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かん酒に一番適した器は、写真のような平はい。写真は東京・練馬の酒販店「大塚屋」で扱っているもの。酒蔵、飲食店などが趣向を凝らした平はいだ

もっとも、どの温度帯で飲むかは各人の好み。ただし、食べ物の温度に合わせるのが、かん酒を堪能するための近道だ。例えば、酢の物などの突き出しなら、熱々のかん酒よりもぬるかんの方が合う。一方、ふーふーと言いながら食べるおでんであれば、もっと高い温度帯の酒がいい。「一般的に、軽めだったり、一つひとつの素材をしっかり楽しんだりするような料理にはぬるかん、すき焼きなど味が濃い、温かい料理を食べるときには熱かんがいい。マーボー豆腐のようなスパイシーな料理も熱かんに合います」(同)

今田さんがこよなく愛するのは、“風呂の温度帯”であるぬるかんだ。「お風呂の温度はだいたい41~42℃。人によって多少前後するでしょうが、要するに人間がその中に浸って一番気持ちがいい温度です。ぬるかんは、お風呂と同じで酒と自分が一体化してこのまま死んでもいいぞというぐらいの悦楽」と表情を緩める。ただし、風呂の温度が少しでも自分の好みとずれると気持ちがよいとは感じられなくなるように、ぬるかんの温度帯もちょっとずれると“悦楽”というわけにはいかなくなる。この塩梅(あんばい)が難しい。

酒を温めるには、じか火のように焦がすことなくむらなく加熱でき、温度調節がしやすい湯せんがお薦めだが、「おかんしたとっくりはどんどん冷めていくので、10分も飲まないで置いておくと、中途半端な日向かんぐらいになってしまう。だから、かん酒は1人、2人ですぐ飲み切れる、1合、2合の小さなとっくりなどでつけた方がいい。そして、狙ったより5度ぐらい上の温度にする。ぬるかんを薦めましたが、実は私にとっては上かんが一番いい温度。これだと、ゆっくり飲んでいても、お酒がなくなるまで温度が下がりすぎることがありません」

湯せんする際は、とっくりが半分つかるぐらいの水を鍋に入れ、これが沸騰したら火を止めとっくりを入れる。加熱によって吹きこぼれないようとっくりに入れる酒は9分目程度まで。口にラップをすれば、香りが飛びにくくなる。

一方、かん酒を飲む器は、平はいがお薦め。ぐい飲みとは異なり、一度注いだ酒は飲み切るスタイルの器のため、冷めてしまうことなく酒を楽しめるからだ。

おかんに向く酒の品ぞろえが厚く、“かん酒の聖地”と呼ばれる東京・武蔵関の酒販店「大塚屋」に足を運ぶと、酒蔵や飲食店などのオリジナル平はいがいくつもあった。「おかんにすると、アルコール臭のようなものがもわっと広がりますが、この器だとそうした部分は拡散して、お酒の味を楽しめます」と同店の女将・横山京子さん。

横山さんはさらに、お酒を温めるためのお薦め酒器としてかんどっくりなるものを教えてくれた。外つぼととっくりがセットになっていて、かんつぼに沸騰した湯を入れ、そこにとっくりを入れて温められるようになっている。食卓で温度を調節しながら飲むのにもってこいの酒器だ。「これなら、台所仕事を終えて自分が食卓に着くときにも冷めないんです」と笑顔を見せる。

かん酒のための酒器。左からすずのとっくり、かんどっくり、すずのちろり。すずは熱の伝わり方がとても優れた素材だという

かんどっくりで60℃以上にカンカンに温めてから冷めてくるところを飲むといいと言う横山さんは、「ためらわず熱くしてください。カンカンにして大丈夫じゃないのはそもそもおかんに向かないお酒」ときっぱり。酒の中には、65℃ぐらいにしても大丈夫なものもあるそうだ。

店にぎっしりと並んだ酒の中から、初心者向きのお酒を選んでもらった。

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