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永遠のあこがれ、光枝明彦さんからの言葉(井上芳雄)

第86回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。日本のミュージカル創生期から活躍されてきた先輩方をお迎えしてお話をうかがう『レジェンド・オブ・ミュージカル inクリエ』の第6回を1月21日に催しました。今回のレジェンド光枝明彦さんは、僕が個人的にずっとあこがれて、お手本にさせてもらっている方。「ミュージカルとともに生きる」という言葉は、光枝さんの生き方そのものであり、僕の希望ともなりました。

光枝さんは1937年東京生まれ。俳優座養成所を卒業後、劇団青年座に入り、その後、劇団四季に入団されて30年あまり在籍。『ジーザス・クライスト=スーパースター』『キャッツ』『アスペクツ・オブ・ラブ』『ウェストサイド物語』『美女と野獣』などの海外ミュージカルから、『夢から醒めた夢』『ミュージカル李香蘭』といった劇団四季のオリジナルミュージカルにも出演されています。2005年に劇団四季を退団された後も数々のミュージカルに出演。東宝の作品では『ラ・マンチャの男』『裸のカルメン』、『シラノ』(ホリプロ共催)、『ハムレット』『グレイ・ガーデンズ』などに出られています。

僕は、子どものときに劇団四季の『キャッツ』を見て感動して、ミュージカル俳優になりたいと思いました。そのころから光枝さんは、劇団四季を代表する俳優として活躍されていたので、あこがれの人。『レジェンド~』に出ていただきたいとずっと思っていたのが実現して、1人のファンとしてもうれしい限りでした。光枝さんは劇団四季の人ではあったけど、劇団の色や個性には染まっていないイメージでした。二枚目の役もやれば、コミカルな役もやるし、芸の幅が広くて自在。それでいて歌も一流というのは、僕が理想とするミュージカル俳優の形なので、尊敬して目標にしてきたのです。

でも、光枝さんがどうやって、そうなれたのかは知りませんでした。ご挨拶はしていましたが、一緒に舞台に立ったことも、歌ったこともなく、ちゃんと話したのは今回が初めてです。劇団に長くいたこともあって、インタビュー記事などは少なく、世間の人も経歴を詳しく知らないと思います。僕もそうだったので、光枝さんの歩みと人柄を深く知りたいと思って、お迎えした回でもありました。

経歴をうかがって、僕が驚いたのは、「最初からミュージカルをやりたかった」とおっしゃったこと。芸の幅が広いし、世代的にも、新劇を目指してお芝居をやっているうちにミュージカルと出合い、この世界に入られたのだろうと想像していたら、そうではなかった。『ブリガドーン』といった米国映画を見てミュージカルにあこがれ、舞台をやれるところはないか探しながら劇団四季にたどり着いたそうです。その前に、初期の東宝ミュージカルにも出ています。自分があこがれた光枝さんは、最初からミュージカルがやりたかったのだと知って、せんえつながら、僕と同じだと思ってすごくうれしかったですね。

新しいことにチャレンジし続ける姿勢もすてきでした。「僕の役者人生の命題は、どうやったら人より目立つか。ほかの人と違うところを、何か見つけること。常にひと工夫だったり、もう1アイデアを考えている」と。そこもせんえつながら、僕もそうありたいので、光枝さんが80代の今も変わらぬ姿勢を貫いているのは素晴らしいと思いました。

光枝さんは、後輩の俳優たちからとても慕われています。劇団四季出身の方や舞台でご一緒された方からは「お父さん」と呼ばれ、後輩からも「おみつ」と呼ばれています。そんな人柄も、お会いしてよく分かりました。素晴らしい経歴でありながら、人を圧倒したり、緊張させたりする雰囲気が全くないのです。これまでのレジェンドの方々とたたずまいが全然違うのに驚きました。劇団に長くいて、そこでの自分の役割を果たしてきた方だからなのかもしれません。それでいて、ミュージカルへの情熱や芸事への執念は、ほかのレジェンドと同じように熱いものを持ってらっしゃる。ただ、醸し出す人としての空気が全然違う類いだったから、びっくりしました。あらためてすてきだと思ったし、自分も何十年後かにそうあれたならいいなと願いました。

