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がんによる不安 うまく付き合うための3つの考え方

がんになっても働き続けたい~清水研さん(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

働く世代ががんになると、治療と仕事の両立や家族との向き合い方など、様々な不安を抱えることが多い。まして、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない中、感染への不安も加わり、もんもんとした気持ちになりがちだ。

自身もがんになったライター、福島恵美が、がんになっても希望を持って働き続けるためのヒントを探るシリーズ。前編「コロナ下、がん患者の不安 心のケアを専門医が伝授」では、精神腫瘍医としてがん患者やその家族と対話しているがん研有明病院の清水研さんに、がん患者の不安の状況を伺った。後編では不安を和らげる具体的な対処法をお伝えする。

不安を和らげる3つの対処法

――がん患者やその家族には、がんの再発や治療、就労などいろいろな不安があり、コロナ禍の今、感染を心配する不安もあることを前編で伺いました。では、実際に不安とうまく付き合っていくためには、どうすればいいでしょうか。

不安への対処法としては次の3つがあります。

(1)脅威をきちんと認識する
(2)できる予防策を実践する
(3)解決できない不安はそのままにする

それぞれご説明しましょう。まず、「(1)脅威をきちんと認識する」。「正しく恐れる」とよく言われますが、新型コロナウイルス感染症の情報に関しても、イメージに押しつぶされないで、まずどんな脅威があるウイルスかをきちんと認識し、過剰に恐れないことです。そうすれば、例えばコロナの感染を恐れて病院に行かず、がんの治療を受けずに家に引きこもってしまうほうがデメリットは大きいことが分かると思うのです。

脅威がどれくらいかを認識した上で、「(2)できる予防策を実践する」。コロナ対策なら、手洗いやマスクをして感染防御をします。ただ、対策を講じても、コロナに感染してしまうリスクはどうしても残ります。その不安をゼロにすることはできないのです。そこで「(3)解決できない不安はそのままにする」。「この不安を消さなければ……」と思うと余計に気持ちが焦ってしまいます。有名な「シロクマ実験」[注1]の話にあるように、「考えないようにしよう」と思うと、結果的にそのことを考えることになってしまいます。解決できない不安は心の中にいてもらい、そのままにしておきます。

[注1]1987年ごろに米国の心理学者が行った実験。被験者を3群に分け、シロクマの映像を見せた後、「シロクマについて覚えておくように」、「シロクマについて覚えても覚えなくてもよい」、「シロクマのことを絶対に考えないように」と指示した。最もシロクマのことを覚えていたのが「シロクマのことを絶対に考えないように」と言われたグループだった。

不安を増幅させないために「不安日記」を付けてみる

――どうすることもできない不安は、そのままにしていいのですね。不安を増幅させないようにするために、できることはありますか。

一つは私が「不安日記」と呼んでいる「週間活動記録表」を付けることです。1時間刻みで何をしていたかを書き、不安の強さを100%中何%かを採点します。その表を見ると、例えば「ワイドショーを見ていると不安は高いけど、飼い犬との散歩は心が和んでいる」ということが分かってきます。そこで、不安になりにくい行動を増やしていくのです。

私の外来で不安日記を付けてもらう時は、1週間ほど毎日続けてもらっています。ハードルが高い人は2、3日でも構いません。ご自分の不安のパターンが見えてくると思います。

――不安日記の他に、不安を和らげるよい方法はありますか。

「今ここ、この瞬間」に気持ちを集中するマインドフルネスですね。もともとのルーツは東洋の瞑想(めいそう)と言われています。ご飯を食べている時は病気のことを考えずにご飯の味に集中する、公園を散歩している時は季節の移ろいに気持ちを向けるというふうに。今ここを生きる、ということができるようになると、不安から少し離れることができると思うんです。私自身は時々、心のリセットとして、マインドフルネスの中の「ボディースキャン」という瞑想をしています。自分の呼吸や足の裏など、普段は意識していない体の微細な感覚に注意を向けるものです。

がんの病状に合わせた働き方ができる社会に

――働くがん患者にはこの先、今までと同じように働けるのか、不安になることがあります。精神腫瘍医の立場から見て、がんの治療と就労の課題をどのようにお考えでしょうか。

課題は3つあると思います。1つは、がんになってもすぐには会社に辞表を出さないこと。最近は少なくなりましたが、がんの告知に混乱して「もう働けない」と職場にすぐ辞表を出す方がおられます。退職を考えてしまうときでもまず休職という形にして、治療が終わったときに後悔しないようにしましょう。

