検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

父・山本寛斎、最後の言葉 重なった親子の「未来」

編集委員 小林明

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

昨年7月21日に急性骨髄性白血病のために76歳で天国に旅立った山本寛斎さん。次女で女優の山本未來さん(46)が、世界的なファッションデザイナー兼イベントプロデューサーとして活躍してきた父親の生きざまや闘病生活、貴重な最後の言葉などについて単独インタビューで振り返ってくれた。前半・後半に分けて紹介する。

寛斎さんの病気が発覚したのは昨年2月初め。「父の名声や威光に頼らず、自分の力を試してみたい」とファッション界には背を向け、10代の頃から女優の道を突き進んできた未來さんが、父が立ち上げたデザイン企画会社「寛斎スーパースタジオ」(東京)にプロデューサーとして入社した直後の出来事だったという。

距離を置いてきた父の会社に入社、直後に届いた「運命の知らせ」

――仕事面で父・寛斎さんと距離を置いてきたのに、昨年2月、どうして「寛斎スーパースタジオ」に入社したんですか。

「自分の人生を見つめ直したとき、女優業以外で何か新しい仕事に挑戦できないかと考えるようになったからです。小学校に通う一人息子の子育てにも手がかからなくなってきたし、女優を続けながら、5年くらいでものにでき、自分の自信にもつながるような新しい仕事はないかと探し始めていました。自然な気持ちの変化ですね。父にそんな話をしたら、その話が『寛斎スーパースタジオ』の共同創設者で社長を務める父の実弟(山本斎彦さん)に伝わり、会社と1年ほど協議を重ねたうえで、プロデューサーとして入社することを正式に決めました」

――ところが、その直後に寛斎さんの病気が見つかります。

「本当に運命のイタズラというか、不思議な巡り合わせですね……。私が寛斎スーパースタジオに入社したのが2020年2月1日。その5日後(2月6日)に父から携帯電話に連絡が入り、『健康診断で急きょ、再検査が必要になった』と伝えられます。実は2月8日は父の76歳の誕生日。私は父の好物のホルモン焼きで誕生祝いをしようと焼肉屋さんに予約を入れていたんです」

「『誕生会の後じゃだめなの?』と父に聞くと、『いや、早急に入院しないといけないらしい』という返事。予想外に事態が差し迫っていたようです。父は北極圏に冒険(2019年)に出かけるくらい元気だったし、本人にもそれほど自覚症状がなかったようなので戸惑いました。でも精密検査の結果、急性骨髄性白血病だと正式に診断され、そのまま抗がん剤治療に入ります」

女優になったワケ、重ならないと思っていた親子の「未来」

――入社後、ほとんど一緒に仕事をしていないんですか。

「そうなんです。私、生まれて初めて父と同じ職場で働くことになったので、『これから自分の仕事ぶりや成長をすぐそばで父に見守ってもらえるんだ』と楽しみにしていたんですよ。ところが入社した直後に父の病気が発覚するなんて……」

――何とも皮肉な運命ですね。

「ええ……。そもそも私の名前には由来があって、父がパリコレのショー(1974年)で失敗し、経営に行き詰まったタンミングで私を授かり、『神様、もっと真面目になりますから、自分に未来をください』という願いを込めて、『未来』(2000年に『未來』と改名)と名付けたそうです。後で聞いて、『ん? 私の未来じゃなくて、父の未来なんだ……』なんて笑ったんですが、私も人に頼ることが好きではないから、父がいるファッション業界にはあえて入らず、女優の道を選んだ。だから『父の未来』と『私の未来』が重なることは永遠にないだろうな、なんてずっと考えていました」

「ところが思いがけず、父と同じ会社で働くことになり、そして、親子で新たな人生に足を踏み出そうとした瞬間、私が会社に入ったのと入れ替わるように、父が天国に旅立ってしまった……。とても残念な出来事だけど、『これも運命だから仕方がない』と今では前向きに受け止めています」

――闘病は6カ月続きます。寛斎さんはどんなご様子でしたか。

「抗がん剤治療はかなり個人差があるそうですが、父の場合、幸い、目立った副作用も出ずに済みました。自分を元気づけるためか、カラフルなパジャマを着て、病室内も様々なポスターでにぎやかに飾り付けていましたね。最後まで健康の回復を信じ、お医者さんや看護師さんもビックリするくらい前向きに治療に取り組んでいました。でも新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、家族と思うように面会できなかった。病院からも『コロナに感染したら、一発で命が危なくなる』なんて言われました。抗がん剤治療で免疫力が落ちてきますからね。だから、本人が元気で面会できても、『これが最後になるかも』と常に覚悟しておかなければならない複雑な状況でした」

