つらい痛み、見逃していた真因 治療前の診断こそ大事愛知医科大学 学際的痛みセンター長 牛田享宏(5)

ナショナルジオグラフィック日本版

愛知医科大学にある「学際的痛みセンター」
文筆家・川端裕人氏がナショナル ジオグラフィック日本版サイトで連載中の人気コラム「『研究室』に行ってみた。」。今回は「慢性的な痛み」について愛知医科大学の牛田享宏・学際的痛みセンター長に聞くシリーズを転載します。長く続く体の痛みが、心理や社会ともつながっていることを知り、上手なつきあい方を身につけることは、次世代の「一般教養」になるかもしれません。

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それでは、牛田さんの「愛知医科大学・学際的痛みセンター」ではどんな治療を行ってきたのか、ちょっとだけ聞いておこう。すでに見てきた通り、本当に多彩な慢性疼痛患者が訪れるので、唯一無二の「これをやれば万事OK」な治療法というのはなかなか難しく、ケースバイケースで考えていかなければならないのだろうと想像する。でも、どんな手立てがあるのかくらいは知っておきたい。

「まず、僕たちの痛みセンターが依拠しているのは、前にも言ったと思いますが、『生物心理社会モデル(Bio-Psycho-Social Model)』です。痛みは、『生物学(医学的)的要因』『心理的要因』『社会的要因』が相互に作用して成り立っているわけですから。だから、集学的なアプローチといって、つまり、僕みたいな整形外科医や麻酔科医などの疼痛の専門医だけではなく、いろんな分野の専門家が、患者さんの情報を共有して、治療方針について協議するんです」

患者の治療方針を各方面の専門家たちが協議するというのは、ドラマなどでもよく見る「カンファレンス」ということだろう。ただ、その範囲が広い。かかわる可能性があるメンバーのリストを見せてもらったところ、整形外科医、麻酔科医、精神科医といった痛みにかかわるコアな専門家たちはもちろん、内科医、歯科医、専門看護師、理学療法士、臨床心理士も含まれていた。

「その上でも、治療の傾向が時とともに変わってきている部分はあります。よい薬もなかった時代には、いろんな薬、例えば抗うつ剤、抗てんかん剤なども駆使して、なんとか生活に戻してあげようというパターンでした。でも、今では、効きが良い薬も出てきて、一般の開業医の先生もそういったものを使えるようになって、よくなる人はそのレベルでよくなっていきますので、僕たちのところに来るのは、薬が効かなかったような人たちです。モルヒネなんかをむちゃくちゃ使われているけれどそれでも効かなくて困り果てている、というような人も来ます」

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