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撮る望遠鏡 キヤノンPowerShot ZOOMがヒットの勢い

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たったの6時間50分で1000台が即完売――。クラウドファンディングサイトのMakuakeで、応募購入総額3000万円突破の最速記録をたたき出したキヤノンの新型デジカメ「PowerShot ZOOM」。2020年12月10日に一般販売を開始すると、発売週の販売台数シェア(調査会社のBCN調べ)はコンパクトデジカメの中で6位にランクインし、カメラジャンルで久々のヒット商品に成長しそうな勢いを見せている。

PowerShot ZOOMは、望遠鏡のようにファインダーを片目でのぞき込み、見ているものをボタンひとつで標準(焦点距離100ミリメートル。以下、35ミリメートル判換算)、4倍(同400ミリメートル)、8倍(同800ミリメートル。デジタルズーム)と切り替えてズームできる新コンセプトのカメラ。光学式手ぶれ補正機能を搭載し、被写体にズームしたまま静止画や動画の撮影も可能。まさに「撮れる望遠鏡」だ。リモート撮影や画像転送など、スマホとの連係もサポートされている。

開発のきっかけとなったのは、同社が長年培ってきた一眼カメラの交換レンズ的な発想だ。「カメラはレンズを変えれば写真の表現や撮影できる範囲も大きく変わる。ただ、標準や広角での撮影をカバーするスマホは増えつつあるが、望遠で撮影できるものはまだ少ない。そこで、気軽に望遠を楽しめるコンパクトなカメラを作れないかと考えたのが発想の原点」(キヤノン・イメージコミュニケーション事業本部ICB事業統括部門・課長代理の島田正太氏)。

同社の手ぶれ補正付き双眼鏡の思いもよらぬヒットもヒントとなった。発売から10年近くもたった双眼鏡製品の売れ行きが、15年ごろから急速に伸長。要因を調べてみると、ドーム球場やスタジアムなど収容人数が大きい会場でコンサートを行うことが多いジャニーズのファンを中心に、「手ぶれ補正付き双眼鏡で『自担』と目が合った」「ステージから一番遠い『天井席』でも表情や汗までよく見えた」「コンサート必須の『神アイテム』」といったような口コミがSNS(交流サイト)から拡散していることが判明した。同社はそうした層に向け、手が小さい女性でも扱いやすい世界最軽量(発表当時)の手ぶれ補正付き双眼鏡を19年9月に新たに開発。高機能ながらも10万円を切る価格で大きな支持を得た。「従来のようなバードウオッチングや天体観測以外にも、遠くを見て楽しむというニーズには訴求次第でまだ何かできるはず、と大きな参考になった」(島田氏)という。

斬新な形状を生み出した「積み木合宿」とは

キヤノンの既存製品ではあまり行われていなかった開発プロセスが取り入れられたのも特徴だ。同社の製品は発表会のタイミングで初めて公開されることが多かったが、PowerShot ZOOMは約3年前に米国で行われた世界最大級の国際展示会「CES 2018」からプロトタイプやモックアップなどを積極的に出品。来場者の反応や意見をヒアリングし、製品開発にフィードバックするオープンスタイルを採用した。「展示会での顧客検証と、それを基に開発するというサイクルを何度も繰り返して少しずつ最終形に近づけていくうちに、『撮れる、望遠鏡』というコンセプトに対する大きな需要があるということが確信に変わった」(島田氏)。

プロトタイプを作るためにデザイン、開発、企画部門が一体となりユニークな合宿も行われた。例えば「積み木合宿」では、既存のカメラをレンズ、センサー、バッテリーなど最小単位のパーツにまで分解。「積み木のように実際に手を動かしながら様々な組み合わせを何度も試行錯誤し、新コンセプトの撮影スタイルに見合う形を探求した」(キヤノン・イメージコミュニケーション事業本部ICB開発統括部門・主任研究員の深井陽介氏)という。

PowerShot ZOOMを正面から見るとレンズが右側に寄っていることが分かるが、これはズームレンズの鏡筒部分の真横にバッテリーを配置しているため。従来のカメラでは考えられない斬新なレイアウトは、PowerShot ZOOMが積み木合宿からヒントを得てゼロベースで設計された証しでもある。

その他、既存の製品をカスタマイズしたデバイスを用いて、「気軽に望遠で撮影する」というスタイルにどのような不満やストレスが生まれるのかを疑似体験して検証する「撮影合宿」や、近年増えている野球や競馬の女性ファンなど、様々な利用シーンを深掘りしてキャッチコピーを練る「架空のカタログ制作合宿」なども行われたという。

