経営層にロールモデルはない

弊社セレクションアンドバリエーションでは、従業員向けの人事制度だけでなく、経営層向けの人事制度も設計しています。そのとき常に意識していることは、従業員向けの設計基準と経営層向けの設計基準は異なっているという事実です。

そもそも人事制度設計では、大きく2つの視点で基準を定めてゆきます。それはビジネスに必要な人材を確実に確保してゆくためのリソースマネジメントの視点と、日々の活動で成果を出し続けてもらうためのモチベーションマネジメントの視点です。

従業員向けの人事制度設計では、新卒採用や中途採用、中途退職などの実態を見ながら、組織全体の最適化を考えてゆきます。だから年齢帯別や等級別、職種別など、従業員をグルーピングしながら、どのような仕組みがリソース確保とモチベーション向上に役立つかを考えてゆくのです。

しかし経営層向けの人事制度では、グルーピングして考えることはありません。

経営層向けの人事制度は、個人を見てゆきます。なぜなら、経営層として活動してもらう役割は、誰かに簡単に置き換えられるものではない唯一無二のものであることが大半だからです。

ここからわかることは、経営層を目指すための基本です。

従業員として出世していくためには、目標となる課長の姿、理想的な部長の姿などをイメージし、彼らの姿に近づくために努力することが必要です。それらをロールモデルとして定義して、研さんに励み、日々の業務を遂行してゆくと効果的です。

しかし経営層になるということは、他の人にまねができない、唯一無二の役割を担う人になることに他なりません。そこにはロールモデルはないのです。いや、あるとすれば自社の中ではなく、成功している他社の中にあるかもしれません。つまり他社に存在しているけれども、自社に存在しない役割を見つけ、それを担えるようになるために研さんしてゆく、という方法がわかりやすいでしょう。

時代を問わず存在する経営層へのキャリアパス。その道を歩むために、今自社に求められている新たな役割を考えてみてはいかがでしょう。特にコロナショックのような大きな変化のタイミングには、今存在しないけれども必要になる新たな役割、というものが必ず存在するからです。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。

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