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巨大な帆をもつ謎多き恐竜 獲物はどう捕まえた?

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ナショナルジオグラフィック日本版

太古の昔に現在のアフリカ北部の河川に生息していたスピノサウルスは、いったいどのように暮らし、狩りをしていたのか。9500万年以上前のこの大型の肉食恐竜について、科学界では長年にわたり議論が続いている。

ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)、ニザール・イブラヒム氏率いる研究チームは2020年、スピノサウルスは泳いで獲物を追い掛ける「川のモンスター」だったと主張した。スピノサウルス(Spinosaurus aegyptiacus)は体長約15メートルのうろこに覆われた獣脚類で、背中に高さ2メートル弱の帆のような突起を持つ。

しかし、2021年1月26日付でオンラインジャーナル「Palaeontologia Electronica」に発表された論文では、スピノサウルス科の世界的な専門家2人が別のモデルを提示した。

2人は解剖学的な証拠を調査し、その結果として、スピノサウルスは現代のコウノトリやサギのように、水辺で獲物を待ち、水に頭を突っ込んで捕食していたという異なる見解を示している。

スピノサウルスに水陸両方とのつながりがあったことはまず間違いない。歯の化石の化学的特徴から顎の構造まで、スピノサウルスは魚をはじめとする水辺の生き物をよく食べていたという証拠が残されている。同時に、スピノサウルス科は陸生の恐竜、さらには翼竜まで食べていたと示唆する化石記録もある。さらに、生まれる前の恐竜は卵が水没すると溺れてしまうため、少なくとも、産卵は陸上で行っていたことになる。

しかし、新しい論文が発表されたことで、スピノサウルスは水陸それぞれでどれくらい過ごしていたのかや、水中でどのように移動し、狩りをしていたかについて、専門家の意見はまだ分かれていることが明確になった。

論文の著者の一人である米メリーランド大学カレッジパーク校の古生物学者トム・ホルツ氏はナショナル ジオグラフィックのメール取材に対し、スピノサウルスは魚を食べる種も含めた仲間の中で最も水に近い恐竜であるという考えには同意すると述べている。「ただし、半水生の生物と水生生物には明確な境界線があるわけではありません」

「私たちの解釈では、スピノサウルスはホッキョクグマより泳ぎが上手だったかもしれませんが、おそらくアシカほどではありません」

一方のイブラヒム氏はナショナル ジオグラフィックのメール取材に対し、この新しい仮説を歓迎しながら、スピノサウルスが泳ぎながら狩りをするのに魚のような敏しょう性は必ずしも必要なく、そのように解釈しているわけでもないと念を押した。

「スピノサウルスがイルカのように高速で泳ぐ捕食者だとは誰も言っていません……スピノサウルスと同じ河川に暮らしていた獲物を見てください。巨大なシーラカンスなど、動きの遅い水生動物がいます」

「ティラノサウルスは俊足ではありませんでしたが、トリケラトプスを追い掛けるには十分でした」とイブラヒム氏は補足する。「それで事足りるのです」

新たな解釈、続々と発表

スピノサウルスがどのように暮らし、行動していたかについて、科学者たちの見解が一致しないのは驚くことではない。古生物学では、専門家が調査できる化石は限られている。タイムマシンでもない限り、最善の努力が正しいかどうかを確認するすべはない。

状況をさらに難しくしているのは、スピノサウルスが特に厄介な生き物であることだ。スピノサウルスは恐竜の基準からすると奇妙な存在であり、現存するどの生き物とも異なる。

先に述べたように、スピノサウルスは体長約15メートルのうろこに覆われた捕食者で、背中に高さ2メートル弱の帆を持っていた。他にも重要な証拠がいくつかあったが、もはや調べることはできない。1900年代初頭にスピノサウルスを初めて定義したエジプトの化石は、第2次世界大戦中、ドイツ、ミュンヘンの爆撃で破壊されてしまった。

それでも2014年まで、スピノサウルスが魚を食べていたという考えは古生物学者たちにおおむね受け入れられていた。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南米で数十年かけてスピノサウルスの近縁種を発見、研究してきた古生物学者たちは、スピノサウルス科は主に魚を食べる恐竜で、おそらく海岸や川岸に暮らし、浅瀬で捕食していたと考えた。イブラヒム氏のチームはこの仮説をさらに発展させ、スピノサウルスはほとんどの時間を水中で過ごすように適応していたとする説を2014年の論文で主張した。

