2021/2/13

適応し拡散する能力に関して、「ヨーロッパオオナマズは、メガフィッシュのなかの本当の例外なのです」と話すのは、米ネバダ大学リノ校の魚類生物学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもあるゼブ・ホーガン氏だ。同氏は、東南アジアのメコン地域で、絶滅の危機にひんしている大型淡水魚の多くを研究している。

淡水生態系は全体として世界で最も脅威にさらされており、外来種の導入がその主な原因だと考えられていると同氏は言う。

気候変動による生態系の変化

温暖化や降水パターンの変化を含む気候変動によって引き起こされる生態学的な変化は、ヨーロッパオオナマズが生息域を広げるうえで、さらに好ましい条件を作り出す可能性がある、と科学者は言う。

「気候変動の影響は種によって異なり、一部の外来種は、在来種に比べ、大幅に分布域を広げる可能性があります」と話すのは、侵略的外来種が専門の英ボーンマス大学の魚類生態学者ロブ・ブリットン氏だ。

ヨーロッパオオナマズが年1回の産卵をするためにはセ氏20度以上の水温が必要だが、かつては生息していなかったベルギーやオランダの川の水温が上がり、彼らが集団を形成しつつある証拠がみられる、とサントゥール氏は話す。

また、同氏によると、フランスでは1年の中で川が暖かい時期が長くなり、ヨーロッパオオナマズが1年に何回も産卵している形跡があるという。

イベリア半島には40種を超える固有の淡水魚が生息しているが、ヨーロッパオオナマズはすでに1つの種を絶滅させた可能性が高い、と話すのは、スペインのジローナ大学の水生生態学者エミリ・ガルシア=ベルトー氏だ。

「ヨーロッパオオナマズは、最初に持ち込まれたエブロ川の主流に大量に生息していますが、相当上流にまで生息域を拡大するだろうと、我々は予想しています」

すでに数を減らしていた回遊魚を救うために

対策は依然として軽んじられている、と自然保護活動家は言う。主にスペインやイタリアでは、ヨーロッパオオナマズなどのキャッチ・アンド・リリースの釣りビジネスが活発で、政府や水産業者には駆除する意欲はほとんどなさそうだ。ヨーロッパオオナマズは、東欧ではよく食べられているが、ヨーロッパ大陸の他の地域では人気が出たことはない。

淡水生態系を保護し、通し回遊魚が直面するダムなどの脅威に対処するためには、ヨーロッパ諸国がより緊密に連携する必要がある、とサントゥール氏は強調する。また、ヨーロッパオオナマズを排除する取り組みも行われていない、と同氏は言う。

「私が懸念しているのは、ヨーロッパオオナマズがここに持ち込まれる以前に、すでに数を減らしていた回遊魚のことです」とサントゥール氏は語る。「ヨーロッパレベルで連携して保護計画を立てなければ、こうした種を救うのは手遅れになるかもしれません」

(文 STEFAN LOVGREN、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年1月22日付]

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