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気になるコロナワクチン 知っておきたい免疫との関係

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ナショナルジオグラフィック日本版

2020年、世界では8000万人以上が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断され、170万人以上が命を落とした。この1年あまりの間に、たとえば軽症者と重症者の違いなど、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への免疫に関する理解は飛躍的に高まった。一方で、免疫がどのくらい持続するかなど、まだ答えのわかっていない疑問も残る。

いよいよワクチンの接種が始まりつつある今、新型コロナウイルスに対してヒトの免疫がどのように働くかをおさらいしておこう。

わたしたちの免疫の強み

免疫の反応はウイルスの種類によってさまざまだ。A型肝炎や麻疹(はしか)のようなウイルスに対しては、わたしたちの体は生涯続く免疫を獲得できる。その一方で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は免疫を破壊し、抵抗力を劇的に下げてしまう。

「幸い新型コロナウイルスはA型肝炎に近いものです」と、米ジョンズ・ホプキンス大学のウイルス免疫学者のアンドレア・コックス氏は言う。「簡単なウイルスではありませんが、HIVのようなものとはほど遠いです」

20年5月14日付で学術誌「Cell」に発表されたある重要な論文では、回復した患者は新型コロナウイルスに特異的な抗体(侵入者を捕まえ、多くの場合これを中和するように設計されたタンパク質)を作ったのみならず、キラーT細胞、ヘルパーT細胞を活性化させたことが初めて示された。

キラーT細胞は、患者自身の感染した細胞を認識して破壊する。ウイルスの増殖を防ぐために、あえて自分の細胞を破壊するわけだ。一方ヘルパーT細胞は、このプロセスを助けつつ、抗体づくりを調整する。

「当初は、ウイルスがしっかりとした免疫反応を本当に誘発するかどうかについて、多くの不安がありました」と、この論文の共著者で、米ラホヤ免疫研究所の免疫学者アレッサンドロ・セッテ氏は言う。別の研究所に所属する免疫学者シェーン・クロッティ氏の協力を得て、同プロジェクトは、回復したCOVID-19の患者から採取したサンプルのさまざまな免疫反応を検出できる重要なカクテル試薬を設計した。

この力強い成果に、さらなる朗報が続く。回復した患者がどのように抗体を作っているかについて議論が活発にかわされていたものの、生活する中で抗体で本当に感染を防げるのかどうかは、まだわかっていなかった。それを初めて証明してみせたのは、米ワシントン大学のウイルス学者アレックス・グレニンガー氏らが考案したある実験だった。

COVID-19検査プログラムの一環として、グレニンガー氏らは商業用漁船の乗組員たちの血液を航海の前後に採取していた。乗っていたのは122人。その血液を調べてみると、帰港時には大半がコロナウイルスの陽性反応を示したが、出港前からすでに血液中にSARS-CoV-2への抗体を持っていた3人は誰も感染していなかった。このちょっとした幸運と優れた手法により、抗体が感染を予防する可能性が高いことを彼らは初めて証明してみせた。論文は20年10月21日付で学術誌「Journal of Clinical Microbiology」に掲載された。

「あれはすばらしい発見でした」と、米エール大学の免疫学者で、米ハワード・ヒューズ医学研究所の研究者でもある岩崎明子氏は言う。岩崎氏はまた、クロッティ氏とセッテ氏が20年11月16日付で査読前の論文を投稿するサイト「bioRxiv」に発表した、SARS-CoV-2に対する免疫反応が感染後6カ月以上、継続的に、多方面にわたって維持されたという論文にも言及した。

「これは本当によい知らせです。わたしたちの体はこれまで考えていたよりも長い期間、おそらく1年ほどは、再感染から守られると思われます」と、岩崎氏は言う。「ただし、感染に対する反応は個人によってばらつきがありますが」

わたしたちの免疫の弱点

COVID-19の軽症者が全員、免疫反応を長く維持して回復するわけではない。なかには重症化する人も出てくる。重症患者においてよく見られるのは、免疫系が暴走して、体を治すよりもむしろ傷つけてしまう例だ。

「人間の病気を引き起こすウイルスは、免疫を回避する優れたメカニズムを、少なくとも1つは持っているものです」と、クロッティ氏は言う。SARS-CoV-2の重要な戦術は、先天性免疫(自然免疫)の回避だと氏は考えている。先天性免疫とは、特異的な免疫(抗体やT細胞)が発達する前に対応する防御の最前線だ。

新型コロナウイルスは特に、I型(いちがた)インターフェロンと呼ばれる、先天性免疫系を活性化させるタンパク質の邪魔をすることにたけているという論文が、20年7月30日付の学術誌「Nature Communications」に発表された。このプロセスは、重症例と関連している場合が多い。

一方で、免疫反応には人によってばらつきがあることから、科学者らは、説明の難しい重症例に当てはまる別のモデルも提案している。

たとえば米ハーバード大学医学部の免疫学者シブ・ピライ氏は、リンパ節とその「胚中心」を研究している。胚中心とは、特異的な抗体を作るB細胞が増える小さな領域だ。ピライ氏は、彼らが検視を行ったCOVID-19患者には、この胚中心が存在しないことを発見し、20年8月19日付の学術誌「Cell」に発表した。

