時期のビートルズの姿を描いた映画『レット・イット・ビー』と、今回の先行特別映像の雰囲気はまったく違うように見える。この違いはどうして生まれたのか。ビートルズ研究家の広田寛治氏が解説する。[※特に注記がない場合、本文中の曲名で『』はアルバム名、「」は曲名を示している。例えば『レット・イット・ビー』はアルバム名、「レット・イット・ビー」は曲名を示す]

◇  ◇  ◇

2020年12月22日、日本でも新型コロナウイルス感染者が再び急増し2度目の緊急事態宣言が検討されるなか、ロック・ファンを笑顔にする出来事があった。コロナ禍で製作が遅れ公開が延期されていた新作映画『ザ・ビートルズ:Get Back』の先行特別映像が公開されたのだ。

それはトータル5分50秒で、冒頭の監督による製作状況の説明などを除くと、わずか4分20秒。だがそこに登場するビートルズの姿は、今から半世紀ほど前に公開された同じ素材を使った映画『レット・イット・ビー』(1970年8月日本公開)で描かれた陰鬱な世界とはまったく異なるものだったのだ。

先行特別映像は、リンゴ・スターの「グッド・モーニング、新しい1日だね」という元気なあいさつで始まる。続いてジョン・レノンが、ジョージ・ハリスンが起こしたとされる暴力事件の裁判を報じる新聞記事を読み上げ、ポール・マッカートニーも含めメンバー4人が楽しそうにそれに伴奏をつけていく。そしてジョンとポールがふざけて歯を閉じて歌う「トゥ・オブ・アス」へと続く。その後は「ゲット・バック」の演奏に合わせて、当時のさまざまな映像が次々と流れていくのだ。そのすべてが未公開映像で構成され、ビートルズの創作意欲と笑顔が満ちあふれていた。

8月27日に世界同時公開される予定の『ザ・ビートルズ:Get Back』の監督は、大ヒット作『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでアカデミー賞を受賞しているピーター・ジャクソンだ。彼はこの先行特別映像の冒頭で次のように語っている。

「(この映像は)予告編ではなく、映画の一場面でもない。56時間の未公開映像の断片をモンタージュ風にしたもので作品のスピリットを伝えるものだ」

19年1月30日の製作発表では、新しい映画は「タイム・マシーンに乗って1969年に戻り、スタジオで4人がすばらしい音楽を作っている現場に居合わせたような体験が楽しめる作品で、時空を超えたライブビューイング・ショーだ」とも語っていた。旧作映画『レット・イット・ビー』がビートルズ解散へと至るドキュメンタリーのごとく見られていたのに対して、今回の新作映画『ザ・ビートルズ:Get Back』は「解散」とはまったく別の視点、後期ビートルズのアルバム創作過程とライブを体験するエンターテインメント作品になると宣言しているのだ。

崩壊の淵にあったチーム「ビートルズ」

異なる視点で描かれるとはいえ、新作映画は旧作映画と同じ素材を使って製作されている。ビートルズ解散の前年69年1月に行われた、いわゆる「ゲット・バック・セッション」で撮影された大量の映像とレコーディングテープだ(ゲット・バック・セッションについては後述)。新旧2本の映画の違いをより深く知るためには、このセッションの内容を具体的に検証する必要があるが、その前にセッションへと至る経過と背景を概観しておこう。

ビートルズが世界的成功を収め不朽の名盤やヒット曲を次々に発表できたのは、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴという4人の希有な才能が奇跡的に融合したからにほかならない。だが、だが、彼らを支え動かす人々が作り上げた「ビートルズ」というチームの存在なしに、20世紀最大といわれるほどの成功を収めることはできなかっただろう。その中心にいたのは、ライブ時代のメンバー4人を制御し世界的成功へと導いたマネジャーのブライアン・エプスタインであり、4人のイメージするサウンドを作りあげレコーディングの基礎から極意までを伝授した音楽プロデューサーのジョージ・マーティンだった。

66年8月にライブ活動を停止した後も、ビートルズはロックをアートに変えたアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を発表するなど、音楽革命を継続していた。だがライブ活動がなくなったことで4人が行動を共にする機会は激減し、「ビートルズ」というチームも変容し始める。

