ドラマ『アノニマス』 香取慎吾、SNSの闇に挑む

香取慎吾が民放の連続ドラマに5年ぶりに主演する、テレビ東京「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(毎週月曜午後10時、放送中)。ネットでの匿名での誹謗(ひぼう)中傷や炎上が後を絶たない中、キーボードによる殺人、いわゆる“指殺人”に対応するため、警視庁新設の部署にやってきた主人公の万丞渉(ばんじょうわたる、香取)ら5人の刑事が、事件の捜査に当たる。

香取がふんする万丞の相棒となる新人刑事の碓氷咲良役には、映画「町田くんの世界」(2019年)でヒロインを演じた関水渚を抜てき(C)「アノニマス」製作委員会

プロデューサーの浜谷晃一氏は、同局の「金曜8時のドラマ」枠で数々の刑事ドラマを制作。今回はオリジナル企画で勝負する。「昨年の夏頃、局内で月曜午後10時枠の企画募集があり、以前からSNSでの誹謗中傷の書き込みによる社会問題に思うところがあり、それに特化したドラマをやってみたいと思いつきました。300以上企画が集まったなかで、優先順位として1番に選んでもらえました」(浜谷氏、以下同)。

今回、単純に「テレビ東京に新たな刑事ドラマの枠ができた」と思われないよう、別の打ち出し方をしようと心掛けたと語る。まずメインタイトルには、匿名という意味の「アノニマス」というワードを採用。「2ちゃんねる」の文化でネットの世界が育ってきた日本は、世界でも群を抜いて匿名性が高い。「匿名になると人格が豹変(ひょうへん)してしまうのはなぜか」、そんな思いも込めたという。

サブタイトルには“指殺人”という言葉を使うことにもこだわった。「もともとは韓国で生まれた造語だったはずです。韓国では、芸能人がネットでの悪質なコメントを苦にして自殺するケースが深刻化していますよね。指でたたくキーボードによって、命を落とす人もいるということを、ダイレクトに伝えたい」

主演の香取は、テレ東のドラマ出演は「あぶない少年3」(1988年)以来、33年ぶりということで話題になった。「40代の男性で、何か衝動を隠しているようなミステリアスな感じの主人公像をイメージしていて。2年前に深夜ドラマ『フルーツ宅配便』で一緒に仕事をした、白石和彌監督が撮った香取さん主演の映画『凪(なぎ)待ち』(2019年)を見たんです。当時、香取さんは40歳を過ぎたばかり。ちょっと屈折した世間に対する怒りや諦めを持っている人物を演じていて、表情にも年齢を重ねたいいオーラが出ていたんです。その印象が強く残っていて、今回の主人公像とも合致しました」

香取サイドもオリジナル作品への関心が高く、出演を快諾してくれたという。演じる万丞は、元捜査1課で鋭い洞察力を発揮していた刑事。ある事件をきっかけに第一線から外され、指殺人対策室に異動してきた。「もともとは“捜査1課の狼(おおかみ)”と呼ばれていたような、ワイルドな人物設定でした。でも、香取さんに実際にお会いしたら、もう少し繊細というか、感情をあらわにしないような、でも内面ではすごく考えているんだろうなという感じだったので、その雰囲気を役に投影しています」

「シリアスなだけでなく、指殺人対策室のメンバー同士ではコミカルなやり取りもあります。最初から一体感があるわけではないので、だんだんと良いチームになっていく過程も楽しんでほしい。この作品を通して、無責任な行為によってどれくらい相手を傷つけるのか、多少でも気付いてもらえたら。若い視聴者にも刺さるヒューマンドラマを目指します」

(「日経エンタテインメント!」2月号の記事を再構成 文/田中あおい)

[日経MJ2020年2月12日付]

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