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飲食・かけ声・歓談なし 対コロナ完璧パーティー目撃

立川談笑

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NIKKEI STYLE

さる2月7日、にぎやかな催しに参加してきました。「桂宮治真打ち昇進披露」のパーティーです。宮治さんは落語芸術協会としては現会長の春風亭昇太師匠以来29年ぶりの抜擢(ばってき)真打ち。未来の落語界を爆笑とともに背負って立つこと間違いなしという逸材の、真打ち昇進をお披露目するお祝いの席です。

異例ずくめの「桂宮治真打ち昇進披露」

新宿にあるホテルの広いパーティールームはお祝いの花で満ちあふれ、ごひいき筋から贈られた数々ののぼりや幕が錦に彩られて四方の壁を華やかに覆いつくしていました。集まったのは東西問わずの落語家、芸人をはじめ、業界関係者や新真打ちを応援するお客様たちで総勢550人。ところがこの会は異例ずくめでした。そう、このとき都内は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言真っただ中だったのです。

思い切って開催するか、それとも無難に延期や中止にするか。宮治さん本人も相当悩んだことでしょう。

さてここで立ち止まって、1年前を振り返ってみます。日本国内で感染が拡大し始めた頃。新型コロナウイルスという新たな脅威の正体がまだまだ分からない上に、具体的な感染症対策について私たちは今ほど深くは理解できていませんでした。また、社会活動の急な変化を迫られることによってどこにどんな影響が及ぶのか。さらにはその影響をどう取り扱えばよいのか。すべてが手探りともいえるありさまでした。

そんな2020年春、都内のホテルで真打ち昇進披露パーティーが予定されていました。そこで新真打ちとして大々的にお披露目されるのは、志の輔一門の3番弟子、立川志の春さん。エール大学卒業から三井物産という「超」レベルの経歴を振りすてて落語家の道を志し、いよいよ真打ち昇進というタイミングでした。晴れがましいステージが目前に迫ったところへ、降ってわいたのが新型コロナです。彼が選んだ結論は、中止でした。

さあパーティーが中止となると、あてにしていたご祝儀が入らない。それどころか宴会場のキャンセル料数百万円をホテル側に提示された。まさに地獄です。その後キャンセル料は緊急事態宣言を受けて「ホテル側都合」として支払わずに済んだそうですが、それでももろもろの損害は莫大だったとか。また経済面とは別に、披露目という大きな宣伝の機会を失うし、何よりも、応援してくれる大勢の人たちのことが気にかかったことでしょう。

さらに加えて翌月に予定していた昇進披露の落語会は、2カ月延期してその後中止に。大きなホールでチケットが完売だったのに中止の判断をするとは、本人のつらさは想像もつきません。

おっと、ここで立川志の春師匠の話を出してるのは明らかに宣伝のつもりです。新進気鋭の落語家として評価が高い彼の存在を、まだご存じない方もいらっしゃいますよね。大々的なお披露目ができなかった分、微力ながらの宣伝活動です。今からでもまずは知って、よかったらどうぞ応援してあげてください。落語は古典、新作、英語、シェークスピア、人物伝とジャンルも幅広く、ユーチューブその他で才能をいかんなくアピールしています。ホントにお願いしますよ。大変なんすから、もう。

あれから1年がたち、「マスク着用」「手指消毒」「3つの密を避ける」などに始まった感染拡大を防ぐ具体的な方策は、詳細かつ明確になってきました。対策が明確になることは、「ここまでは大丈夫」という安全ラインが確保されることでもあります。

そして今回の桂宮治真打ち昇進披露パーティーは、みごとなまでに感染拡大防止策を徹底していました。

広い宴会場に足を踏み入れると果てしなく円卓が並んでいる。しっかり間隔を空けられた席につくと、目の前にはペットボトルの水がぽつんと1本。飲食の提供はそれだけ。水以外のソフトドリンクなし。アルコールなし。料理、なし。この段階ですごい!

開宴して主役の新真打ちが堂々入場する際も、掛け声は禁止なので拍手のみ。「おおー!」とか「待ってました!」「日本一ッ!」なんて、こんなにも叫びたかったものかと改めて自分を再発見しました。ずいぶんやかましいヤツだったんだね。

ステージ上には新真打ち。お歴々のスピーチがあって、恒例の大きな酒だるでの鏡開きです。会場に詰め掛けた550人が声をそろえて一斉に「よいしょ、よいしょ、よいしょー!」と心の中だけでさけぶという。わはは。

続く乾杯では円楽師匠の音頭で、なんと「エア乾杯」。これも初めて。グラスも升も持たずに無言で「(かんぱーい)」。はたから見たら、ただ全員立ち上がって無言で拍手して座っただけですよ。それでもなんとなく乾杯した達成感はあるんです。不思議ですねえ。

私はここで古典落語の「だくだく」を思い出しました。物が何ひとつない長屋の壁一面に、「あるつもり」になって豪華な家財道具の絵を描いたというふざけた話。知らずに盗みに入った泥棒が面白がって「高そうな着物を盗んだつもり。大きな風呂敷に包んだつもり。どっこいしょと背負ったつもり」。そこへ、目が覚めた住人が「がばっと起きて、家宝の槍(やり)を構えたつもり。ぐさーっと刺したつもり」。泥棒が「うーん。血がだくだくと出たつもり」。

ナイツのお二人による軽妙な司会の中、会は進みます。マジックショー、漫才(ここもナイツ)、獅子舞と、余興があって大いに笑って楽しんで、新真打ち桂宮治師匠の涙ながらのあいさつに一同、心を震わせて。ひときわ豪華な引き出物をお料理や飲み物とともに頂いてお開きになりました。この披露宴、テークアウト式だったのね。

歓談の時間がなくて他の出席者とお話ができなかったのは心残りだけど、それもやはり対策なのでしょう。お開きになった後もテーブルごとの分散式だったから全員が退場するまで40~50分。対策は、完璧だ。

厳しい制約の中での、立派なお披露目でした。なるほど、やればできるんですねえ。お見事! 宮治師匠! にっぽんいち!!!

そうそう。披露目が中止になった立川志の春師匠。さっき本人に確認したら、この先改めて披露パーティーを催すつもりだと力強く言ってました。たとえ来年になったとしても、と。その意気や良し!

落語会やコンサート、なぜ8時まで?

最後に愚痴です。

都内や大阪では20年秋ころからわずかずつ復活しつつあった落語会などのイベントが、2度目の緊急事態宣言を境に雪崩をうつように中止になっています。緩和されかけた客席数が再び減らされるだけならまだしも、とりわけ決定的なのは「公演時間は飲食店と同じ夜の8時まで」と制限された点。なぜ? どこでどうやって決まった? 「8時」の必然性が分からない。

そもそも落語会やクラシックコンサートの場合、客席では飲食しないし声も出さないし、ずっとマスクもしたまま。換気もしているし、分散退場もしている。どこが危険なのやら教えてほしい。私は落語会でクラスターが出た例を知りません。

会の多くは夜7時開演です。「8時まで」ではとても成り立たないからとたくさんの落語会が中止の決断をした。収入を断たれながらも対策に協力しているのです。なのに飲食店と違って協力金は、ない。ひどすぎます。

落語会に対する「客席数と時間の制限」は、合理的に必要といえるのか。とにかく早急に検証してほしい。そして制限が妥当でないならば、即刻解除または緩和をしていただきたい。

落語家、悲鳴を上げるの巻でした。

皆さん、どうぞご無事で。ウイルスとストレスを上手にかわしつつ日々をお過ごしください。

立川談笑
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
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