スキャナー「ScanSnap」新機種 高速、1分で40枚も
戸田覚の最新デジタル機器レビュー
テレワークで書類の保存に悩んでいる人は少なくないだろう。受け取った名刺や企画書、パンフレットなどを自宅に保存するのは場所に困る。そんなときに役立つのがドキュメント(文書)スキャナー。大量の書類を片っ端からスキャンしてクラウドストレージに保存してしまえば、紙は捨てられる。クラウドにデータを置いておけば、会社や自宅、出張先などの場所を問わずにいつでも閲覧できる。
ドキュメントスキャナーといえば、PFU(石川県かほく市)のScanSnapシリーズの人気が高い。その最上位モデル「ScanSnap iX1600」(以下、ScanSnapを省略する)が登場したので紹介していこう。
前モデル「iX1500」からの順当なモデルチェンジと考えればよいだろう。iX1500との大きな違いはスキャン時間が高速になったこと。片面読み取り速度がiX1500の毎分30枚からiX1600では同40枚へと速くなった。
iX1500は販売終了となるので、今後はScanSnapシリーズの最上位機はiX1600になる。ただし、iX1600の機能の多くはiX1500にも搭載されているので、すでにiX1500を所有している人が買い替えるほどの差はないだろう。
公式オンラインストアでの販売価格は4万8000円(税別)となっている。予算が限られるなら下位モデルを選択するのも手だが、スキャンする枚数が多い人にはiX1600をお薦めする。
タッチパネルから単体で使える
iX1600の最大の特徴は、単体でも利用できることだ。搭載する4.3インチのカラー液晶パネルはタッチ操作に対応。セットアップを最初に済ませておけば、パソコンを利用することなく、単体でスキャンできる。詳しくは後述するが、スキャンしたデータは、クラウドなどに保存される仕組みだ。
Wi-Fi(無線LAN)での接続に対応しており、本体を好きな場所に設置できるのもテレワーク向きだ。一昔前のスキャナーはパソコンとUSBケーブルで接続して使うのが一般的だったことを考えると、大きく進化している。
スキャナーは、スキャンする用紙をセットするトレー(用紙トレー)と排出するトレー(排紙トレー)が必要なので置き場所を取る。iX1600は用紙トレーになるパネルを閉じることができ、開けると電源が入る。排紙トレーも収納できるので、使わないときにはかなりコンパクトになる。それでも使う際には、それなりのスペースを占有することになる。
さまざまな用紙のスキャンに対応
iX1600は名刺からA4判用紙までの両面読み取りに対応する。スキャナーが用紙サイズを自動的に判別してくれるので、ムダな余白ができることがない。さらに、カラーとモノクロも自動で判別し、白紙は取り除いてくれる。
傾き補正や、用紙の方向の自動検出にも対応する。つまり、適当に紙をセットしてスキャンしても、後で修正する必要がないのだ。書類の文字列を認識してファイル名も自動で命名してくれる。名刺なら会社名+個人名のファイル名が付く。もちろん、OCR(光学式文字読み取り)なのでミスやエラーもあるが、片っ端から連番のファイル名が付く仕組みと比べるととても便利だ。
専用アプリが非常に便利
前述のように、iX1600は最初にパソコンと組み合わせて設定を済ませておけば、その後は単体で利用可能だ。専用のアプリ「ScanSnap Home」が非常によくできており、ユーザーが自分の好みで読み取り環境を設定できる。
例えば、名刺を読み取ったら自動的にクラウドストレージの指定したフォルダーに保存する――という機能を追加し、iX1600の液晶パネルにボタンとして登録できる。以降は名刺をセットしたら、そのボタンを押すだけで指定のフォルダーに保存されるというわけだ。
さらに、「ScanSnap Cloudに送る」という設定を利用すると、用紙の種別ごとに振る舞いを変更可能だ。例えば、名刺はノートアプリの「Evernote」に保存し、レシートはクラウドストレージ「OneDrive」の特定のフォルダーに格納するようなこともできる。つまり、名刺、レシート、書類、写真などは種別を意識することなく、セットしてボタンを押すだけで、勝手に仕分けしてそれぞれの最適なフォルダーなどに保存してくれるのだ。
iPadなどでも利用可能
この機能はユーザーごとに切り替えることも可能だ。1台のiX1600でScanSnap Homeのユーザーライセンス4人分が付属する。ScanSnap Homeは1ユーザーあたり5台のデバイスで利用できる。
アプリをインストールすれば、iPadやiPhoneなどからでも簡単にスキャンできる。パソコンがなくても、ボタンを押すだけで読み込んだ書類をiPadなどに保存できるわけだ。タブレットやスマートフォンから簡単にスキャンしてすぐに書類を持ち出せる。出先でPDFの資料を読むような使い方にはとても向いている。
もちろん、デバイスに保存せずに、OneDriveなどのクラウドストレージに保存したファイルをiPadから読み出してもよい。ユーザーが使いやすいようにさまざまな方法が用意されているのだ。
iX1600で惜しむらくは、機能が豊富すぎて全貌を把握・理解して使いこなすまでにちょっと時間がかかること。決して難しくはないので、一定のITスキルがあれば使いこなせるはずだ。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は150点以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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