東大生の4割学ぶ「Z会」 難問生み出す指導部155人増進会ホールディングス社長 藤井孝昭氏(上)

今のZ会では、郵便のほかに、タブレットでの通信添削が受けられる
今のZ会では、郵便のほかに、タブレットでの通信添削が受けられる

東京大学に最も多くの合格者を送り込んでいるのはどこか。有力な進学校の名前が思い浮かぶが、約4割と圧倒的な数を誇るのは、通信教育「Z会」を手掛ける事業会社のZ会を子会社に持つ増進会ホールディングス(HD、静岡県三島市)だ。1931年に創業し、90周年を迎えたZ会は今も「良問と添削」を強みに、難関校合格へ受験生の背中を押す。

◇  ◇  ◇

Z会の高校生向け入学案内書を開くと、最初のページ目に飛び込んでくるのは、「東京大学1208人 京都大学961人 医学部医学科1484人」という、20年春の合格実績だ。人数だけでは意味がわかりにくいかもしれないが、東大の場合、合格者数3083人のうち、39.2%を占める。つまり、東大生の3人に1人は「Z会卒」なのだ。京大でも35.3%にのぼる。

東大合格者を多く輩出してきた上位校でも、1校あたりの合格者はトップ5校の平均で100人前後(2016~20年の平均)。Z会の1208人は優に10倍を超えていて、合格者に幅広く利用されている様子がうかがえる。キャッチフレーズで「事実。Z会は難関大入試に強い。」とうたうのには十分な数字の裏付けがある。創業家3代目の藤井孝昭増進会HD社長は「難関校対策は創業以来の軸で、今も揺らいでいない」と語る。

日本に通信教育を広めたパイオニア的存在だ。旧制中学の英語教師だった藤井豊が創業した。後の「進研ゼミ」につながる事業を福武書店(現ベネッセホールディングス)が始めるのは69年と、ずっと後だ。創業者のモットーは「百の聴講より一の実践」。優れた問いを主体的に解く学びの効果を重んじた。

まだ料金後納郵便物制度がなかったが、郵便制度が広がりつつある時期だったことを受けて、郵便でやりとりする仕組みを教育に持ち込んだ。「添削という形でのフィードバック付きのサービスは一種のイノベーションだった。受験対策としての事業化は世界でも最も早い取り組みだったようだ」(藤井氏)

全国のどこに住んでいても、望む教育を受けられることを目指した。当時の帝国大学を目指すにあたって、受験対策を指南する予備校は大都市圏に偏っていて、居住地による有利・不利があったという。「地理の壁を乗り越えるのを、通信教育の形で応援しようと試みた」。創業当時に掲げていた「実力増進会」というブランドにも、学力アップの狙いがうかがえる。「難関校対策はZ会の原点」と藤井氏は創業期を振り返る。

戦争が激しくなって、1945年に静岡県中伊豆に移って、事業を一時中断した後、52年に指導を再開した。このころから会社の名前を「増進会」に改め、「Z会」の略称も使い始めた。「究極」のイメージがある、アルファベット最後の文字を使った、巧みなネーミングとみえるが、実は違うようだ。「会員が勝手に愛称として使い始めた自然発生的な呼び方。みんなが使うようになったので、本部が後追い的に通称として採用した」(藤井氏)。今では通り名を超えて認知度が上がり、事業運営会社の名前も「株式会社Z会」に変わった。

次のページ
絶妙の難易度で潜在能力引き出す
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら