がんによる不安 うまく付き合うための3つの考え方がんになっても働き続けたい~清水研さん(下)

日経Gooday

がん患者は自身が抱える不安とうまく付き合う方法はあるのだろうか(写真はイメージ)(c)olegblag-123RF
がん患者は自身が抱える不安とうまく付き合う方法はあるのだろうか(写真はイメージ)(c)olegblag-123RF
日経Gooday(グッデイ)

働く世代ががんになると、治療と仕事の両立や家族との向き合い方など、様々な不安を抱えることが多い。まして、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない中、感染への不安も加わり、もんもんとした気持ちになりがちだ。

自身もがんになったライター、福島恵美が、がんになっても希望を持って働き続けるためのヒントを探るシリーズ。前編「コロナ下、がん患者の不安 心のケアを専門医が伝授」では、精神腫瘍医としてがん患者やその家族と対話しているがん研有明病院の清水研さんに、がん患者の不安の状況を伺った。後編では不安を和らげる具体的な対処法をお伝えする。

不安を和らげる3つの対処法

――がん患者やその家族には、がんの再発や治療、就労などいろいろな不安があり、コロナ禍の今、感染を心配する不安もあることを前編で伺いました。では、実際に不安とうまく付き合っていくためには、どうすればいいでしょうか。

不安への対処法としては次の3つがあります。

(1)脅威をきちんと認識する
(2)できる予防策を実践する
(3)解決できない不安はそのままにする

それぞれご説明しましょう。まず、「(1)脅威をきちんと認識する」。「正しく恐れる」とよく言われますが、新型コロナウイルス感染症の情報に関しても、イメージに押しつぶされないで、まずどんな脅威があるウイルスかをきちんと認識し、過剰に恐れないことです。そうすれば、例えばコロナの感染を恐れて病院に行かず、がんの治療を受けずに家に引きこもってしまうほうがデメリットは大きいことが分かると思うのです。

脅威がどれくらいかを認識した上で、「(2)できる予防策を実践する」。コロナ対策なら、手洗いやマスクをして感染防御をします。ただ、対策を講じても、コロナに感染してしまうリスクはどうしても残ります。その不安をゼロにすることはできないのです。そこで「(3)解決できない不安はそのままにする」。「この不安を消さなければ……」と思うと余計に気持ちが焦ってしまいます。有名な「シロクマ実験」[注1]の話にあるように、「考えないようにしよう」と思うと、結果的にそのことを考えることになってしまいます。解決できない不安は心の中にいてもらい、そのままにしておきます。

[注1]1987年ごろに米国の心理学者が行った実験。被験者を3群に分け、シロクマの映像を見せた後、「シロクマについて覚えておくように」、「シロクマについて覚えても覚えなくてもよい」、「シロクマのことを絶対に考えないように」と指示した。最もシロクマのことを覚えていたのが「シロクマのことを絶対に考えないように」と言われたグループだった。

不安を増幅させないために「不安日記」を付けてみる

――どうすることもできない不安は、そのままにしていいのですね。不安を増幅させないようにするために、できることはありますか。

一つは私が「不安日記」と呼んでいる「週間活動記録表」を付けることです。1時間刻みで何をしていたかを書き、不安の強さを100%中何%かを採点します。その表を見ると、例えば「ワイドショーを見ていると不安は高いけど、飼い犬との散歩は心が和んでいる」ということが分かってきます。そこで、不安になりにくい行動を増やしていくのです。

「不安日記」の例(出典『がんで不安なあなたに読んでほしい。』より)

私の外来で不安日記を付けてもらう時は、1週間ほど毎日続けてもらっています。ハードルが高い人は2、3日でも構いません。ご自分の不安のパターンが見えてくると思います。

――不安日記の他に、不安を和らげるよい方法はありますか。

「今ここ、この瞬間」に気持ちを集中するマインドフルネスですね。もともとのルーツは東洋の瞑想(めいそう)と言われています。ご飯を食べている時は病気のことを考えずにご飯の味に集中する、公園を散歩している時は季節の移ろいに気持ちを向けるというふうに。今ここを生きる、ということができるようになると、不安から少し離れることができると思うんです。私自身は時々、心のリセットとして、マインドフルネスの中の「ボディースキャン」という瞑想をしています。自分の呼吸や足の裏など、普段は意識していない体の微細な感覚に注意を向けるものです。

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