日経Gooday

もち麦、オートミール、全粒粉パン。いずれもメタボを改善

大麦というと、従来の押し麦のようなポソポソした食感をイメージするかもしれないが、すっかり人気も定着している「もち性大麦(もち麦)」は、冷めても硬くなりにくく、もちもちした食感が特徴で、食べやすい。

これまでの研究をもとに、青江教授は「もち麦を白米に3割混ぜたものを1日2食でβ-グルカンを約3gとることができます。内臓脂肪低減効果や、コレステロール正常化効果は、このような十分実現可能な量で得られるのです」と話す。

これらの研究を受け、日本では、大麦由来β-グルカンについて以下の3つが「機能性表示食品」に表示されている。

● 整腸作用
● 血中コレステロール正常化作用
● 食後血糖値上昇抑制作用

また、世界でも、β-グルカンを豊富に含む大麦やオーツ麦で、以下のような健康強調表示が認められている。

β-グルカンは世界でもその健康機能が認められている

(データ:日本食生活学会誌26,1,3-6,2015)

もちろん、全粒穀物はもち麦だけにあらず。いろいろな種類の全粒穀物がスーパーマーケットに並んでいる。

「大麦と同様に、β‐グルカンを豊富に含むのが、オーツ麦(オートミール)。オートミールでも大麦と共通した効果が得られると理解してください」(青江教授)

では、全粒小麦や小麦ブラン(オールブラン)はどうなのだろうか。これらには、不溶性食物繊維の1つであるアラビノキシランが含まれている。このアラビノキシランは、不溶性食物繊維でありながら腸内で発酵する働きがあることがわかってきたことは、前回もお伝えした通りだ。大麦やオートミールだけでなく、小麦を含めて全粒穀物全般にメタボ改善効果があるととらえて、食べやすいものからトライするといいだろう。なお、アラビノキシランは、全粒小麦粉や、小麦ブランには豊富で、そのほか大麦やオーツ麦、また量は少ないものの玄米や発芽玄米にも含まれている。

さて最後に、メタボ改善などの効果をしっかり得るために、どんな点に気をつければいいのかを聞いてみよう。青江教授は2つのコツがあるとアドバイスする。

1. 毎日とり、長く続ける

主食を全粒穀物に置き換えて、毎日、長い期間継続すること。「腸内環境を変えるには、コンスタントに腸内細菌のエサとなる食物繊維を送り届けることが大切です。1日1回が習慣化しやすいのならまずはそこから始める。朝食でとるのを達成できたら、夕食にも取り入れてみる、というふうに回数を増やしていきましょう。1日2回の全粒穀物で、ヒト試験においても効果が得られています」(青江教授)。

2. 多様な食材からとる

1種類だけに偏らず、いろいろな種類の全粒穀物をとろう。「大麦のβ-グルカンは、大腸の真ん中あたりまでで発酵する一方、全粒粉や小麦ブランに含まれるアラビノキシランは、食物繊維が絡まり合っているため、長い大腸を通過するうちに発酵を受けやすい状態に変わり、大腸の奥のほうで発酵します。腸の入り口から奥まで、まんべんなく発酵が起こるように、多種類の全粒穀物をとりましょう」(青江教授)。

血圧低下、大腸がんリスクを下げる働きも

全粒穀物の健康効果は多岐に及ぶ。最新研究から高血圧の改善や大腸がんリスク低下も期待できることが見えてきた。

高血圧は、心筋梗塞や脳卒中など突然死リスクを高くするが、その代表的な対策である減塩を継続するのは難しく、セルフケアではなかなか改善しにくいのが問題とされている。全粒穀物には、この高血圧のリスクを下げる可能性も見いだされてきている。

高血圧を発症していない19~68歳の日本人男女944人を3年間追跡した研究からは、これを裏付ける結果が得られた。この研究では、対象者に食事アンケートを行い、全粒穀物の摂取量を評価したが、全粒穀物を「ときどき、またはいつも摂取する」グループは、「全く摂取しない」グループよりも高血圧の発症リスクが有意に低かった[注3]

この結果に対して青江教授は、「まだメカニズムは確認されていませんが、食物繊維をとることによって腸内の発酵が促されて産生される短鎖脂肪酸が、血圧調節を邪魔する腎臓の毒素を減らすのでは、と推測しています」と語る。

さらに、全粒穀物の摂取量は日本人女性の死亡率1位、男性の死亡率3位である「大腸がん」リスクと関連が強いこともわかってきた。

2019年に発表されたアメリカの研究[注4]において、全粒穀物の摂取量が少ない人では大腸がんリスクが高まる、と報告されたのだ(下グラフ)。この研究は、食事とがんリスクとの関連を評価したもので、数あるがんの中でも、食事の影響が最も大きいのは大腸がん(結腸・直腸がん)だった。そして、大腸がんのリスクの中で最も関連が深いのが「低全粒穀物」、つまり全粒穀物の摂取量が少ないことだとしている。

[注3]Nutrients. 2020 Mar 26;12(4):902.
[注4]JNCI Cancer Spectrum (2019) 3(2): pkz034

全粒穀物摂取が少ないと大腸がんリスクが高くなる
米国で成人の約8万人のがん症例をもとに食事とがんリスクの関連について評価した研究。グラフの横軸は症例数で、数字が大きいほど影響が大きいことを示す。全粒穀物の摂取が少ない、乳製品の摂取が少ない、加工肉の摂取が多い、野菜の摂取が少ない、果物の摂取が少ない、赤身肉(未加工)の摂取が多い、甘味飲料の摂取が多いの7つの食事要因で見たところ、大腸がんは最も食事因子との関連が強く、食事内容では、全粒穀物の摂取量が少ないとがん発症割合が高くなり、特に大腸がん(結腸と直腸)において大きい影響を示していた。次いで多かった食事因子は、乳製品の摂取量が少ないこと、加工肉の摂取量が多いことだった。(データ:JNCI Cancer Spectrum (2019) 3(2): pkz034)


青江教授は、大腸がんリスクと全粒穀物の関連についてこう話す。

「腸内細菌叢(さいきんそう)の乱れは、腸内細菌の種類の減少(多様性の低下)や有用菌の減少をもたらし、炎症性腸疾患や肥満症、動脈硬化、糖尿病、がんなどの病気リスクを高めることが報告されています。いっぽう、全粒穀物をとると、豊富に含まれる発酵性食物繊維をとることができ、腸内の発酵によって短鎖脂肪酸が産生されます。この短鎖脂肪酸が、腸内を有用菌のすみやすい環境に整えたり、腸粘膜バリアを保護したり、炎症を抑えるといった働きをすることに関わるのではないでしょうか」(青江教授)

メタボ改善にも大腸がんリスク予防にも関わる短鎖脂肪酸を増やすには、全粒穀物をしっかりとることで腸内細菌叢を改善することが重要だ。

メタボ改善や大腸がん予防を念頭に、ぜひ毎日とりたい全粒穀物。最終回では、パン派、ごはん派がそれぞれどのように全粒穀物を取り入れていけばいいかを聞いていこう。

(ライター 柳本操、図版 増田真一)

[日経Gooday2021年2月12日付記事を再構成]

青江誠一郎さん
大妻女子大学家政学部食物学科教授。1989年、千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。雪印乳業技術研究所を経て2003年に大妻女子大学家政学部助教授、2007年より現職。穀類、藻類の食物繊維がメタボリックシンドロームや消化管機能に及ぼす影響を研究する。

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