なぜステップズームを採用したか

合宿や展示会への出品を通してプロトタイプは徐々に進化。初期段階で横長だったボディーは持ちやすさを考慮して縦長になり、本体上面にあったシャッターボタンは押下時のブレを少しでも軽減するため下面へ移動。最終的に側面にボタンはなく、右手でも左手でも使えるデザインになった。「従来のカメラはグリップやシャッターが右側にあるため右利きの人に向いたデザインだが、PowerShot ZOOMはどちらの手でも直感的に使える」(深井氏)。スポーツ観戦で応援グッズなどを持っていても、もう片方の手でとっさにカメラを構えられるのは大きなメリットだ。

当初のプロトタイプにはスマホと接続するコネクターも用意されていたが、製品版ではブルートゥースやWi-Fiでのワイヤレス接続に変更。島田氏は「発想はユニークだったが、フィールドテストの結果から実際の使用感には疑問が残った。ユーザーの使いやすさやストレスを最優先で考え、最初にあった仕様や機能も大胆にそぎ落としていった」と話す。

最大の武器であるズーム機能がステップ式であることも同様の理由だ。一般的なズームレンズや双眼鏡のように無段階のズーム機能が欲しいという声もあるが、島田氏によれば「一眼カメラの交換レンズの使われ方のデータを調べてみると、望遠ズームレンズの場合は、ワイド端とテレ端が最終的な撮影結果の8割を占めることもある」という。そのため、構造がシンプルで大幅な小型・軽量化に貢献できるステップ式ズームを採用。結果的に倍率の切り替えを瞬時に行えるようになり、ズーム利用時にありがちな遠くの被写体を見失ってしまうというストレスも軽減できるようになった。

こうして最終版となった製品はクラウドファンディングで先行販売するフェーズに移行するが、同社がMakuakeに出品するのは実はこれが2度目だ。19年10月には、カラビナのようにバッグやベルトに引っ掛けて携行できる約90グラムの超小型デジカメ「iNSPiC REC(インスピックレック)」をMakuakeで先行予約開始。約13時間で目標の13倍となる支援金額を集め、1000台が完売したという実績を残している。「ただiNSPiC RECは約1万5000円の製品だが、PowerShot ZOOMはその2倍以上の価格。果たしてどれだけの人が反応してくれるか全くの未知数だった」(島田氏)。しかし、そうした不安をよそにPowerShot ZOOMは第1弾を上回るスピードで完売。冒頭のようなMakuake最速となる記録を打ち立てた。

望遠を楽しむためのカメラ

実際に使ってみて、まず驚くのが起動の速さだ。電源ボタンを押してのぞき込めば電子ファインダーに遠くの景色がすぐに表示される。沈胴式レンズがゆっくりとせり出すといったコンパクトデジカメにありがちな待ち時間は無く、ズームで見たいシーンを逃さないのは大きな強み。ファインダーで見ている景色をワイヤレス接続したスマホの画面に表示できる「リモートライブビュー」など、望遠を複数人で楽しめる連係機能も魅力だ。

本体はメモリーカード込みで約145グラムと軽く、映像表示時間は約70分と長め。USB Type-C端子を搭載し、コンセントやモバイルバッテリーなどから充電する仕組みだ。

やや気になったのが撮影画質だ。静止画の記録サイズは4000×3000ドットだが、撮像素子のサイズが1/3インチとカメラとしては小さめのためか、解像感はそれほど高くはない印象。また、最大望遠の「800ミリメートル」はデジタルズームのため、実際には光学ズームの400ミリメートルで見たものを引き伸ばした画質になる。島田氏は「画質も重要だが、この製品の場合、ポケットから簡単に取り出せて、片手で持てるサイズ感をまず重視した」と語る。「作品」を撮影して残すというよりも、あくまでも「望遠を楽しむ、記録する」という目的に向いていると言える。

当初のターゲットとしていたのはスポーツ観戦や自然観察、旅行などだが、Makuakeでの展開や一般販売を通して、セキュリティーや報道関係などの法人需要の声も増えているという。これまでにない「片手で使えるズームカメラ」は、望遠の新たな価値を切り開く存在になりそうだ。

(日経トレンディ 佐々木淳之)

[日経クロストレンド 2021年1月27日の記事を再構成]

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