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日本ならではのマーケティング手法

皆さんは、節分に「恵方巻き」を召し上がりましたか。巻きずしを一本、恵方(今年は南南東)に向いて無言で食べれば幸せになる、というやつです。毎年、「あれは関西の行事なんですよね?」と大阪府民の私に尋ねる人がおり、「実は……」と解説するのが年中行事になっています。

恵方巻きの起源については諸説があり、大阪の一部の商家の間で丸かぶり寿司の風習があったのは事実のようです。それを今の形にして全国に広めた仕掛け人たち(マーケター)がいます。

一人は、大阪のすし店の業界団体です。この風習に目をつけ、広告チラシを大量に巻いたり、大々的にキャンペーンを打ったりして、長年宣伝に努めてきました。

もう一人は、コンビニ大手のセブンイレブンです。広島のある店が節分に丸かぶりずしを売り出し、その成功を足がかりに1998年から全国展開していくことになります。恵方巻きという絶妙のネーミングは、その間にセブンイレブンがつけたものです。

つまり、大半の関西人も、皆さんと同じ"にわか恵方巻き"信者です。親から子へと受け継がれてきた伝統行事では決してなく、バレンタインデーのチョコと大差ありません。

もっと言えば、日本の伝統行事なんて怪しいものだらけです。正月の行事にしても、初詣は電鉄会社、年賀状は旧郵政省、豪華なおせち料理はデパートが仕掛けたものです。

どうやら日本人は伝統行事という名の物語に弱いようです。そういう意味では、恵方巻きは日本的マーケティングの伝統を受け継いだ、商魂たくましい商品だということができるかもしれません。

潜在的なニーズを市場化する

今回取り上げるのは、人々が抱いている欲求や願望から新たな商品・サービス・ビジネスを考える「ニーズ思考」です。成功例の一つとして恵方巻きを紹介しました。

そもそも節分というのは、季節の変わり目に際して、「悪いものを払う」「幸運を呼び込む」ための行事です。どちらも私たちが共通に持っている、顕在化されたニーズです。

ところが、節分の代表的な行為である豆まきは邪気払いの色合いが濃く、幸運の呼び込みに関する分かりやすい行為が見当たりません。そこをうまくついたのが恵方巻きだと思います。

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