立命館大学の植木泰江・国際部次長は、「もちろん渡航できるのがベストですが、現状では『よりベター』を探るしかない。オンライン留学によって、留学希望者のモチベーションを継続させ、さらにこれまで留学に前向きでなかった層の掘り起こしもしたい」と意気込む。

そこで新たに、提携校の米カリフォルニア大学デービス校(UCD)と開発したのが、2月5日から実施中の「立命館×UC Davis “Global Online Study」だ。約1カ月、同大の学部生・大学院生・付属高校生ら約80人が5クラスに分かれ、UCDの2つの授業に参加する。平日午前中に、英語研修とSDGs(持続可能な開発目標)に関する対話型の授業を受け、午後は自由。週に1度、UCDの学生団体と交流したり学生スタッフに学習相談をしたりすることができ、4単位が取得できる。参加学生の負担は約15万円。奨学金を活用した支援も行う。

立命館大学は米カリフォルニア大学デービス校とオンライン留学のプログラムを共同開発=立命館大提供

「このプログラムには、実験が忙しく、従来の渡航型や長期間の留学をあきらめていた理系の学生も参加可能。午前中はオンライン留学をし、午後は実験というスケジュールも組めます」(植木さん)。今後は長期のプログラムも開発予定だという。

インターンシップにオンラインを取り入れる動きもある。法政大ではベトナムのIT企業で4週間働くプログラムなどを導入。同大グローバル教育センターの松田一重・国際交流課主任は「企業でもこれからは海外駐在という形ではなく、日本にいながらオンラインで現地の人と一緒に働くケースが増えていく。学生のうちから、オンラインで海外の人とコミュニケーションし、価値を生み出していく体験ができるようにしたい」と力を込める。

オンライン留学は「留学」なのか

だが、オンライン留学については懐疑的な声も少なくない。

留学を希望する都内有名私立大1年生の女子学生は、大学がフェイスブック上でオンライン留学をPRしている投稿を読んで、母親に「こんな家のベッドの上でできる留学なんて留学じゃない!」とイライラをぶつけた。

母親は複雑な面持ちだ。「私自身も大学時代に米国留学しましたが、圧倒的なマイノリティーという立場に立たされ、そこでもがく経験にこそ、留学の価値があると思うんです。娘には、『就活が始まる3年生より前に行かなきゃとか、休学すると卒業時期が遅れるとか、そんなことを気にする必要はない。慌てずに落ち着いて考えればいい』と声をかけました」

オンライン留学についてどう考えればいいのだろうか。留学ジャーナルの加藤さんは「私どものビジネスとしては渡航してもらわないと商売あがったりなんですけど」と前置きしつつ、「純粋に学生の立場に立てば、今、オンラインを試さない手はないと思います。今、渡航できないのは皆同じですが、その中で前を向いてやれることをやる人と、やらない人との差が開いていくでしょう」と話す。

加藤さんが挙げるオンライン留学のメリットは二つ。一つは当然ながら、通常の渡航に比べはるかに費用が安い点。もう一つは、語学力を効果的につけられる点だ。「週1~2回、英会話学校に1年通うより、オンライン留学で毎日3時間、2カ月でも集中してやる方が効果的。将来、渡航できるチャンスが来た時に、英語力がついていれば、その分高レベルの授業やプログラムを選択することができ、留学をより充実させることができます」

早稲田の鈴木教授は、オンライン留学を選ぶ際のポイントは、時差とプログラムの充実度だと指摘する。日本と欧米では時差が大きいため、場合によっては真夜中に授業を受けるケースも出てくる。その点、アジアは生活リズムが崩れなくて済むのでお勧めだという。「中国や台湾などはオンライン授業への移行も早かったので、比較的、質も高いと聞いています。ただし、プログラムは大学によって充実度がかなり違うので要注意。とにかくよく調べてから参加しましょう」

(ライター 石臥薫子)

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