「2021年、特に求人需要が高まりそうな人材のキーワード」については、「DX」(64%)、「即戦力」(50.7%)、「IT」(44%)の上位3つに回答が集中。DX、IT関連人材への需要が今年の転職市場をけん引していきそうだ。また、即戦力重視の傾向はすでに転職市場で顕著になっている。コロナ禍以前は、ポテンシャル採用も広がっていたが、コロナ禍で企業のコスト意識が高まり、中途採用における即戦力へのシフトが加速するとの見方が大勢だ。

業界別エージェントの見方

・ジェイエイシーリクルートメント シニアプリンシパル 井上祐介さん(製造業)
20年の企業は社員の生産性を高めることを優先し、採用を当面控える企業が増えた。現在は昨年の状態を引きずってはいるものの底は打ったと思う。中長期的には「団塊世代の引退」「少子化による新卒の減少」「グローバル規模での競争激化」を背景に、外部の即戦力人材の採用が増えると予想する。副業人材の活用も進むのではないか。

そもそも「DXとは何か」で戸惑っている企業も多く、今後は企業のDX化を支える領域での求人が大幅に増えると考える。人工知能(AI)、あらゆるものがネットにつながるIoT、次世代移動サービス「MaaS(マース)」、高速通信規格「5G」といった次世代テクノロジーを担う分野の求人も大きな伸びが期待できる。ここ1~2カ月、菅義偉政権の「脱炭素化社会」発言を受け、エネルギー関連、電気自動車(EV)の分野の求人がさっそく増えたのは、象徴的な動きだったと思う。

・フォースタートアップス ヒューマンキャピタリスト 尾崎睦さん(ベンチャー)
コロナ禍以降、ベンチャー企業の採用については二極化した。求人を減らす企業がある一方、DX関連のソリューションを展開する企業などは採用を増やした。ベンチャーの採用は、基本的に資金調達と連動する。20年はベンチャー投資が前年より減少し採用費用が絞られたため、入社後、確実に活躍できる即戦力人材を求める傾向が強まった。中長期ではIT産業の求人需要は伸びが続くだろう。今後、大幅な成長が見込めるのはテクノロジー活用が遅れた、「レガシー」と呼ばれる業界ではないか。行政がその一例で、各種行政手続きをデジタル化すれば、社会にとっても転職市場にとってもインパクトが大きくなる。

・A・ヒューマン シニアコンサルタント 齊藤尚人さん(IT)
コロナ禍前はDX、5G、IoTなどの求人が伸びていたが、コロナ禍によってやや停滞した。現状はコロナ禍前の求人件数の8割に満たない状況だ。ただ、コロナ禍が収束したら通信ネットワーク業界の人材競争が一気に加速すると予測する。コロナ禍前と比較して選考のハードルは格段に上がった。以前なら70点取れば採用されたが今は95点取る必要が出てきたり、面接回数を増やしたりと経営陣のジャッジが非常に厳しくなってきた。21年も選考のハードルが高い状況が予想され、企業はなかなか意中の人材を充足できない状況が続きそうだ。

・ニューベリービジネスコンサルティング エグゼクティブ・コンサルタント 丸誠一郎さん(金融)
20年の金融業界は、求人が前年比で半分以下に減った割に転職希望者が増えた印象だ。転職希望者の現在の職種で多いのはファンドマネジャー、トレーダーだが、こういった職種の求人は非常に少ない。銀行・証券は経費削減のため、支店数を大幅に削減しオンラインにかじを切っている。従来の人員配置を見直し、総合職で優秀な人は本部や本店の法人向けホールセール部門に移し、個人向けリテールは基本、各地域の一般職が担う。新しい人員配置に満足しない総合職などが、今後、転職市場に多数出てくると予想している。金融関連で求人需要が伸びそうな分野は、資産運用のスペシャリストなどごく一部ではないか。

(日経転職版・編集部)

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