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ペットの行動は本当に悪化している?

イスラエルのテルアビブ大学の博士研究員リアット・モーガン氏は20年3月~4月、イスラエルに暮らすイヌの飼い主2906人を調査。その結果、イヌの里親になりたいという希望が大幅に増加していることがわかった。この研究結果は、20年11月24日付で学術誌「Humanities and Social Sciences Communications」に発表された。

モーガン氏は最も印象的な結果として、20年にイヌを飼い始めた人の80%近くはもともと飼う計画があり、「自分たちが何をしようとしているかをわかっていました」。これは人々が衝動的にペットを飼ったわけではないことを示している。

ボーエン氏の研究と同様、モーガン氏の研究でも、生活の質が低下していると感じている人は、ペットの行動も悪化しているととらえがちであることがわかった。たとえそれが事実でなくてもだ。

「客観的に見てイヌの行動が悪いのかどうかはあまり関係ありません」とモーガン氏は話す。「重要なのは飼い主がどう考えているかです」

過剰にほえるといった、より困難な行動は、人々がペットを手放すときに引き合いに出す理由の一つだとモーガン氏は懸念する。

幸い、イスラエルの回答者の大部分は、生活の質が低下していると感じていた人でさえペットを手放す予定はなかった。

それでも、少なくとも米国では、パンデミックをきっかけにペットを手放す人が増えると専門家は予測している。ペットの世話ができない、ペットを飼える手ごろな値段の住宅を見つけられないといったことが理由だ。

ペットの放棄を避けるため、地方自治体や非営利組織が飼い主を支援すべきだとマッコブ氏は提言している。例えば、カナダをはじめとするいくつかの国では、ペットフードバンクが設立されている。

良い方向への変化もある

いずれの研究チームも、自分たちの研究には明るい材料が含まれていると強調する。

スペインの研究では、一部のペットで行動上の問題が増加しているという結果が出たが、その後、複数の国で集めたデータは、ペットたちはほとんど問題なくやっていることを示唆しているとボーエン氏は述べている。

ボーエン氏はモーガン氏と同様、スペインの回答者は自身のレンズを通してイヌの生活の質を評価していると警告する。自身の気分が悪化していれば、ペットもそうなるに違いないと考えているかもしれないということだ。

「パンデミックがペットに及ぼしている影響は、あまり強くないようです」。ボーエン氏の調査では、「新たに行動上の問題を起こしたイヌは皆無に近く、すでに行動上の問題を抱えていたイヌでさえ、多くは悪化していません」

マッコブ氏は将来に目を向け、「パンデミックをきっかけに、私たちはライフスタイルの変化を強いられましたが、そのなかでこれからも残したいものがいくつかあります」と話している。自宅で昼食を取る、イヌの散歩に時間をかけるといったことだ。

「パンデミックによる良い方向への変化というのはとても少ないですから、可能であれば維持すべきです」

(文 RACHEL MAY、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年1月8日付]

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