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保険適用へ動き出す不妊治療 仕事との両立支援も必須

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NIKKEI STYLE

国が不妊治療の保険適用に向けて動き始めました。今年議論を始め、2022年4月のスタートを目指します。晩婚化・晩産化に伴い、不妊治療を受ける男女は年々増加し、18年の体外受精は約45万件に上ります。菅義偉首相は少子化対策の柱に不妊治療支援を据え、子どもがほしくても授かれない人を経済的に応援する構えです。

健康保険は疾病の人が広く治療を受けられるようにする互助システムです。不妊は一部を除き疾病に当たらないとされ、体外受精など特定不妊治療は保険の適用外でした。治療費の個人負担は重く、メルクバイオファーマ(東京・目黒)の20年の調査によると、医療機関に支払った不妊治療費は平均で約131万円に上ります。不妊治療経験者の約6割が経済的な負担を理由に治療を諦めたり、中断したりしたことがあるそうです。

当事者の悩みは経済面だけではありません。特に仕事と不妊治療が両立できる環境整備は重要です。保険適用で経済負担を軽減できても、両立が難しければ治療と仕事のどちらかを断念せざるを得ません。

NPO法人Fineの調査では、不妊治療経験者の5人に1人が退職しています。松本亜樹子理事長は「体外受精は卵子の状況に応じて治療するので、いつ来院するか事前に計画が立てられません。予約日に診療に行っても卵子の発育が足りなければ、予定外の再受診を求められます。仕事とのスケジュール調整が難しく、職場に迷惑をかけまいと退職を選ぶ方も少なくありません」と説明します。

独自に支援する企業もあります。大和証券グループ本社は治療費補助のほか、不妊治療との両立のための在宅勤務制度を設けました。全日本空輸は4月に新設するサバティカル休暇の中で最長2年の不妊治療休職も認めます。医療機関側も工夫しており、浅田レディースクリニックは東京と名古屋市の2カ所で待合室にワーキングブースを設けています。仕切り付きの机や無料Wi-Fiなどを備え、待ち時間に仕事ができます。ただこうした支援はまだ一部です。

Fineは不妊治療退職に伴う経済損失は1300億円を超えると試算します。スケジュールを事前に立てられない難しさはありますが、治療期間中に仕事が一切できないわけではありません。時間単位の有休取得や、フレックスタイム、始業終業時間の繰り上げ繰り下げなど柔軟な働き方が実現すれば仕事と治療の両立は格段にしやすくなります。「せっかく育てた人材が辞めれば会社にとってもマイナス。まずは治療の実態を知り、何ができるかを考えてほしい」と松本さんは強調します。

松本亜樹子・NPO法人Fine理事長「効果確保へ環境整備が重要」

不妊治療の保険適用は当事者にとって朗報です。子どもを望む人が子どもを持てるようになるには、どんな仕組みが望ましいのか。不妊に悩む当事者同士の支え合いを目的とするNPO法人Fineの松本亜樹子理事長に、当事者視線で見えてくる課題を聞きました。

――不妊治療の経済的負担軽減を長年、国に求めてきたそうですね。

「体外受精など特定不妊治療は現状保険の適用外。自己負担が原則なので100万円以上治療に掛ける方も少なくありません。当事者の経済負担軽減のために以前から署名活動を行い様々な要望を提出してきました。ただ、保険適用に関して不妊は疾病ではないとする立場から国はずっと消極的でした。それが2020年に菅義偉内閣が発足し、急に動き出しました。念願がかない、うれしい半面、少し不安もあります。22年4月スタートの予定だと聞きますが、議論に費やす時間はさほどありません。当事者の悩みの解決につながる仕組みができるのか。これからの議論の行方が気がかりです」

――具体的な懸念は何ですか?

「一番のポイントはどんな治療が保険適用になるかです。現在体外受精を実施している医療機関は全国に約600カ所あるといわれています。ただ施設ごとに技術レベルにバラツキがあり、正直なところ技術も金額もその差が大きい印象です。保険となるとどの施設でも同じ金額で治療が受けられることになると思うので、その点では当事者の負担も軽減されてよいと思うのですが、どのレベルの治療までを保険適用にしてもらえるのかが非常に大きなカギになってくると思います。効果がさほど望めない治療を保険適用にされても、当事者にとって最も大切な『子どもを持つ』という希望はかなえられません」

「医療保険が混合診療を原則認めていないことも気になります。不妊は原因も様々で最適な治療法もケース・バイ・ケースです。例えば体外受精でも、卵子が育ちにくい方には育成を促す治療を強化して実施し、妊娠率を高めます。一人ひとりの状況に合わせて、こうしたオプション治療を付け足しながら、体外受精をしているのが現状です。体外受精が保険適用になっても、オプション部分が保険適用外となった場合、混合診療が認められていないままならすべて自由診療扱いとなり、結局治療費が全額自己負担になる恐れがあります」

「保険適用か、自由診療かの二者択一ではベストな治療法を選べなくなるのではないかと心配です。例えば根幹となる治療は保険適用としつつ、オプション部分については自由診療として自己負担とする混合診療を認めてもらったほうが、政策効果が大きいと思います」

――保険適用に付随し、行政に望む施策はありますか?

「どの医療機関で治療を受けるか。判断材料となる情報公開制度の整備も期待します。先述したとおり、施設ごとに技術レベルは様々です。どこを選ぶか、当事者はネットなどの口コミに頼っている状況です。個別に情報公開している病院もありますが、公開データの基準が統一されてなく、比較できません。例えば出産率。治療を受けている患者全体での出産率を公表している病院もあれば、受精卵を子宮に戻した件数を分母として計算している病院もあります」

「不妊治療が保険適用になれば、新規参入も増えると予想されます。実績・経験が少ない医療機関の参入で不妊治療の質が総じて低下する恐れもあると言われています。治療は身体的負担も伴い、いつまでも無限に続けられません。体への負担を減らすため、できるだけ効果的な治療を当事者は受けたいと願っています。どこでどんな治療を受けられるのか。そして成功率、出産率はどのくらいなのか。年齢別に分ける、それぞれの治療を受けた全体数も出すなど、細かい情報を第三者機関を通じて開示するなど、当事者が比較検討できる情報公開を望みます」

――仕事と治療を両立できる環境整備も課題に上げています。そのほかにも社会に課題解決を望むことはありますか?

「不要に当事者にプレッシャーを掛けないよう、不妊を知っていただくことも大切です。今や5組に1組が不妊治療を受けていて、その成功率は100%ではありません。思っている以上に周囲には不妊治療をしている人が多いのだという現状を知っておいていただけたらと思います。当事者の中には複数回、試みてようやく授かるケースもあれば、何回治療を受けても授からずにあきらめるケースもあります。子どもがほしいのにできない重圧は当事者が一番感じています。『お子さんはいなかったっけ』『2人目はまだつくらないの』といった何気ない言葉に当事者は想像以上に傷ついてしまうものです。もし『不妊の現状』を知っていたら、きっとその何気ない言葉をかけない方は増えてくると思います」

「今後特に心配なのは不妊治療が保険適用になることで、孫を望む老親らが、なんの悪気もなく『国がお金を出すんだから、治療を受けたら』と当人の意思にかかわら勧めてくるケースです。Fineにはすでにこうした相談事例が寄せられています。子どもを持つか持たないか、持つとしても、どのタイミングで持ちたいのか。これらはリプロダクティブ・ライツという基本的人権の一つです。個人の意思をぜひ尊重してほしいと思います。保険適用に合わせて、リプロダクティブ・ヘルス・ライツを広く浸透させることも大切です」

(編集委員 石塚由紀夫)

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