子どもが「自分は完璧主義だからダメなんだ」と思い込んでいたなら、「完璧を目指そう、卓越したものを目指そうとしたことで良かったこともあったんじゃないの? たとえば、よりよくしようとする、その力があったからこそ、ゲームのランキングにつながったと思うよ」と、その特性が持つプラス面に目を向けさせるきっかけをつくることができます。
「完璧主義という弱点を取り除く」というパラダイムから抜け出し、「卓越したものを目指そうとする資質が強みになるように、さらに育てていこうよ」というパラダイムにシフトできるのです。
まずは「強み」に気づくことから始める
さらに、際立った特徴をどう使えばいいのか、普段から強みの資質というレンズで子どもの言動を観察していると、親子の関係性も良好になります。たとえ、彼らが問題行動をしたとしても、「その状況では、どの強みが出過ぎたんだろう」と、あくまでも本人の強みを認めながら話を展開でき、子どもとの関係性を良好に保ちながら、一緒に考えていくことができるようになるのです。
関係性が良好であるため、進級や進路等の大事な話題についても、子どもとしっかり対話できる好循環が生まれてきます。
強みの使い方を練習し、「自分には価値がある」と子どもたちが思えるようにするためには、まず、自分の強みがいつ、どんなかたちで出てくるのかに、子どももまわりの大人も気づくことが重要です。
そのために、ぜひ子どもたちの言動、特に(リアルでもバーチャルでも)うまくいっていることを観察して、彼らがいつも自然にやっていることや際立っている特徴が出ている瞬間をキャッチし、できたらそれを本人に伝えてみてください。その際には、『さあ、才能に目覚めよう』や〈クリフトン・ストレングス〉で紹介される資質を知っておくとよいでしょう。いずれも強みの原石となるものです。強みが現れる瞬間を発見しやすくなります。
学校に行っていようといまいと、誰しもが強みを持っています。「自分には価値がある」と思えることは、ひとりの人間が成長していくうえできわめて重要な礎です。その礎の上に、子どもたち一人ひとりが豊かな人生を築けるように、ともに強みを育てましょう。
医学博士、公認心理師。慶応義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。専門はポジティブ心理学とストレングス研究。一般社団法人ストレングス協会を設立し、10代・20代の不登校・ひきこもりの支援や、教員・保護者向けの心理教育、各教育機関向けの心理教育プログラムの開発・監修を行う。著書に『ポジティブサイコロジー 不登校・ひきこもり支援の新しいカタチ』(金剛出版)など。
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