――アパレルの経営者は自社ブランドしか着ない、という方が多いのですが……。
「私はAOKI、オリヒカばかりではなく、いろんなブランドのアイテムを自社のものと組み合わせています。服好きなものですから。あと、例えばウチがこだわりのシャツを開発するような時だったら、アイデア段階のうちに国内外の興味のあるシャツを片っ端から買い集めて、自分で着て、研究します。どう見えるのか、どんなスタイルができるのか。料理人が他のレストランの味を見るのと同じことをやっちゃいます」

夢は「コムデギャルソンとコラボスーツ」
――お気に入りのブランドを挙げていただけますか。
「コムデギャルソンが大好きです。川久保玲さんのファンでもあります」
――どこが魅力でしょうか。
「素材選び、パターン、柄の合わせ方。生地を切り貼りする妙。シャツは非常に好きです。ギャルソンの服はいっぱい持っていて、仕事でもパンツをギャルソンにしたり、ジャケットをギャルソンにしたり。AOKIの服と合わせてよく着ています」
「ビンテージも買います。1990年代のギャルソンのジャケットを手に入れたくて、裏原宿や下北沢の古着店によく行きます。いま、若い方々の装いは80年代ファッションになっていますよね。バブル期のギャルソンやヨウジヤマモトのフォルムってどんなのだったっけ、と個人的に気になって探しています」
――対極に針が振り切れた感じで興味深いです。AOKIとギャルソンのコラボは楽しそうです。
「ひたむきにスーツだけを着て、スーツを売っている社長だと思っていましたか?(笑い) 夢はギャルソンとコラボでスーツを作ること。シャツもやりたいなあ」
――若者にとってファッションの優先度が低くなっていると言われています。彼らのファッション観をどうみていますか。
「若者はファッションに興味がないわけではないですよ。とくに10代、20代はスーツに憧れを持つようになっています。お父さんたちがスーツを着なくなっているからこそ新鮮に感じている部分もありそうです」

――父は「スーツ離れ」、子供は「スーツ映え」でしょうか。
「若い方に人気がある菅田将暉さんも、あいみょんさんも、上下そろいのスーティングスタイルが多いですよね。そういったオピニオンリーダー的な人のファッションに影響を受けて、スーツっていいよね、テーラードっていいよね、という感覚になる。よく行く下北沢ではここ最近、ジャケットやスーツを着ている若い人がほんとうに増えました。しかも、かっこいい着方をしているんですよね。彼らはスーツとは言わずセットアップと言う。スーツって言ってしまうと『おやじ』です。古着屋さんでもスーツをセットアップとして売っていますから(笑い)」

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