とはいえ、すべての科学者がイブラヒム氏に賛同したわけではなかった。2018年、カナダの古生物学者ドナルド・ヘンダーソン氏がコンピューターシミュレーションを使い、スピノサウルスの浮力、重心、そして背中の大きな帆は泳ぎに適していないと主張した。

しかし、さらなる驚きが待っていた。イブラヒム氏の研究の中心となった骨格は、モロッコのサハラ砂漠にある砂岩の露頭で発掘されたもので、ワニのような頭蓋骨、異常に短い後肢、ペンギンに似た密度の高い骨など、興味深い特徴を持っていることがすでに知られていた。さらに2020年4月、イブラヒム氏のチームは学術誌「ネイチャー」で、この標本には奇妙な形をした極めて柔軟な尾があることを明らかにし、水中で前進するためのパドルだったという解釈を披露した。

米ハーバード大学のバイオロボティクス研究室で行われた実験では、スピノサウルスの尾の輪郭は、現代のワニほどではないものの、近縁種の尾に比べると水中で効率的に推力を生み出すと示された。さらに2020年9月、別の論文で、モロッコの古代の河川堆積物から不釣り合いなほど多数のスピノサウルスの歯が見つかったと発表された。

泳いだ証拠か、歩いた証拠か

これらの新たな化石に関する知見が発表されるのを受け、ホルツ氏と英ロンドン大学クイーン・メアリー校の古生物学者デイビッド・ホーン氏は、鼻から尾の先までスピノサウルスの解剖学的な特徴を調べ、水中でどのように移動していたかを再評価した。2人はそれぞれの特徴について、水中を歩いていた証拠となるか、泳いでいた証拠となるか、あるいはそれらの解釈と合致するかを調べた。

ホーン氏とホルツ氏によれば、スピノサウルスのS字を描く長い首は、水面を泳いでいるか、サギのように浅瀬に立っているとき、獲物を上から待ち伏せるのに適しているという。対して、現代のアシカのように、水中で積極的に獲物を追い掛ける捕食者は、首が太くて短い傾向にある。

また、スピノサウルスの目と鼻孔は頭蓋骨の頂点にないため、呼吸したり見たりするには、頭の大部分を水から出しておく必要があったと研究チームは指摘する。ただし、鼻孔が鼻のはるか後方にあるため、鼻先を水に入れたまま楽に呼吸できたはずだ。こちらも浅瀬で獲物を待ち伏せるのに最適な特徴だと言える。

研究チームはさらに、スピノサウルスの尾は泳ぐのに役立っていたかもしれないが、水中で魚に突進できるほど筋肉質でも効率的でもなかったのではないかと補足している。「スピノサウルスの尾が泳ぎの助けになっていた可能性があることには同意します」とホルツ氏は述べている。「しかし、その効率は獲物を追い回す捕食者はもちろん、奇襲を特徴とするワニのレベルにすら達していません」

ホーン氏とホルツ氏は、スピノサウルスの尾が別の目的を果たしていた可能性を示唆している。現代のトカゲの仲間であるグリーンバシリスクをはじめ、パドルのような高さのある尾が社会的、性的な機能を担う例もある。

イブラヒム氏らはこの解釈を退け、ホーン氏とホルツ氏の論文はイブラヒム氏らの論文の明示的な反証となる新たなデータを示していないと主張している。

イブラヒム氏らの論文の最終著者に名を連ねる米ハーバード大学の古生物学者ステファニー・ピアス氏はメール取材に対し、「私から見れば、今回の論文に示された解剖学的特徴の組み合わせは、水中環境への力強い適応を示唆しています。つまり、水中を泳げる半水生の動物です」と述べる。「彼らが論文で非常に狭く定義しているように獲物を追い掛ける捕食者ではありませんが、泳いで獲物に突進し、水中で捕まえることはできたと考えています。彼らは定義にこだわりすぎています」

ホーン氏とホルツ氏の論文はもちろん、スピノサウルスがどのように狩りをしていたかについての最終的な結論ではない。新たな化石が発掘されたとなればなおさらだ。イブラヒム氏らは2019年から2020年にかけて、足と足首の骨を含むモロッコのスピノサウルスの化石を新たに入手した。スピノサウルスの足に水かきがあったかどうかを確かめることができるかもしれない。

イブラヒム氏は次のように述べている。「スピノサウルスの本当の姿を知りたい人は、そのまましばらく待っていてください。なぜなら……私たちは骨を手に入れたのですから!」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年1月30日付]

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