2021/3/14

さらに加速していくと、サウンドの高まりで室内に活気が満ちてくる。モーターやインバーターが発しているのではなく、デザインされた音である。EVは静かだといわれるが、かえって嫌なノイズが気になると開発者が語っていた。ギアが発する音とロードノイズ、風切り音の3つだ。単純に静粛性を高めるのではなく、ドライバーの感覚に合ったサウンドを設計することで心地よさを追求する。エンジン音を模倣しているのではない。トルクの増大に合わせて音量を高めることで、速度コントロールの精度が高まるというデータがあるのだという。

2016年に導入された「G-ベクタリングコントロール(GVC)」が採用されているのはもちろんのこと。ステアリング操作に応じて減速Gを変化させ、荷重移動によってクルマの動きを制御する。MX-30 EVモデルに搭載されているのは「エレクトリックG-ベクタリングコントロールプラス(e-GVC Plus)」という最新のシステムだ。モーターは内燃機関に比べて格段に緻密な制御ができるので、理想に近い効果が期待できるという。自然な運転感覚を実現するのに役立っているのだろう。

いわゆる“EVらしい”ダッシュ力をあえて追わず、ペダルの踏み込み量に対して加速度がリニアに増すセッティングになっている

EVやシリーズハイブリッド車には、モーターの特性を生かした「ワンペダル運転」を可能にしたモデルがある。アクセルペダルから足を離すと強力な回生ブレーキがかかり、フットブレーキを使わずに停止できるというものだ。MX-30 EVモデルでは、この方法を採用していない。プレス資料に「マツダの安全思想にもとづき、発進から停止までモーターペダルだけで操作するシステムは採用していません」とわざわざただし書きを付けているほどで、「人馬一体」を掲げるマツダの考え方とは相いれない運転方法なのだ。

EVを意識させない運転感覚

MX-30 EVモデルのステアリングホイールには、パドルが装備されている。一般的にはギア選択に使うデバイスだが、このクルマにはトランスミッションがない。パドルで変化させるのは、回生減速度なのだ。5段階あり、デフォルトでは真ん中の「D」に設定されている。右のパドルを操作すると回生減速度が低くなり、左のパドルを操作すると回生減速度が強まる。ペダルを踏んだときのパワーの高まりとも連動していて、高速走行時や上り坂では右パドルを使ってスムーズに走行。コーナリングや下り坂では、左パドルを使うことで効率的に減速できる。

要するに、操作目的が内燃機関車のパドルと同じなのだ。MX-30 EVモデルに乗り換えても、ドライバーが戸惑うことはないだろう。EVであることを意識することなく、従来どおりの運転ができるはずだ。回生ブレーキも見事に調整されていて、違和感を覚えることは一切なかった。

インテリアのつくりはマイルドハイブリッドモデルと変わらない。プラチナサテンのホーンパッドリングや合皮のドアアームレストなどは最上級グレード「ハイエストセット」(今回の試乗車)専用

EVだからといって特別な気構えを求めないというのがマツダの考え方なのだ。もちろん純内燃機関車やハイブリッド車とは違う乗り味になる。2リッターエンジン付きのMX-30に乗ってみると、明確な差を感じた。EVが重厚だったのに対し、軽快な走りである。スポーティーであり、若々しくもある。MX-30 EVモデルが新しい価値を示しているのは確かだが、慣れ親しんだエンジンの感覚から離れがたいというのも理解できる。

MX-30の開発過程で、先につくられたのはEVだったという。後でマイルドハイブリッド版がつくられたわけだが、優先順位があるわけではない。マツダのイデアともいうべき走りと乗り心地の目標があり、それに向けてパワーユニットごとに仕上げていく。そこで差が生じるのは必然だ。開発陣によると、エンジンには「ファジー」、モーターには「不寛容」という特徴があるという。細かい技術的なことは分からないが、思い通りにコントロールできるということではモーターに軍配が上がるというのは理解できる。

「ハイエストセット」のシート表皮はブラックのクロス×ブラウンの合皮の「インダストリアルブラック」(写真)、またはグレーのクロス×ホワイトの合皮の「モダンコンフィデンス」からチョイスできる
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