こう説明した上で、著者は「経営は『生きもの』であり、『環境の産物』だ」と指摘します。日々の変化の中で、経営を構成する様々な要素を統合的にマネージすることが経営者の仕事なのです。

本書は、全10章の構成です。第1章で企業経営の本質について考察したあと、2章以降で各論を展開します。経営を考える上で必要になる要素に整理し、一つずつ詳しく解説していきます。分類は下記の「企業経営を構成する8つの要素」に、「テクノロジー」を加えたものになっています。

(1)経営理念と企業の価値観
(2)戦略のマネジメント
(3)マーケティングのマネジメント
(4)組織のマネジメント
(5)人材のマネジメント
(6)資金のマネジメント
(7)オペレーションのマネジメント
(8)成長と再生のマネジメント

ビジョンに代わるパーパス

ここからは、最近注目され始めた「パーパス」という言葉をご紹介します。「企業理念」「経営ビジョン」「ミッション(使命)」……。企業の進むべき方向や組織運営の目標を示すこうした言葉とならんで、耳にする機会が増えてきました。直訳すると「目的」となるパーパスを重視するのは、「企業やそこで働く一人ひとりが『社会における“存在意義”』(パーパス)を見つめ直し、再定義しようとする動き」なのです。

例えば、ネスレは創業150周年にあたる2016年に、「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します」という「パーパス」を初めて明文化しました。これは創業以来ネスレという会社がなぜ存在しているのか、これからもなぜ存在し続けるのかを表したものです。創業150周年という節目のタイミングで、これからの150年、200年の将来を見据え、自分たちの「存在意義」を問い直し、明確にしたのです。
 世界の上場企業の統合レポーティングに大きな影響力を持つIIRC(国際統合報告委員会:International Integrated Reporting Council)は、2018年に「purpose beyond profit(利益を超えたパーパス)」というレポートを出し、大きな注目を集めました。
 これまでの成長、利益一辺倒の経営ではなく、それぞれの企業が社会において「何のために存在するのか」という根本的な問いかけをすることが求められています。
 そして、それは企業だけにとどまらず、社員一人ひとりへの投げかけでもあります。組織の「パーパス」と個人の「パーパス」の両方を融合させることができれば、企業はより大きな力を発揮することが可能になるのです。
(第2章 強烈な経営理念が組織を動かす 58~59ページ)
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