朝ドラ『おちょやん』 杉咲花、上方女優の半生に全力
大正から昭和40年代まで、大阪を中心に活躍した女優・浪花千栄子(なにわちえこ)。戦前に松竹新喜劇の前身、松竹家庭劇に参加するも私生活で悩みを抱えて引退状態に。しかし戦後、NHK大阪のラジオ番組で女優業を再開。ついには"大阪のお母さん"として親しまれ、映画やテレビで大活躍する。NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)第103作「おちょやん」は、浪花をモデルにヒロインの竹井千代(杉咲花)が上方を代表する女優になるまでを描いていく。
第1週では、大阪の南河内で暮らす貧しい農家の娘、千代(毎田暖乃)がわずか9歳で女中奉公に出るまでの話を展開。飲んだくれの父・テルヲ(トータス松本)はほとんど仕事をせず、幼い頃に実母を亡くした千代は、弟の面倒を見る毎日。そんななかで新しい母親の栗子(宮澤エマ)が現れるも確執が深まり、道頓堀の芝居茶屋で女中をすることを決意する。
制作統括の櫻井壮一氏によれば、この逸話はほぼ事実だそうだ。「かなり大変な幼少期だったとか。悲惨な状況だったようですが、暗いドラマにはしたくなかったので、千代は明るくて口が達者な女の子にしました」(櫻井氏、以下同)。
第3週からは杉咲が登場。朝ドラ「とと姉ちゃん」(16年)で主人公の妹を好演した杉咲は、朝ドラ出演2作目で、主演を務めることになった。「杉咲さんの出演作はほとんど見ています。どの作品でもお芝居が抜群にうまいという印象。今回の主人公は女優なので、嘘のない表現ができる人にやってもらいたかった。非常に幅の広い演技が求められるので、この作品では『杉咲さんってこんなお芝居もするんだ』と、新たな一面を見てもらえると思います」
千代の奉公先である道頓堀には、当時、たくさんの芝居小屋があった。芝居の魅力にとりつかれた千代は「女優になりたい」という願望が募り、ついには奉公先を飛び出して京都で演技の世界に飛び込む。かい性のないテルヲや、道頓堀の芝居茶屋の女将で千代にとって母親のようなシズ(篠原涼子)や、憧れるスター女優の百合子(井川遥)、後に千代と結婚して新しい喜劇作りを目指す一平(成田凌)ら、多くの人との関わりのなかで、千代は前進する。
櫻井氏は出演者について「意外性のあるキャスティングが生み出す、アンサンブルを狙っている」と語る。ミュージシャンのトータス松本や、舞台を中心に活動する宮澤エマに加え、歌舞伎役者の中村鴈治郎や、元宝塚歌劇団の花組トップスター・明日海りおが出演。語りは落語家の桂吉弥が担当。「今後もテレビドラマになじみのない方が登場します」
脚本は最終回視聴率が42.2%を記録した「半沢直樹」(13年)で知られる八津弘幸。櫻井氏とは17年名古屋局制作の「1942年のプレイボール」からの付き合いになる。「第1週を見ていただければ、脚本の素晴らしさが伝わると思います。描き方次第で暗くなってしまう話を、カラッとした物語に仕上げてくれました。2週目以降も、1週間のなかで必ず笑いと涙をちりばめ、ドラマ性のある話が展開していきます。先々も千代がどんな人生をたどり、どう成長していくのか楽しみにしていただきたいです」
(「日経エンタテインメント!」1月号の記事を再構成 文/田中あおい)
[日経MJ2021年1月29日付]
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