67年8月、エプスタインが処方薬の過剰摂取で他界。車輪をひとつ失った「ビートルズ」は迷走を始める。その後、ポールが中心になって自分たちだけで映画『マジカル・ミステリー・ツアー』を製作したり、ジョージ主導でインドへ瞑想(めいそう)の旅に出たりするが、いずれもメンバー間にしこりを残してしまう結果に。やがてジョンは前衛芸術家オノ・ヨーコとの活動に前のめりになり、他のメンバーも自分のやりたい仕事を優先するようになる。

そして68年5月30日から10月17日に行われた『ザ・ビートルズ』(ホワイト・アルバム)のレコーディング時に、その問題が顕在化したのだ。

メンバー4人はレコーディング期間にも自分の仕事を抱え、スタジオに全員がそろうことは少なくなり、それぞれがみずからの曲をセルフ・プロデュースするようになっていく。サウンド作りに関するメンバー間の意見の相違も顕著となり、現場で衝突が起きることも増えていった。そんな雰囲気にいたたまれなくなったエンジニアの(マーティンの片腕でサウンド作りの要だった)ジェフ・エメリックが7月16日に降板。続いて8月22日にはリンゴがポールと衝突しビートルズ脱退を告げてスタジオを出てしまう。メンバーの説得でリンゴは9月3日にセッションに復帰するが、その日に今度はマーティンがメンバーの勝手気ままな行動に嫌気がさし、突然休暇を取り10月1日までセッションを離れる事態が発生。プロデューサー不在のままレコーディングが続けられる。

こうしたなか完成したアルバム『ザ・ビートルズ』は68年11月に2枚組で発売される。幅広い音楽性を持つ作品として高い評価を受けるが、この時点で「ビートルズ」というチームは崩壊の淵に立たされていたのだ。

ゲット・バック・プロジェクト起動

グループのありように危機感を抱いたポールは、アルバム『ザ・ビートルズ』発売前後にグループの一体感を取り戻すために「ライブ活動を再開しよう」とメンバーに呼びかける。だがこれは一笑に付され、その代わりに「ライブバンドの原点にゲット・バック」することを掲げて、テレビ番組でビートルズらしい特別なライブを披露するというプロジェクトを起動する。

4人は69年1月2日に新曲を持ち寄ってトゥイッケナム・フィルム・スタジオでリハーサルを開始。ライブ開催までの過程をテレビ・ドキュメンタリーにすることも想定して、セッションのようすはすべて録音・録画されることになった。こうして後に「ゲット・バック・セッション」と呼ばれることになるプロジェクトが始まるのだ。

テレビ番組の監督には、ビートルズの「ヘイ・ジュード」などのプロモーション・クリップで手腕を発揮していたマイケル・リンゼイ=ホッグを抜てき。撮影監督にトニー・リッチモンド、レコーディング・エンジニアにはグリン・ジョンズが起用された(グリン・ジョンズはのちにサウンド・プロデューサーを兼ねることになる)。マネジャーは不在のままで、ジョージ・マーティンもときおり顔は出すものの重要な役割を担っていたわけではない。つまりメンバー4人は、マネジャーとプロデューサーという両輪を欠いたまま新たなチームを組織し、メンバーそれぞれの事情や思惑を抱えながらこのプロジェクトを開始したのだ。

ゲット・バック・セッションは、69年1月2日から31日までほぼ1カ月にわたって続き、前半のトゥイッケナム・フィルム・スタジオでのセッションと後半のアップル・スタジオでのセッションに大きく分けることができる。

本稿の中編と後編では、70年5月に映画とアルバム『レット・イット・ビー』として発表されるまでを5つのステージに分け、その実態をひもときながら検証する。そのなかで、旧作映画『レット・イット・ビー』がいかにして生まれビートルズ解散へのドキュメンタリーと見なされてしまったのか、旧作映画や新作映画『ザ・ビートルズ:Get Back』の先行特別映像は、セッションの実態をどのように反映させているのかという2点を明らかにしていこう。

中編「ビートルズの新作映画 旧作との違い、特別映像で検証」>>

ひろた・かんじ 1952年愛媛県松山市生まれ長崎育ち。山梨県立大学講師などを経て,作家・現代史研究家。日本文芸家協会会員。『大人のロック!』(日経BP/ビートルズ関連)、文芸別冊(河出書房新社/ロック関連)、ムック版『MUSIC LIFE』(シンコーミュージック/ビートルズ関連)などの執筆・編集・監修などを担当。主な著書に『ロック・クロニクル/現代史のなかのロックンロール(増補改訂版)』(河出書房新社)などがある。

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