「こうしたことが起こるのは、ウイルスによってI型インターフェロン系が破壊されるためです」と、ピライ氏は言う。「そのため適切な胚中心が作られず、作られたとしても弱々しいものになってしまい、結局は長く維持される最適な免疫反応が得らません」

たとえ実際に侵入者に対して反応を起こすところまでたどりついたとしても、免疫系はそこで過剰反応を起こして、サイトカインストームなどによって自分自身を傷つけてしまうことがある。コックス氏はこの現象について、家に1000台の消防車を呼びつけてしまったような状態だと述べている。

「一部の症例においては、火災警報が鳴らされた後、それが適切に解除されないことがあるのです」と、コックス氏は言う。「結果として、家はボロボロになってしまいます。6時間も前に火は消し止められているのに、大勢の消防士によってそこら中が踏み荒らされるからです」

胚中心が最初から形成されない場合、B細胞はときとして、特定の侵入者に対して最適な抗体を選択するのではなく、問題に対して手当たりしだいの手段を講じることがある。

「短期的な防御が得られると同時に、短期的な自己免疫という代償を支払うことになるかもしれません」と、米エモリー大学の免疫学者で、自己免疫疾患を研究するイニャキ・サンズ氏は言う。サンズ氏らは、一部の重症患者にはまさにそうした反応が見られ、免疫系が患者自身の体を傷つけていることを20年10月7日付の学術誌「Nature Immunology」に発表した。これは全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患で起こっていることとよく似ている。

新型コロナウイルスが体内からいなくなった後まで症状が長引く患者が報告されている点も大きな懸念だ。これは成人や少数の子供たちに見られる免疫反応の異常とも関連している可能性がある。

「これを引き起こしている原因が何なのかは正確にはわかりませんが、わたしの直感では、何らかの自己免疫あるいは自己炎症性疾患が発生しているか、あるいは脳の重要な部分に感染が起こっているのではないかという気がしています」と、岩崎氏は言う。子供たちの場合、広範囲に及ぶ炎症は腸内感染とも関連があると考えられている。

さらなる答えを求めて

先にも述べたように、セッテ氏とクロッティ氏の研究では、患者の約90%が感染後6カ月間、複数の免疫反応を維持していたことが示された。とはいえ、懸念はあるとセッテ氏は言う。

「逆に考えれば、10%の人は免疫が持続しないということです。ですから、すでに感染したからといって、もう感染する心配はないと思うべきではありません」

明るい面もある。ワクチンは一般に、自然にコロナウイルスに感染した場合よりも狭い範囲の免疫反応を引き出し、そこからより多様な免疫反応が生まれると、岩崎氏は指摘する。そのためワクチンをより多くの人が接種することによって、再感染率を低く抑えられる。

「ワクチン接種によって人は非常に強く、長続きする抗体を持つようになります」と、岩崎氏は言う。「ですからわたしは、抵抗力を付与するうえでワクチンは自然感染よりも優れていると考えています」

ワクチンがよりよい免疫反応を生み出せる理由についてピライ氏は、体が注目すべき対象を絞れるからだと説明する。ワクチンを接種した人の免疫系は、SARS-CoV-2が細胞に結合、侵入するために使用するスパイクタンパク質だけに焦点を当てることができる。残された問題は、免疫がどの程度持ちこたえられるのかということだ。

すでにワクチン接種を受けた人の数はまだ少ないが、これから徐々に増えていくだろう。うまくいけば、ワクチン接種によって感染がすばやく抑え込まれ、ウイルスが変異を起こす機会が減り、それが長期的な保護効果に貢献してくれるかもしれない。科学者らは、英国と南アフリカで報告されている2つの変異株にもワクチンは有効だろうと考えている。

「これほど進化を的確に予測できたことは、いまだかつてありませんでした」と、グレニンガー氏は言う。「免疫を回避する変異をわたしたちは培養皿の中で監視できます。こんなにもゲノムの解析を行ったことは、歴史上ないからです」

変異、再感染、長期的な耐久性など、どんな問題にせよ、ワクチンと自然感染とでは、免疫の反応が異なる可能性が高い。

「現在、ワクチンからは良い結果が得られています。しかし、ワクチンによって長持ちする免疫防御が得られるかどうかについては、データを集める必要があります」と、セッテ氏は言う。

新型コロナウイルスの免疫反応に関する研究を進めるために、米国立がん研究所は政府の支援により「SeroNet」と呼ばれる新たな取り組みを推進し、特別な資金提供を受けた血清学研究所8カ所をつなぐネットワークを形成している。

SeroNetはまた、免疫反応を評価する標準的な試薬や管理法を提供する予定だ。コックス氏はこれについて、個々の科学集団がそれぞれ独自のセーターを編むことから、全員で一つのパターンに従って編むことに移行するようなものだと表現している。

コックス氏は言う。「これによって、わたしたちはそれぞれの分析結果を比較することができます。そうすれば、集団の中で免疫がどのように発達しているかを正確につかめるでしょう」

(文 FEDOR KOSSAKOVSKI、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年1月10日付の記事を再構成]

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