「破壊と創造」でよみがえる

企業は成長し続けなければなりません。しかし、経営陣がチャレンジ精神を失い、その努力を怠ることがあります。また、戦略が失敗することもしばしばです。昨年来のコロナ下では、危機に対応しようと努力しても報われないという企業が続出しています。ただ、こうした困難な局面にあっても、企業には「不連続の変化」に対応することが求められています。深刻な危機を乗り越えたリストラクチャリングの成功例として、本書ではIBMが取り上げられています。以下、引用しましょう。

リストラクチャリングに成功した好事例としてIBMが挙げられます。創業以来、順調に成長し、世界のエクセレント・カンパニーとして評価されていたIBMは、1990年代初めに一気に経営危機に直面します。それまでも売上高は伸びているものの、収益性は徐々に悪化し、しかもIT業界がメインフレーム中心からダウンサイジング、ネットワーク、ソフト・サービス化へとシフトする中で、その対応が遅れていました。1991年のオイルショックがトリガーとなり、IBMの経営は一気に苦況に立たされたのです。
 その状況で乗り込んできたのが、ガースナーです。ガースナーは最初の2年間、財務とオペレーションのリストラクチャリングに専念しました。生産拠点を50カ所から9カ所に減らし、資産を圧縮するとともに、調達コストの20%削減、情報化コストの47%削減を行いました。オペレーション面では、「Transforming IBM」と称して今までの機能別縦割り組織の弊害を取り除くため、業務プロセスを一新し、生産のリードタイムを3週間から1週間、受注処理から生産手配までの時間を2日から8時間に短縮するなどのオペレーションの改革を徹底させたのです。
 その一方で、戦略面ではハード志向からより収益性の高いソフト・サービス志向へのシフトを加速させました。また、ガースナーはIBMの風土面にもメスを入れました。それまでの官僚主義、独善主義、門外不出主義といった体質からオープンで自由闊達な風土へと転換させたのです。
 IBMは1994年から再度成長軌道へと戻りましたが、ガースナーの「破壊と創造」により「生まれ変わった」と言えるのです。
(第9章 停滞を克服し、新たな成長を実現する――成長と再生のマネジメント 288~289ページ)

自分が社長ならどうするか

日本でも、こうした大手企業の再生としては日立製作所やソニーのような実例があります。ここで共通するのは、絶えざるイノベーションへの取り組みです。著者は「既存の価値をあえて否定することによって、連続的にイノベーションを生み出すことができるかどうか。企業が時代を超えて反映を続けることができるかどうかは、そこにカギがあると言えます」と強調します。

本書には、個別企業を取り上げたミニケーススタディーがふんだんに紹介されています。それも参考にしながら、自分の勤める企業の経営を「自分が社長ならどうするか」という視点で見直してみてはいかがでしょうか。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・赤木裕介

デジタルトランスフォーメーション(DX)、AI、〇〇テック、IoT、インダストリー4.0……2015年あたりから、企業経営のデジタル化が急速に進展し、競争環境や各企業のビジネスモデルに大きなインパクトを与えています。

また、コーポレート・ガバナンス改革が進み、株主資本主義の見直し、ソーシャルの重視の流れも大きくなってきました。さらに、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、企業の在り方や個人の働き方についても見直しが迫られています。

こうしたさまざまな環境変化に伴い、企業経営の常識は大きく変わりました。2014年に刊行した『ざっくりわかる企業経営のしくみ』も、そろそろ改訂の時期を迎えたと判断し、著者の遠藤氏と相談して、改題のうえ全面リニューアルすることにしました。

ページ数も100ページ近く増え、それだけこの7年間の変化が激しかったことが感じられます。本書を読んで、自分の知識に抜けているところがないか、改めて確認していただければと思います。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

ビジネス新・教養講座 企業経営の教科書 (日経文庫)

著者 : 遠藤 功
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,100 円(税込み)

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