「論理的に」決める人の2タイプ
では、「論理的に」決めるタイプの場合は、どうでしょう?
「御社の理念や事業戦略については非常によく理解できました。一方では市場環境が厳しく、成熟業界ですから、今後の成長可能性がどれほどなのかを知りたいです。その情報を頂けますでしょうか」「マネジメントの方々とはお会いできて、相性も悪くないと確認できました。部隊をお預かりした後、問題なのはどのような部下たちがいるのかです。彼らとお会いできますか」
「多くの情報」×「論理的に」決める人は、転職時における選択ミスのリスクを極限まで減らそう、なくそうとします。これは非常に正しいアプローチで、まさに「転職は慎重に」なのですが、そこに落とし穴もあります。
このタイプは、上位の職務になればなるほど、応募先企業の社長や経営陣から「大丈夫か」と思われがちなのです。おおむねの選考を終えて、企業側としてはぜひ来てほしいと思っている。採用内定を通知した。しかし、その後、次から次へと、「この情報が欲しい」「次回はこの人と会わせてほしい」と、際限なく追加情報の要望がある。こんな人が時折、います。
こうした人は、経営の意思決定ができない人と見られる可能性が大。経営とは「判断」ではなく「決断」です。判断とは収集した情報を整理して多数決的に選択することであり、決断とは一定の情報を基にしつつも、予見したうえでリスクを取って、ときには多数ではないほうを選択するような行為です。
日々の事業・業務執行や経営とは、限られた情報と時間の中で、決断を繰り返していくこと。いつまでも「十分な情報を求めてくる」人は、経営不適格者であると企業はとらえます。特に百戦錬磨のオーナー社長は、確実にそう見ます。
そういう意味では、ミドルシニア、組織を率いる層については、「少ない情報」×「論理的に」決める人におおむね軍配が上がります。
自分なりの判断軸を持ち、そのための情報はしっかりと確認する。それに基づき、重要な部分が分かれば、そこで明快に意思決定する。社長から見て、決め際のよさ、決断力の観点で高い好感を持たれるのがこのタイプです。
この「少ない情報」×「論理的に」決める人にあえて懸念を述べるとすれば、本人としては「この理由で決めた」ということがはっきりしていますが、その意思決定ポイントが自身にとって本当に妥当なものであったかどうかはまた別の問題です。
意思決定力があるだけに、自分の考えに固執するところもあり、それが選択ミスにつながることもありますので、念のため周囲の意見、転職候補先として考えている方面に明るい人の見解を聞いてみるなど、「視界を広く」して最終意思決定に臨むと万全でしょう。
「少ない(限られた)情報」でいかに「論理的に」意思決定できるか、そこに感情(情熱)も乗っていれば言うことなしです。
ミドルやシニアの皆さんに求められる「リーダーとしての意思決定」とは、限られた情報と時間の中で自分なりの判断軸を持ち、決断していけるかの繰り返しに尽きます。転職での意思決定の際に、この資質がおのずと問われていることを認識して選考に臨めば、活動そのものにも、意思決定後の新天地においても道がひらけることは間違いありません。
※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。
