――リモート勤務に対応して、会社のフロアや座席を画面上に映し出して、従業員がアバターとして「出勤」できるバーチャルオフィスの利用も広がってきました。

「ビデオ会議の場合、利用者は決まった視点からしか見ることができません。これに対してバーチャルオフィスは空間性をちゃんと表現しようという取り組みですね。利用者はオフィス中を見渡すことができ、誰がオフィスにいるかや、外出しているかを確認できます。在席中でも取り込んでいるときはそれを示すフラグを立てたりして周囲に知らせることができます」

「バーチャルオフィスは、相手の都合がよいタイミングで話しかけられるといった、円滑なコミュニケーションを実現するのが第一の目的です。相手が見えない状態でやりとりする電子メールなど従来型のコミュニケーションの仕組みを拡張する概念だといえます。こうしたコンセプトは以前から学会などでも議論されてきたものです。また、これまで特定の現場で仕事をしてきた従業員にとっては、オフィスのレイアウトとか、同僚がどこに座っているかとかの空間的な条件が、仕事を進めるうえでの行動や思考のベースになっているところもあります。そうした空間的な情報を簡略な形であれ再現することで、リモートワークに現実感を与えることが一定程度期待できるでしょう」

――アバターは今後どのように使われていくでしょうか。

「現在のアバターは、組み込みのCG(コンピューターグラフィックス)モデルを使っていることが多いです。しかし、本人の顔や全身を忠実に3Dデジタルデータとして再現して動きを生成する技術開発が急速に進んでいます。このようなリアルアバターをどう作って利用するか、これが研究の一つの方向性です」

「私の研究テーマの一つは、窓口で人が対応する代わりにオンラインで顧客サービスができるアバターの開発です。顧客からの問い合わせに、文字のチャットで自動応答するといったことは現在の技術でできますが、そこに受付のリアルアバターが出てきて、自然な表情で対応できるようにします。人工知能(AI)が使われ、客の表情を読み取って説明がうまく伝わっているか判断する仕組みも盛り込みます。チャットだけとか、アニメのキャラクターのようなアバターを使うよりは、顧客の要求にこたえるコミュニケーションができると思います」

「顔だけでなく全身のアバターの研究もしています。全身をスキャンして得たデータから3DのCGを作り、関節などの体の構造を加えて、歩行などの動きをつくり出します。ヘッドマウントディスプレー(HMD)をつけてバーチャル空間に入ったときの自分の体になるわけですが、複数の人と話をしながら並んで歩くこともできるようになります。バーチャル観光を仲間同士で楽しめるような用途を想定しています。新型コロナ感染症の収束後も複数の人が仮想空間でコミュニケーションをとったり共同作業をしたりするニーズは大きいと思います。現在簡易なアバターを使っているバーチャルオフィスでも将来こうしたリアルアバターが使われるようになるかもしれません」

(編集委員 吉川和輝)

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