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「月経」について話しにくい状況を変えたい

昨年、32歳で女子1万メートルの日本記録を塗り替え、東京五輪代表の切符を勝ち取った新谷仁美選手(積水化学)も、7年前は体重40kg・体脂肪率3%という見るからに細い体形で、無月経だったといいます。彼女は自身の経験から、女性アスリートの「無月経問題」について記者会見で積極的に発言し、警鐘を鳴らしましたが、日本では月経などの女性特有の健康問題について、公の場で話しにくい風潮が見受けられます。また、男性アスリートが多い大学スポーツの現場では、こうした女性アスリートの問題に真剣に取り組む姿勢や機会がなかったようにも思います。

しかし、月経の話は女性が健康的に過ごす上で非常に大事です。今回の「学生スポーツありもり会議」で室伏さんは、トレーニングで体を酷使しながら貧血や子宮内膜症などに悩まされ、卵巣内の嚢胞(のうほう)を摘出する手術を受けた経験談を話してくださいました。非常に真実味があり、早くから自分の体を知り、自分の体に意識を向けていくことの大切さが、学生たちに伝わったと思います。

同時に、人に言いにくい、聞きにくい話こそ、積極的に話せる場を設けることは大事だと、今回の会議を開いて改めて感じました。全国の大学スポーツに関わる人の意識の変化につながればといいなと思っています。

コーチと選手のコミュニケーションの悩みも

今回は、男性がいると話しにくい女子学生も多いと思ったので、男性の指導者やトレーナーなどは参加者から除外させていただきました。しかし、婦人科系の正しい知識を持ちたいと思っている指導者は男性にも多いはずです。今後はどこかのタイミングで、男性の指導者なども交えて正しい月経や食事に関する情報を共有し、練習のあり方や競技との向き合い方について話し合ったり、競技者の前に1人の女性、人間であることを認識できたりする場を持てればと考えています。

また、婦人科系の話だけではなく、女性選手は、男性コーチとのコミュニケーションの取り方に悩んでいることもあるようです。選手だけでなく、女性アスリートにどう接していいか分からない男性の監督やコーチもいると思います。「伝えたいことをきちんと伝えるにはどうすればいいのか」「どんな言動がセクハラやパワハラにつながるのか」など、両者の悩みや考えを聞いて、最適な方法が見つかる場にもなればいいと思います。

今後、この「学生スポーツありもり会議」を2回、3回と定期的に開いていくことで、1人でも多くのアスリートが少しでも長く競技を続け、引退後も健康に過ごせるように、また次の世代のアスリートも競技が続けやすいように、尽力していきたいです。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2021年2月9日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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