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豪華な財宝に船 英サットン・フー遺跡がひらいた古代

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ナショナルジオグラフィック日本版

1939年、英イングランド南東部のサットン・フー遺跡で、1400年前のアングロ・サクソン戦士のものとみられる墓が発見された。そこには、まるごと1隻の船の痕跡があり、目もくらむほどの豪華な品々が埋葬されていた。

この壮大な発見は、中世初期の英国に対する理解を「一挙に変えてしまいました」と、これらの遺物を大英博物館で管理している学芸員のスー・ブラニング氏は言う。

サフォーク州デベン川の近くにあるサットン・フーの発掘調査は、アマチュア発掘家バジル・ブラウンによって行われた。この土地を所有していたエディス・プリティが、敷地にある塚群に興味を持ち、ブラウンに依頼したのだ。

幾度にもわたる発掘作業で、ブラウンは長さ27メートルのアングロ・サクソン船に収められた263個の貴重な品々をゆっくりと掘り出していった。鉄や金、ガーネット、羽毛など様々な素材で作られたぜいたくな発掘品の中には、人の顔を模したヘルメットや、繊細な作りの肩の留め金、生活用品、そして武器などが含まれており、その多くは、シリアやスリランカなど遠く離れた場所にゆかりを持つ品だった。

世界中から集められた材料で精巧に作り込まれた品々は、『ベオウルフ』などの叙事詩に描かれた中世初期の社会が、現実であったことを示唆していた。「そうした話は、以前は大部分がファンタジーだと考えられていました」とブラニング氏は言う。

発見から82年がたち、サットン・フーの船葬墓はネットフリックスの新作映画『時の面影』のおかげで再び世間の注目を浴びている。しかし、この地でアングロ・サクソンの戦士と財宝に最後の土がかけられた7世紀初頭、まばゆいばかりの品々とともに死者を埋葬する慣習はすでに廃れ始めており、100年も経たないうちにイングランドの墓はより簡素になり、副葬品も少なくなっていった。一体、何がこの変化をもたらしたのだろうか?

消えゆく伝統

英ケンブリッジ大学ガートンカレッジの考古学者で、中世初期の埋葬慣習を専門とするエマ・ブラウンリー氏は、この慣習がなぜ、どのように途絶えてしまったのかを解明しようと、3万3000カ所以上の中世初期の墓に関する考古学的記録を調査した。1月21日付で学術誌「Antiquity」に発表された論文は、イングランドを中心にヨーロッパ北西部の237の墓地についての分析結果だ。

ブラウンリー氏は、過去60年間に発掘された何万もの墓に関する記述と絵を調査し、遺物の数を丹念に数え上げ、墓1カ所当たりの平均を計算した。また、墓地の使用期間や、最も信頼性の高い年代測定技術が示唆する墓の年代など、他の重要な情報も合わせて収集した。

研究の末にブラウンリー氏が作製した地図を見ると、イングランドでは早くも6世紀半ばには副葬品の埋葬が減り始めていたことがわかる。サットン・フーの戦士が625年ごろに埋葬されたときには、すでにかなり廃れていたのだ。

「7世紀が終わると、副葬品とともに埋められる人はいなくなります」とブラウンリー氏は言う。

データはイングランドに偏っているため、必ずしもイングランドがこの流れの先頭に立っていたとは限らないことに氏は注意を促す。とはいえ、イングランドでは720年代までに簡素な埋葬への転換が終わっていたが、北西ヨーロッパの他の地域ではさらに半世紀かかったことがわかっている。

イングランドの誕生と豪華な副葬品の終わり

埋葬慣習の変化は、イングランド地方が大きく変化した時期と一致していた。ローマ帝国の支配下にあったイングランドは410年ごろに独立。その後、ゲルマン系のアングル人やサクソン人といった征服者たちが次々に押し寄せた。

400年から600年の間に、これらの非キリスト教勢力が合体して複数の王国となり、7世紀にはキリスト教に改宗した。その後、強力なアングロ・サクソン王国のいくつかが、9世紀に始まったバイキングの侵略を生き延びた。これらが927年にイングランド王国として統一され、現代の英国王政の基礎を形成した。

船と一緒に埋葬されていた戦士は、いずれかのアングロ・サクソン王国の王だったと考えられている。サフォークを含む地域を599年ごろから624年ごろにかけて統治していた、イースト・アングリア王国のレドワルド王であるという説が有力だ。発見された硬貨の日付は彼の統治期間と一致しており、埋葬品の品質と価値の高さから、強大な影響力を持つ人物だったようだ。

