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話題の本を集めた特設の平台に展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

話題の本を集めた特設の平台に展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。平日の夕方に訪れてみると、店内にはぽつりぽつりとしか人影が見えない。緊急事態宣言の延長もあって、来店客の回復は一向に見通せない状況だ。そんな中、書店員が注目したのは、ビジネスはその歴史的使命を終えつつあるとして労働と消費の新しい様態に思索をめぐらした一冊だった。

物質的貧困がなくなった社会

その本は山口周『ビジネスの未来』(プレジデント社)。山口氏はこのところ精力的にビジネス書を刊行、ヒットさせている独立研究者。美学美術史学の修士課程を修め、電通や有力コンサルティングファームで働いたあと独立、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『ニュータイプの時代』といった本がベストセラーとなり、これからのビジネスを深く考えるビジネスパーソンを刺激し続けている。本書はその思考の及ぶところを文明史的な経済、社会、世界のありようにまで広げ、これから我々はどう生きるかを問いかけた野心的な著作だ。

「ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか?」。ビジネスの未来をタイトルに掲げながら、本書は不穏な問いから始まる。第1章「私たちはどこにいるのか?」は現在位置の確認だ。冒頭の問いへの答えをめぐる考察でもある。ビジネスの使命が「経済とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」ことであれば、先進国においてはその使命はおおよそ達成されていると分析する。「私たちの社会は、明るく開けた『高原社会』へと軟着陸しつつある」というのが著者の認識だ。

経済性から人間性へ

にもかかわらず経済社会システムには成長志向が組み込まれたままで、現状とはかみ合っていない。そこで「経済性に根ざして動く社会」から「人間性に根ざして動く社会」に転換していこうというのが、第2章「私たちはどこへ向かうのか?」で展開される議論だ。物質的欲求が満たされた今、なお残る問題は「経済合理性」の外側にある。「市場は、『経済合理性限界曲線』の内側の問題しか解決できない」という。では、そのような問題に私たちはどう取り組めばよいのか。労働や消費の新しいあり方を解きほぐしながら考察していく。

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