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世界的コンクール日本代表のフレンチ 東京・御徒町

2021/2/24
「牛タンのポルトと赤ワイン煮込み ラヴィオリジビエと共に」
「牛タンのポルトと赤ワイン煮込み ラヴィオリジビエと共に」

「わたしがこれまでにもっとも感銘を受けた言葉はフランス料理界の頂点とも評される『ラ・ピラミッド』のオーナーシェフであった偉大な料理人、フェルナン・ポワンさんの『料理人よ故郷へ帰れ』です。故郷に帰り、そこに暮らす人々に料理をふるまいなさいというメッセージに心打たれ、独立するなら生まれ育った場所に、と決めていました」。

そう語るのは2019年4月、東京・新御徒町の佐竹商店街内にグランドオープンした「Kotaro Hasegawa Downtown cuisine(コウタロウ ハセガワ ダウンタウン キュイジーヌ)」のオーナーシェフ、長谷川幸太郎さん。フレンチだけれども、地元のみんなに親しまれる店にしたいという思いから、店名に気取らず食事を楽しめる下町の雰囲気を込めたという。

Summary
1.新御徒町の商店街にオープンしたカジュアルフレンチ
2.シェフは「第16回ボキューズ・ドール国際料理コンクール」日本代表
3.コスパが最強 こだわりのコース料理を気軽に楽しめる5000円から用意

長谷川さんが料理の道を歩み始めたのは16歳のとき。病床の母親に代わって小学生のころから台所に立ち、運動会などのお弁当も自ら用意していた。ほどなくして母親が他界したのは高校受験の真っただ中。長谷川さんは受験会場に足を運ぶことなく「手に職を」と調理専門学校へ進むことを決意した。

基礎をみっちりと学んだ後、舞浜「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」でパティシエデビュー。その後、同ホテル内メインダイニングレストラン「ザ・サミット」をはじめとする数軒のフランス料理店での料理人経験を経て26歳で渡仏すると、「ミシュランガイド」常連店、南仏モンペリエの「ル・ジャルダン・デ・サンス」をはじめとする数々のレストランで研さんを積むことに。

帰国後は「ル・ジャルダン・デ・サンス」の東京支店「サンス・エ・サヴール」の料理長に就任。2007年にはフランス・リヨンで開催された「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」に日本代表として出場するまでの腕前となっていた。

「代表選出のための大会のテーマが、『日本文化を世界に発信』でした。そこでまずは、和を意識して漆器を模した赤と黒のコントラストが美しい特注の器を注文して、その器に合わせて料理を盛り付けることを考えました。調味料も日本のもの。寒天を使ったあたたかい鶏だしゼリーにしょうゆを加えたり、鶏の手羽の上にパン粉的要素として味噌を混ぜ込んだり。その結果、世界大会でも、日本人で初めて6位に入賞させていただき、そのときから、自分の料理に対するテーマが『フレンチを通して、日本の食のすばらしさも多くの人に伝えたい』に変わりました」。

さらにその後、「ラ・フェット ひらまつ」料理長として研さんを積む中でも、フレンチでありながら和の食材や調味料を絶妙に取り入れたやさしい味わいを追求していった。

気になる食材があると生産者のもとへと足を運ぶというが、店の壁は長谷川さん自らが撮影した生産者たちのコラージュ写真に彩られている。額は8枚だが、実は数えきれないほどの写真を保持しているそうで、定期的に中身を入れ替えているんだとか。

また、内装にも和の要素を取り入れた。おがくずの入った和紙の壁や無垢(むく)材のテーブルを取り入れ、食卓には切子のグラスや奥出雲の名匠が手がけた煤竹(すすたけ・すすけて色が赤黒くなった竹)の箸まで用意している。

もちろん、ナイフとフォークの用意もあるが、「箸でパクっと食べられるほうが安心感を持てるから」と長谷川さん。肩ひじ張らずに食事を楽しんでもらうための心配りが感じられる。

同店のメニューはコースのみ。品数に応じて3種類を用意しているが、魚料理と肉料理をすべてのコースで楽しめるのがうれしい。

「じゃがいものフォンダン」。北海道産キタアカリは甘みが強く、キャビアと相性抜群

ひと品目に登場するアミューズはサワークリームを詰め込んだジャガイモのスフレに、オシェトラのキャビア(中型のシップチョウザメからとれる中粒サイズのもの)をトッピングした愛らしいひと品「じゃがいものフォンダン」。

バターと鶏のだしで炊いた北海道産のジャガイモ・キタアカリはほくほくとした食感で甘みが強く、キャビアと相性抜群だ。2016年「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」アジア大会において付け合わせとして出したもので、江戸時代末期に作られた器と合わせることで和をクロスさせる演出も心憎い。

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