 光枝さんは、役者としては他人より目立とうとするところがあったのでしょうが、普段は自分を押し出すタイプではなく、人の話をすることが多いそうです。今回話していただいた、劇団四季時代の市村正親さんや鹿賀丈史さんの話も、聞いたことがなかったエピソードだったのですごく楽しかった。光枝さんも「トークショーに出ても、人の話ばっかりしちゃう」と笑ってました。役者は「我が我が」しているイメージですけど、そうじゃないところも光枝さんのすてきな一面です。その一方で、「『鬼滅の刃』は鬼を人間扱いするのが素晴らしいけど、結局は人を殺す話なのが気に入らない」とか「コロナ禍での舞台の稽古は、母音法でやってみれば飛沫が飛ばないんじゃないか」とか、いろんなことに自分の意見をお持ちで、ユーモアを込めて話してくれます。意識がいつも外を向いてるのが、今も元気な秘訣のように思いました。

トークの合間には、3曲歌っていただきました。『キャッツ』から『ガス-劇場猫』、『アスペクツ・オブ・ラブ』から『ローズは君にぴったり』と光枝さんがタイトルをつけられたデュエット曲、『ラ・マンチャの男』から『見果てぬ夢』です。

『ガス-劇場猫』は、もちろん僕からのリクエスト。『キャッツ』で光枝さんが演じられていた、昔は人気スターで今は落ちぶれた役者猫のガスことアスパラガスが歌う曲です。まず僕がジェリーロラムというメス猫のパートを歌い、光枝さんにガスのパートを歌っていただきました。僕は11歳くらいから聴き続けているので、光枝さんとデュエットできるなんて夢のよう。まさに夢がかなった瞬間でした。『見果てぬ夢』も僕のリクエストです。光枝さんは『ラ・マンチャの男』の初演にも出演されています。何年か前に、同業者の結婚式の2次会で光枝さんが歌っているのを聴いて感動したので、ぜひ歌っていただきたいとお願いしました。

『アスペクツ~』からの曲は、逆に光枝さんの提案です。『恋のさだめは』という曲を僕がソロで歌って、その後2人でデュエットしました。デュエットのパートは長い曲の一部で、ローズという女性を巡って若者と年配の男性が争います。光枝さんは最初、通常のデュエットに加えて、僕が年配のパートを歌って、光枝さんが若者の方を歌うという、役割を逆にしたバージョンとの2パターンをやったら面白いんじゃないかというアイデアをくれました。僕は初めて歌うから、さすがに逆のバージョンは難しいと思ってできなかったのですが、やはり光枝さんは「常にひと工夫」を考えていました。受け身じゃなくて、意欲にあふれているところが光枝さんらしいなと。

光枝さんの歌はニュートラルというか、まっさらで、初めて歌うような感じでした。自分がずっとやってきた役だから、普通なら「こう見せるぞ」とか「ここが聴かせどころだ」みたいなのがあると思うのですが、久しぶりに持ち歌を歌うというふうではなく、その瞬間は役になりきって歌っていました。だから僕も、すごく歌いやすかった。やはりレジェンドの方が出られた作品の曲を本人の前で歌うのは、毎回すごく緊張します。僕は初めて歌うし、ご迷惑をかけたら申し訳ないので必死になります。でも、光枝さんは人を全然緊張させないので、僕も初めて落ち着いて歌えたように感じました。

ミュージカルは天が授けてくれた夢の産物

今回の『レジェンド~』では初めてライブ配信がありました。また、これまでのレジェンドは東宝ミュージカルで活躍された方が多かったのですが、光枝さんは劇団四季にいた期間が長く、東宝以外の話がメインだったのも『レジェンド~』では初めて。僕としては、企業や劇団の境を超えて、ミュージカル界という大きな枠組みの中で活躍されてきた方のお話をうかがいたかったので、よかったです。コロナ禍で演劇界の横のつながりは強くなっています。東宝の方の話では、劇場をどうするかなどで劇団四季とも常に連絡を取り合っているので、これまでとは関係も違ってきているそうです。そういう演劇界に変化が起こっている中での『レジェンド~』だったので、これまでの先輩方とはまた違ったキャリアで活躍されている光枝さんに来ていただいたのにも、意味があったように思います。

最後に「ミュージカル俳優に必要なものは何か」を尋ねました。光枝さんはこう答えてくれました。「ミュージカルは夢の産物で、天が授けてくれたと思ってるんです。そのいただいたものを大事にして、ミュージカルとともに生きていくこと。それしかないんじゃないかな」。本当に感動的な言葉でした。それは光枝さんの生き方そのもの。生涯ミュージカルとともにあればいいんだ、そうやっていけば光枝さんのようになれるかもしれないのなら、僕には大きな希望となりました。永遠のあこがれです。


『夢をかける』 井上芳雄・著
 ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に2020年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(日経BP/2700円・税別)
井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)、『夢をかける』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第87回は2021年2月20日(土)の予定です。

夢をかける

著者 : 井上芳雄
出版 : 日経BP
価格 : 2,970 円(税込み)

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