誰にでも「強み」はある

「自分はダメな人間だ」と思っている子どもたちにも必ず、強みはあります。自分にとって「自然とできること」であるため、気づきにくいだけなのです。

たとえば、「自分はダメな人間だ」と思い、不登校になってしまった男の子。彼はオンラインゲームをしている最中に、チーム内の調和を保とうと無意識のうちにお互いの共通点や妥協点を見いだしていました。この子には「共通点を見つけられる」という資質があり、無意識のうちにそれを生かしてチームを統率していたのです。

彼は、学校に復学した後も、この「共通点を見つけられる」という特性を生かして友達をつくっていきました。

また、ある男の子はゲームの最中、「敵がいないか」とまずはリスクを査定し、そのリスクを回避、予防することで前進していました。「リスクを見つけて、それを回避することができる」。これが彼の資質だったのです。通信制高校に入学後、彼はプログラミングのバグ探しで、その強みをいかんなく発揮しはじめました。バーチャルでもリアルでも、たとえ本人に自覚がなくても、うまくいっているときには必ず、強みの原石となる資質を生かしているのです。

私は、バーチャルやリアルを問わず、うまくいった話を子どもたちにたずねながら、彼らの強みを特定して、それを生かせるように働きかけています。自分の強みを見つけ、それを育てていく過程を通して、「自分には何もない」「自分はダメな人間だ」と思い込んでいた子たちが少しずつ自信を取り戻していく姿をこれまで見てきました。

強みのボリュームを調整し、自分自身をとらえ直す

強みを軸に自らをとらえ直すことで、「自分はダメな人間だ」と思い込んでいた子どもたちが自分を再発見することもあります。

ポジティブ心理学のストレングス理論に「強みは状況に応じて、ボリューム調整をする必要がある」という概念があるのですが、それは、「ある状況では強みとなるものでも、ある状況では使い過ぎてしまい、マイナスの力になる」という考えです。

たとえば、「粘り強さ」は、ある状況では強みとなりますが、使い過ぎると「しつこさ」になってしまいます。このように強みは、状況に応じてどこまで使うかを調整する必要があるのです。

この「強みのボリューム調整」という概念を理解していると、それまで欠点だと思っていたことも、「強みの使い過ぎ」としてとらえ直すことができます。

たとえば、よくある欠点のひとつに「完璧主義」というものがあります。子どもが「ぼくは完璧主義なんで、ダメなんです」と言えば、親御さんも「うちの子は完璧主義だから……。それさえ治ればもっと生きやすいんですけど」とおっしゃられる。これは、「自分のなかに悪いものがあり、それを取り除かないかぎり、自分はダメな人間なんだ」というパラダイムで人をとらえています。

このパラダイムでは、ダメな自分を変えようと一生懸命、「完璧主義でない自分」を装ってみますが、うまくいきません。かえって自信を失い、自己嫌悪に陥ることもよくあります。

しかし、この状況を「強みのボリューム調整」というレンズで見てみれば、「卓越したものを目指そう」とする資質を使い過ぎている状況なのかもしれません。

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