
これから数年、私たちは木星やその衛星たちの新たな姿を目にすることができそうだ。2016年から木星を回り続けてきた米航空宇宙局(NASA)の探査機ジュノーが、今年で完了予定だった探査計画を拡張し、木星の衛星やリング(環)に接近して調査を続けることが決まった。
新たに決まったのは、2025年9月まで4年にわたり木星系(木星とその衛星の系)を42回周回する旅。ジュノーは過酷な環境に突入することになるが、地球でこの探査機をサポートする研究者チームは、ジュノーが何を見つけ出すか心待ちにしている。
「ワクワクしています。ジュノーを、木星だけを観察する周回機から、木星系を調査する探査機に移行させるというのは、画期的なアイデアでした」と、ジュノーの主任研究員である米サウスウエスト研究所のスコット・ボルトン氏は語る。
衛星ガニメデ、エウロパ、イオへ
ジュノーはこれまでの軌道の周期を徐々に短くしながら、木星の衛星の中でも注目されている3衛星へと近づいていく。
まず2021年6月には、太陽系最大の衛星であるガニメデのそばを通過する。そして2022年には、生命の存在が期待されているエウロパに接近。さらには硫黄の霜が降り積もり、激しい火山活動が続く衛星イオへと近づく予定だ。
2003年に探査機ガリレオのミッションが終了して以来、ほぼ20年ぶりにこれらの衛星を間近に見られることは、外太陽系(木星やその外側に広がる太陽系)の氷の世界を研究する科学者たちにとってはこれ以上ないプレゼントだ。
「いつも、 #PlanetsAreOverrated (惑星は過大評価されている)というハッシュタグをトレンドに入れようと、がんばっています」と語るのは、惑星科学研究所でイオを研究するジュリー・ラスバン氏だ。「衛星の方が惑星よりも、ずっとおもしろいですから」
今回、木星の3つの衛星を調査することに加えて、ジュノーは木星の環を幾度か通過して詳しく観測する。土星の環と違って木星の環は希薄で、詳細はほとんどわかっていない。
「太陽から離れた外太陽系を調べるミッションはほとんどなく、木星探査機ジュノーを活用できるというのはまたとないチャンスです」と、米ジェット推進研究所で外太陽系の氷に覆われた衛星を研究するシンシア・フィリップス氏は言う。「これはまったく新しいミッションと言っても過言ではありません」

木星での5年間
2011年に打ち上げられたジュノーは、2016年7月4日頃に木星の周回軌道に入った。同探査機の主な目的は、この巨大ガス惑星の重力、磁場、大気、内部を観察することだった。
ジュノーでよく知られているのは、木星の姿を詳細にとらえた素晴らしい画像の数々だろう。かつて人類は、木星の表面にある巨大な渦巻きをはるか遠くから観測するしかなかった。でも探査機ジュノーに搭載された「ジュノーカム」のレンズを通して間近に木星を観測すると、極付近で数多くのサイクロンが集まり斑点模様を描く驚きの世界を初めて見ることができた。