墓の存在そのものからも、それはうかがい知れる。「川から船を引き上げ、船を入れられる大きさの穴を掘り、埋葬室を作るという行為は、まるで大掛かりな舞台のようなものです」とブラニング氏は語る。「大勢の人々が関わっていたことは想像に難くありません。葬儀自体が大規模なイベントだったでしょう。また、(塚は)大変巨大だったので、下の川を船で通り過ぎる人々からも見えたかもしれません」

サットン・フーは王の親族の墓地でもあったと考古学者らは考えている。王と思われる人物の近くには他にも17個ほどの塚があり、彼らはその中に埋葬された。さらに、小さな船がもう1つ発見されている。

埋葬慣習の変化の鍵は政治権力にあったのかもしれないと、中世初期の埋葬慣習を研究するロシア国立研究大学高等経済学院(HSE大学)の考古学者ハインリヒ・ハルケ氏は述べる。6世紀にイングランド全土の指導者たちが権力を統合して王国を形成し始めたため、権力誇示のために装飾品を埋葬することが重要でなくなったのではないかと言うのだ。なお、氏は今回の調査には関与していない。

一方、同じく中世初期を専門とする英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のアンドリュー・レイノルズ氏の説は違う。王の台頭は、上層階級以外のすべての人々を貧困に陥れたのだろうと言う。

「イングランドの王族が資源と土地を掌握するようになったことで、それまで小規模なコミュニティが享受していた自由は致命的な打撃を受けました」と氏は話す。「富が偏在するようになったのです」

 そこへキリスト教の台頭が加わった。ヨーロッパ全土でキリスト教が定着すると、埋葬塚は廃れ、王族の安息の地は教会の墓地や大聖堂の中の墓などに移っていった。それにとともに副葬品の数も減少した。8世紀以降は、王族もそうでない人も、白布や普段から身に付けていた装飾品、そして十字架などのキリスト教の装身具だけを伴って埋葬されるようになった。

レイノルズ氏は、サットン・フーの埋葬もそうした変遷の一例だと考えている。より大きな墓地の一部ではなく、一族のためだけの埋葬地であるようだからだ。

「この時代の上層階級の人々の埋葬地はすべて、下層階級の人々が使用していた埋葬地からは離れた場所にあります」と氏は話す。「高級品を独占し、ほぼ間違いなく地域で権勢を振るっていた人々が、派手な品々を手に入れるだけでなく空間的に離れることによって、自分たちを他の人々と区別しようとしていたのです」

一方、ブラウンリー氏は、西ヨーロッパでの交易や交流の増加が簡素な埋葬をもたらしたと考えている。「埋葬慣習における変化のほとんどは、同じような社会的地位にある人々との交流を通じて起きています」。新たな文化が最も早く広がるのは、同じような階層の人々からもたらされた場合であることを示す社会学的・言語学的モデルを引用して、氏は自説を説明する。

サットン・フーの埋葬のしかたは、王族たちの恐怖心が根本にあるのかもしれないとブラニング氏は言う。「キリスト教の到来に対しての反応だったのかという点については、様々な説があります。キリスト教以前のやり方への、最後の『万歳』だったのでしょうか。強さというよりは不安の表れであり、それを覆い隠そうとする象徴的な行為だったのかもしれません」

解明は未来に託された

埋葬慣習の変化は、より広範な社会的変化の中でどのように位置づけられるのだろうか。決定的と言える証拠が何もないため、学者たちがこれを正確に見極めることは困難だ。しかし、サットン・フー遺跡には未発掘の部分が残っているため、少なくとも中世イングランドに関しては答えが見つかる可能性がある。

ブラウンによる最初の発掘の後、1990年代初頭まで他の2つのプロジェクトで探索が続けられた。しかし、例の船にほど近い埋葬地の一部は、「新しい問いと新しい技術を持つ未来の世代に残します」と、英ナショナル・トラストの広報担当者が2019年に英イースト・アングリアン・デイリー・タイムズ紙に語った。

サットン・フーや、その後の簡素化していった埋葬のしかたの背景にどんな理由があったのかを抜きにしても、過去の人々がなぜ、どのように死者を埋葬し、何を副葬品としたのかを考えるのは、常に価値があることだ。

「墓は、意図的に地面に埋められた数少ない考古学資料の一つです」とブラウンリー氏は語る。「それ以外の大半は偶発的に残されたものです」。それぞれの副葬品は、「特定の目的を持ってそこに置かれています。その目的を再発見することが課題の一つです」

(文 ERIN BLAKEMORE、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年2月3日付の記事を再構成]

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