準備していた「引き継ぎ」、幹部社員を集めて「役者はそろった…」

――寛斎さんは会社の引き継ぎについてはどう考えていたんでしょう。

「数年前、父からこんな話を聞いていました。『まだまだ元気なつもりだけど、自分もさすがに年を取ってきた。現役として活動できるのもあと10年くらいだろう。今後は若い世代の育成を支援し、バトンをつなぐのが自分の使命だと思っている』。そんな気持ちで2019年にデザイナーの卵を支援するプロジェクトを立ち上げ、会社経営も幹部に引き継ぐ準備を徐々に進めていたんです」

「そして、抗がん剤治療に取り組んでいたある日。父は突然、幹部社員を病室に呼び集め、一人一人の顔を食い入るようなまなざしで見ながら、『これまで色々と指導してきたこと、自信を持ってやっていけるな。どうだ!』と尋ねました。サムライのような鬼気迫った顔つきで……。幹部全員が『はい』と答えると、父はようやく安心したようにうなずき、『未來も会社に入ったことだし、これで役者はそろった……』とつぶやきました。自分の哲学や会社を引き継ぐチームがついに整ったと感じたのかもしれません」

父に聞きたかった最後の質問、「女優としての個性」「入社後の勝算」…

――闘病中の会話で最も印象的なやり取りは何ですか。

「本人にあまり『死』を意識させたくなかったので少し迷いましたが、もし聞きそびれてしまったら後悔すると思い、2人だけでいるとき、心の中でずっと気になっていたことを2つ質問してみました。それは『女優として個性を持てているか』ということ。そして『父の会社に入って勝算はあるか』ということ……」

「私、10代の頃から父に『女優として個性が足りない』と言われ続けてきたんです。父は厳しいプロの世界を感性で勝負してきた人間ですから、独自の判断基準がある。自分でも思い当たる節があったので、以来、私はそのことを常に意識しながら、女優として努力を重ねてきました。寛斎スーパースタジオへの入社では、父は私の話を会社に仲介しただけ。具体的なアドバイスを受けていたわけでもないし、それまで父の気持ちや考えについてきちんと聞いていなかった」

父の答えで不安が解消 「寛斎イズム」で世界をもっと元気に

――2つの問いに対して、寛斎さんはどう答えたんですか。

「私の顔を見ながら、父は『女優として確固たる個性を持っているから大丈夫。このままの調子でやって行けばいいと思うよ』と言ってくれた。入社後の勝算については、『女優の仕事だって、デザインの仕事だって、情熱を表現することでは基本的に変わらない。大事なのは適性があるかどうか。自分がやりたいことを目いっぱい楽しみながら頑張っていれば、それが人々に伝わり、世の中を明るく元気にできる』と言ってくれた。それで自分の迷いは完全に消えました」

――今後、プロデューサーとして何に取り組む予定ですか。

「父が言うように、自分の好きなことを掘り下げながら、ビジネスにつなげてゆきたい。もともと私は犬が大好きで、日本盲導犬協会のデモンストレーターや盲導犬候補の子犬を育てるパピーウオーカーをやっていたくらいです。父との共通の趣味も犬でした。だから、その経験をいかして、ペットを軸にした空間プロデュースに取り組みたい。もう一つは食のプロデュース。コロナ禍で自宅で食事する機会が増えたので、家庭でおいしく安全に楽しめる冷凍食品を企画しています。子供も喜ぶし、家事のストレスも解消できて、皆が笑顔になれる。『未來計画』というプロジェクトとして進めてゆく予定です」

「父は最後に『やりたいことにはすべて挑戦してきたし、自分の人生にまったく悔いはない』とも語っていました。まさか父とこんなに早く、こんな形でお別れするなんて、夢にも思わなかったけど、寛斎イズムを受け継ぐスタッフと力を合わせながら会社を支え、人を喜ばせ、世の中をもっと元気にしてゆきたい。今はそんな気持ちでいっぱいです」

(聞き手は編集委員 小林明)

※次回は未來さんから見た意外な父親像や教育論、世界的なロックスター、デビッド・ボウイとの家族ぐるみの交流など数々の貴重な思い出について回想します

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_