日経ナショナル ジオグラフィック社

世界中からデータを収集

ダルビー氏とパコルー氏は今回の研究のため、サメとエイ18種のデータを世界中から集めた。その多くは政府の報告書に埋もれていたり、古いハードディスクに保存されていたりした。

サメの保護に対する意識の高まりを受けて、漁業管理当局はサメのデータの収集を開始しており、研究チームは最新の情報を得られたのだ。

研究チームは、1905~2018年のデータセットを最終的に900作成。それぞれのデータセットは、1つの種の個体数が特定地域でどのように変化したかを表している。国際的な専門家とコンピューターモデリングの助けを借りて、チームはこれらのデータから全世界の個体数の変化に関する最良の推定値を導き出した。

チームは遠洋漁業の手法の発展も考慮に入れた。何百もの釣り針が付いた長いはえ縄や巨大な巻き網はしばしば、サメまで捕まえてしまうことがある。この漁法は、この50年で倍増し、外洋性のサメが捕獲される数は約3倍になった。

「サメの希少性が高まっている事実を考慮すると、1匹のサメが捕獲される確率は今や1970年の18倍です」とダルビー氏は説明する。

今回の分析に不確実さが残ることは避けられず、そのため、何十年もサメが乱獲されてきた地域では、個体数の減少を過小に評価している可能性があるとダルビー氏は付記している。

最も減少したのは熱帯地域

サメとエイの個体数が最も減少したのは、ここ数十年で沖合漁業が拡大した熱帯地域だ。

今回の研究に参加した米バージニア工科大学の集団生物学者ホリー・キンズベイター氏は、大型のサメやエイが希少になるにつれて、漁業の対象が小さな種に向かっていると話す。キンズベイター氏は数種のイトマキエイを研究しているが、イトマキエイのいくつかの個体群は過去15年間に85%減少した可能性がある。

イトマキエイの肉を食べる人もいるが、近年、えらが中国医学で珍重されている。この変化は、もともと捕まえていた種が希少になったとき、漁師はほかの種に目を向けることを示唆しているとキンズベイター氏は指摘する。

「もともと、外洋にサメやエイを狙う漁船はいないと思います。しかし、マグロ漁を始めたが漁獲量が減ったような場合、ほかの生物を捕まえるようになり、その販売方法まで考え出してしまうおそれだってあるでしょう」

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