スーツの可能性 若い人の自由な着こなしに

――確かに若い人はスーツにTシャツやフーディーを合わせて、我が物にしています。

「ビジネススーツは自由じゃないぞ、と金融マンが話すのと真逆で、若い方々は新鮮に感じている。そこにカウンターカルチャーみたいな感覚を最近ものすごく感じます」

――コロナで仕事の服装がリセットされました。むしろスーツを再定義して、新しい着方を提案する好機かもしれません。

「カジュアル化でスーツ離れと言われていますが、おかしな話。若い人はいま、かっこよく着こなしています。スーツが自由じゃない服装の象徴みたいに言われるのには、ちょっと疑問を感じます。だからこそ、スーツのカジュアル化をもっとアピールしなければならないと思っています。クリエーティブなコムデギャルソンもスーツを作り続けているでしょ」

――2020年11月には、そのまま寝てもいい、というコンセプトで「パジャマスーツ」を売り出しました。ストレートな名前と斬新なコンセプトで驚きました。

「コロナ禍で在宅ワークが進んだころ、お客さまから、宅配便がいつ来ても受け取りに出られる格好がしたい、そのまま外に出られる部屋着がないか、という要望があったんです。そこでセットアップの部屋着の開発に着手したところ、創業者の会長(青木拡憲会長)が『パジャマスーツでいこうよ』と言って、名前が決まりました。ポイントは快適性とシルエットのよさ。素材は柔らかいけど適度なハリがあり、崩れた格好にはなりません。ノーカラーのジャケットとフルレングスのパンツの組み合わせで、寝るのも仕事も買い物もOK。計画比の2倍で売れています」

左にあるのがパジャマスーツ。「私は寝るときもスーツです……と言える快適スーツです」

――海外からも問い合わせがあると聞きました。部屋にいるときのスタイルは本来外の人に見せるものではなかったはず。コロナによってオンオフがシームレスになりました。

「最初はビジネススーツ、服装の自由化に合わせて上下別々に着られるセットアップ、そして、コロナによって生まれたパジャマスーツという流れでスーツを進化させてきました。いま、スーツ業界は厳しい状況にあります。緊急事態宣言も出て、ビジネスパーソンが職場で着る機会が一層減ってしまったことも確かです。ただ、スーツはカジュアルで着るニーズ、家で着るニーズといろいろな分け方ができます。これからは、そうしたニーズを一つ一つ、丁寧に掘り起こして提案することが大切です」

――そうした提案を若い人にどう伝えますか。

「いま、若い販売員がインスタグラムなどで、スーツの新しい着方のバリエーションを発信し、フォロワーがついています。コスプレじゃないですけど、今までTシャツとパンツばかりだった人が、スーツでここまで変われるというギャップ感は、人を振り向かせる力があるようです」

――トップの装いも社員に刺激を与えると思います。最近買ったお気に入りの服はありますか。

「やはりギャルソン! 九分丈のパンツを買いました。フォルムは大きめでワイドなのですが、裾幅が16センチくらいとつぼまっていて、どのスタイルのジャケットにもなんとなく合うというパンツなんです。これにわざと90年代のギャルソンのジャケットを合わせると面白くてはまってしまいます。もちろん、AOKIのスーツにも合わせて楽しんでいます」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


SUITS OF THE YEAR 2020

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時代の節目に挑み、大切なメッセージを放つ5人を表彰した。

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