「でも、長い期間1人の人間の人生を描くということについては、『なつぞら』を経験していて良かったなと思う部分があります。1人の人生を丁寧に描いていくなかで、何かを決めてしまうと逆に難しくなってしまうんです。例えば2話のあとに13話を撮るなど撮影スケジュールがかなりバラバラなことも多いので、『ここはこうだよね』『あのシーンでこういうことをしたから、ここはちょっと抑えとこうか』というような計算を頭の中でし始めてしまうと、どんどん頭がこんがらがっていってしまい――監督とも、最初の頃は人物を作っていく上で本当に細かい決め事などをお話させていただいていたんですけど、途中からは『もういいよね」という感じになりました(笑)。『あまり決まり事にこだわっても、人間としての面白みが半減してしまうから』と。

(写真:藤本和史)

やっていて気づけたことですが、あえてあんまり計算で作っていくやり方はせずに、とにかく台本にある部分だけ、1シーン1シーンを意識して熱量を持っていくお芝居の仕方が必要なんだなと。これは通常の映画などにはない、大河などの長期間ドラマならではだなという気がします」

あとは役者のみなさんも素晴らしいし、スタッフのみなさんも一流で、すごく贅沢な環境でお芝居させていただいているなと思います。みなさんと一緒にお芝居をしていって、本当に『ああ、やっぱりすごいな』と思う瞬間ばかり。なかでも、後に栄一の奥さんになる千代役の橋本愛さんが、すごくて。2人のシーンでは栄一がわりと一方的に千代に話をしていることが多いんですけど、その話を聞いているときの顔がもう本当に伴侶として全てを受け止めてくれるような雰囲気をにじみ出してくださっていて。本当に安心しますし、とてもいい役者さんだと改めて思いました」

破竹の勢いで活躍中の吉沢だが、主演作はもちろんのこと、他の出演作も、単に規模が大きいだけでなく、意味深い作品に出ているように見える。彼が出演を決める上で重きを置くものは何なのだろうか。

「1番は脚本が面白いかどうか、でしょうか。自分が読んでいてあまり引っかからない内容だとやっぱり出演に踏み切るのに戸惑いが生まれてしまうというか。あとは、『この人とお芝居ができる』『この監督とやれる』などといった意味のある、例えば成長できたり、勝負しなきゃいけない作品だったりといった自分にとってプラスになる何かがないと、というのはあります。単純に『大きい作品だから』『当たりそう』という理由では作品を選びたくないです。

そういう意味で言うと、公開中の映画『AWAKE』は、最初に脚本を読ませていただいた際にとても強い爽快感と青春を感じて、めちゃくちゃ面白いなと思った作品。『ぜひ、よろしくお願いします』と返事をさせていただきました」

後編「大河主演の吉沢亮 『まだ早い』と言われる挑戦したい」>>

『青天を衝け』
 大河ドラマ第60作。約500もの企業を育て、約600の社会公共事業にも関わった「日本資本主義の父」渋沢栄一を主人公に描く。幕末から明治にかけての激動時代の大渦に翻弄され、挫折を繰り返しながらも高い志を持って未来を切り開いていった、その生き様とは。(2月14日スタート/NHK総合日曜20時他)
『AWAKE』
 実際の対局を基に描かれた青春映画。人付き合いが苦手な英一(吉沢)は、ライバルに負けたことを機に将棋のプロの道を諦める。その後、英一はコンピューター将棋と出合い、自ら生み出したプログラムで大会を制するほどに。やがて彼のもとに棋士との対局話が舞い込み……。(Blu-ray&DVDは2021年3月24日発売)

(ライター 松木智恵、日経エンタテインメント! 平島綾子)

[日経エンタテインメント! 2021年2月号の記事を再構成]

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