左がウズラの卵、右がニワトリの卵(鶏卵)

「あの模様は、血液です。ウズラの卵の産卵前は無地ですが、産卵される1~2時間前にポルフィリン色素により“印刷”されます。白い卵の通過の状態、音、光などの外部からのストレスなどにより多少変化はしますが、ウズラ内部の印刷プリンターの模様は同じであるため、同じ鳥からは同じような卵が産卵されます。また、ウズラは本来野鳥であり卵を草むらの根元に産卵するために、外敵から身を守る保護色として模様がついていると考えられています」(葛山さん)

なんと、あの柄の正体は、血液だったのだ! ウズラによって柄が違うが、個体による柄は同じということは、卵の柄からウズラが判明できるという、まるで人間の指紋判定のようなこともできるのかもしれないと思うと、何だかわくわくする。

豊橋市では、ウズラの卵の殻を使ったユニークな商品開発も行っている。それが、ウズラの卵の殻を肥料にして育てたサツマイモ「うずらいも」だ。

こちらが「うずらいも」。ウズラの卵の殻をまくことで土の通気性が良くなり、順調な発育が促されるとのこと(写真提供:豊橋市)

豊橋市産業部農業企画課の白藤謙一さんは「うずらいもは、浜松市のうなぎいも協同組合さんが、浜松名物であるウナギ養殖の残さ(うなぎの食べられない頭や骨のこと)を堆肥としてサツマイモ栽培をされていることを参考に、豊橋市オリジナル商品として2019年度から生産を開始したもの」と話す。ウズラの卵の殻に含まれるカルシウム成分が、うずらいもの甘味に寄与するのだという。

ウズラの卵の殻(水分を含む)は、豊橋養鶉農業協同組合から無償で提供を受けて生産者は自ら天日乾燥し、それを堆肥として使用しているとのことで、環境面にも優しい。そしてこのうずらいも、なんと東南アジアで大人気とのこと。マレーシアでは5年ほど前からサツマイモブームが到来し、現在も続いている。

マレーシアへのうずらいもの輸出は2019年度からスタートし、初年度は約1.3トン、2020年度は倍増を見込めるほど人気を博している。「自然な甘みが人気で、こだわりの栽培方法やPRキャラクター『うずも』もその人気に拍車をかけています」(白藤さん)という。

このように、ジャパニーズ・クエイルとしてさまざまな形で世界にはばたく日本のウズラ。日本では、スーパーでウズラの水煮、そして今では、コンビニなどで酒のつまみとして真空パックのウズラの卵の薫製なども簡単に手に入る。肉より卵党の筆者としては、コロナ禍で日本に里帰りできない今は、羨ましい限りだ。せめて、今年もイースターに向けて、ウズラの卵にカラフルな調色を楽しむとしよう。

冒頭に紹介した自作カラフルウズラ。作り方は、ゆでて殻むきしたウズラの卵を、食紅で着色した塩水に一晩つけるだけ。見て楽しい、食べておいしい一品だ

(パリ在住ライター ユイじょり)

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