
『皇綱家』の基本メニューは、「ラーメン」。寸胴から片時も目を離さずに豚骨をじっくりと丁寧に炊き上げて創るスープは、丼が眼前に置かれた瞬間から、芳しい豚の香りが鼻腔(びこう)をくすぐる会心の出来栄え。レンゲでスープをひと口すすると、甘辛い醤油ダレがズドンと味蕾(みらい)の深奥を打ち抜く。
リッチな豚のうま味と、キレのあるしょうゆダレとの見事なコラボレーション。両者がしっかりと手を結ぶことで形成される「味覚中枢訴求力」の強さたるや、驚愕(きょうがく)のあまり、しばし忘我の境地に陥ってしまうほどだ。
このスープに合わせる麺は、千葉県はおろか、全国を代表する家系の名店のひとつ『王道家』(千葉県柏市)の自家製麺。麺肌を傷付けないように大釜で泳がせながら茹(ゆ)でられ、平ざるで麺上げされる。
麺にまとわり付くスープの分量は過不足なく、麺とスープの相性も抜群。こんがりと薫製された香り高いチャーシューの味わいもパーフェクトで、思わず「フルトッピングの『皇綱特製ラーメン』を頼めば良かった」と後悔したほどだ。
結論を申し上げれば、オープンして間もない現段階で、ここまで完成度の高いラーメンを創ることができるのであれば、激戦区池袋でも十分生き残っていける、と思う。アクセスのしやすさも加味すれば、ここまで紹介しがいのあるラーメン店は珍しい。是非、時間を見繕って足を運んでいただきたい。
続いてご紹介するのは、お取り寄せラーメン。このコラムでは、これまで外食を前提とした実店舗ばかりを紹介してきたが、このコロナ禍である。たまには、お取り寄せラーメンの名品を紹介してもバチは当たらないのではないか(もちろん、紹介するのは実店舗のお取り寄せラーメンであるが)。
お取り寄せラーメンであれば、東京都及びその近郊の店舗のラーメンに限らず、全国の名店の1杯を紹介できる。
巣ごもりを続ける皆さんにとっても、全国の名店の味を知ることができる絶好の機会となるはずだ。
今回、ご紹介するのは1952年(昭和27年)、福岡県久留米の地に創業し、現在は佐賀県基山町に本店を構える名店『丸幸ラーメンセンター』のお取り寄せラーメンである。

ひと言で「お取り寄せラーメン」と言っても、そのクオリティーは店によってマチマチ。結論から申し上げれば、実店舗のラーメンそのものを自宅で味わえるタイプの「お取り寄せ」は、意外と少ないのが現状である。