3密避けて生け花楽しむ 水は使わない、動画でイロハ

いけばな草月流家元の勅使河原茜氏の作品。左上から時計回りにガラス繊維、アイアン、竹、松が使われている(3日、東京都港区)
いけばな草月流家元の勅使河原茜氏の作品。左上から時計回りにガラス繊維、アイアン、竹、松が使われている(3日、東京都港区)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止でステイホームや「三密」回避が求められる中、イベントや展覧会の開催が難しい生け花の世界で新しい試みが始まっている。宅配便で作品募集する花展や、自宅で楽しめる生け花動画の配信など、コロナ下での新しい花の楽しみ方を紹介する。

自由な表現で知られるいけばな草月流は2月16日から、東京・赤坂の草月会館でNew Challenge Exhibition「水のないいけばな展」と題した展覧会を開催している。

「草月の歴史の中でもほとんど例がない。どんな作品が集まるのかドキドキしている」と話すのは草月流四代目家元の勅使河原茜さん。「水のない」という言葉通り、枯れものや着色素材、鉄などの異質素材を使用した作品のみを展示する異色の展覧会だ。

生花を使わない展覧会を企画したきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大だった。勅使河原さんは「展覧会などのイベントが次々に中止になり気持ちが沈む中、表現の場を作る方法がないかと皆で模索した」と振り返る。

従来の生け花展は、デパートなどの広い会場で多数の出展者が一斉に生けるのが基本で、密集や接触が避けられない。では、水を使わない作品を送ってもらうのはどうか、との若いスタッフの提案がヒントになった。

「草月はもともと、枯れものや鉄、アルミなど生花以外の素材を自由に取り入れてきた。素材を探すのが好きな人も多い。今までにない面白い展覧会になるのではないかと思った」(勅使河原さん)

展覧会について話すいけばな草月流第四代家元の勅使河原茜氏(3日、東京都港区)

作品は全国から宅配便で募集。来場不要であることが出展のハードルを下げたこともあり、予定を大きく上回る200点の応募があったという。

会場は、イサム・ノグチ作の花と石と水の広場「天国」が広がる草月プラザ。勅使河原さんの監修で、全ての作品を配置する。

開催期間は3月14日まで。4期に分けて入れ替え展示する(月曜日閉場)。開場時間は午前10時から午後5時までで、入場無料。28日まではアトリエスタッフによる竹と枯れものをメーンとした展示「Re:座・草月展」も同時開催するという。

鑑賞方法にも配慮した。家元による会場内の鑑賞ツアーを、インスタグラムやフェイスブックなどで配信する。来場が難しい場合や遠方からも、オンラインで楽しめる。

勅使河原さん自身も4作品を出品する。枯れものを使った作品に加え鉄のみで仕上げた作品もある。

勅使河原さんは「制約の多い1年を過ごす中でも、何かを作り出す人の力や心の動きは止められない。今だからこそ集まった200人の思いを味わってほしい。美術や彫刻など生け花以外のジャンルのアーティストにもぜひ鑑賞してほしい」と期待を込める。

一方、ステイホームの時間を楽しむコンテンツの提供を始めたのは、池坊華道会(京都市)。昨年3月から、動画サイト「ユーチューブ」で「お家でできる簡単いけばな」をテーマにした動画配信を始めた。

例えば、掃除などに使うメラミンスポンジをマグカップに入れて、そこに花を生けたり、ペットボトルを剣山代わりに使ったりする方法を動画で紹介。特別な道具を使わずに、家庭で生け花を楽しむ技を披露している。同会事業部長の徳持拓也さんは「身近な素材を使っているので、初心者や小さな子供でも挑戦しやすい」と話す。

もう少し本格的に楽しみたい人に向けて、季節の花と花器、キット一式がセットになった「池坊いけばな宅配便」も昨年4月に登場した。価格は4000円前後で、プロの華道家による解説書や見本写真も同封されており、自宅にいながら手軽に生け花に挑戦できるよう工夫されている。

徳持さんは「コロナ禍で心が疲弊している今だからこそ、花が癒やしや明るさをもたらすことができるのではないかと思う。暮らしの中に花があることの豊かさを発信していきたい」と力を込める。

日常生活にうるおいをもたらしてくれる花や植物。新しいスタイルの作品やオンラインなど、今までになかった楽しみ方が見えてくる。(ライター 李 香)

[日本経済新聞夕刊2021年2月13日付け]

エンタメ!連載記事一覧