2つ目は、医療機関と職場のコミュニケーションが円滑に取れるようにすること。患者さんは主治医の診断をもとに、職場に対してどういう病気で、どれくらい休職するかなどを話すことになると思います。この時、主治医側がどんな仕事ができて、どういう仕事はできないのか、もっと具体的に患者さんに伝えることが大切です。

3つめは、病状に合わせた働き方が堂々とできる社会になること。日本には、「他人に迷惑をかけてはいけない」「自分のことは自分でやる」というある意味、美徳ともいえる文化があると思います。ただ、その考えが行き過ぎると、「今までのように完全に働けないから申し訳ない」と思ってしまい、職場に対して肩身の狭い思いをする患者さんがおられます。化学療法をしながら仕事をする場合は、会社を休む日も出てくるでしょう。その時は、他の誰かにフォローしてもらうことが必要になります。職場としては簡単ではないことでしょう。しかし、がんは人ごとではありません。誰もがいつ病気になるかもしれないということを考えると、従業員の病状に合わせた働き方ができる体制を目指す必要があると思うのです。患者さんは支えてくれる周りの人たちに感謝しながらも堂々と働ける。そんな風土ができる社会になることを望んでいます。

中には病気で障害がある状態になり、「他の人に迷惑をかけている自分が情けない」と言われることがあります。がんになったのはその方が悪いのではないし、今、健康な人でもいつ病気になったり、障害を負ったりすることになるか分かりません。がんは誰にでも起こり得る病気ですから、お互いに協力しながら働ける社会になるといいなと思います。

――今は日本人の2人に1人が、がんになる時代ですからね。

「会社に迷惑をかけて申し訳ない」と考える患者さんは本当に多いです。私は、「申し訳ない」というのは、実際に悪いことをした時に考えるべきことで、がんになって休職することは申し訳ないことではないと思っています。経営が厳しい企業の人からすれば、理想論なのかもしれませんが。ただ、これから高齢者が増えていく日本社会としては、病気を抱えながらでも働けることが前提になってほしいです。

「~しなくてはいけない」をやめ、ありのままの自分で

――がんで思うように働けなかったり、家事ができなかったりして、肩身の狭い思いをしそうになっても堂々としている自分でいるためには、何が必要でしょうか?

人はそれぞれに「~しなくてはいけない」というmustの自分と、「~したい」というwantの自分がいるので、mustが強いと「こうあるべき」という理想像に自分自身が苦しめられてしまいます。「病気になっても、きちんと掃除をしなければいけない」というmustの呪縛があると、家の中が散らかっていることに情けなさを感じられます。そのような時は、「まあ、いいんじゃないか」と、mustの気持ちを緩めてみるといいですね。周りの目や社会的規範を意識するのではなく、あなたらしくがんと向き合ってもらいたいです。

もう一つ、社会的な視点でいえば、健常者と障害者という考え方がありますが、両者を区別する認識を変えることが必要だと思います。中には障害者のことを、「自分とは関係のない別世界の人たち」と思っている人がいます。しかし、自分がいつ障害者になるか分かりませんし、年を取って介護が必要になれば、色々な人のお世話になるかもしれないのです。

――最後に、がんと向き合っている人たちにメッセージをお願いします。

患者さんはそれぞれ、困難に向き合っていく力を持っていますが、就労や子育てなど働く世代の役割も抱えられて、大変なご苦労があると思います。悩んだ時は全国の精神腫瘍医[注2]を頼っていただきたいです。それから、実は私自身、mustが強いタイプで、短所にばかり目が行き、「自分はダメだ」と長年思い込んでいました。mustの自分を緩められるようになったのは最近のことです。2020年9月に『他人の期待に応えない ありのままで生きるレッスン』(SB新書)という本を出したのですが、がん患者さんに限らず、誰もが「自分は自分でいいんだ」と思えるような取り組みを続けていければと思っています。

[注2]日本サイコオンコロジー学会のウェブサイトで、全国の精神腫瘍医のリストが見られる。https://jpos-society.org/psycho-oncologist/doctor/

(ライター 福島恵美)

清水研さん
1971年生まれ。精神科医・医学博士。公益財団法人がん研究会有明病院腫瘍精神科部長。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。金沢大学卒業後、都立荏原病院での内科研修、国立精神・神経センター武蔵病院、都立豊島病院での一般精神科研修を経て、2003年に国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者、その家族の診療を担当。2006年から国立がんセンター(現・国立がん研究センター)中央病院精神腫瘍科に勤務。2020年から現職。主な著書に『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)、『がんで不安なあなたに読んでほしい。』(ビジネス社)などがある。

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