BLMで撤去対象に 米国のモニュメントが称えるもの

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/2/7
ナショナルジオグラフィック日本版

根深く残る人種差別に抗議する声が高まるなか、奴隷制を守ろうと160年前に合衆国に反逆した南部連合をたたえるモニュメントが撤去され始めている。ナショナル ジオグラフィック2月号では、米国各地に残るこうしたモニュメントと、何を目的にモニュメントが各地に作られたのかをリポートしている。

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 ジョージ・フロイド氏が警察官の膝に押さえつけられて亡くなるのを見て、あれほど大勢の人が強い反発を示したのには、明らかに何かしらの理由があった。

 それはフロイド氏を殺したのが、本来は市民を守るべき警察官だったからかもしれない。また多くのアフリカ系市民が、以前から警察に目を付けられ、不当な扱いを受けてきたと感じていたからかもしれない。あるいは、新型コロナウイルスの大流行によって、社会にいら立ちや不満が高まっていたからか。このウイルスの犠牲になるのは、とりわけマイノリティーや低所得者層が多いのだ。

 フロイド氏の死から5カ月間で、100件を超える記念碑やシンボルが公共の場から移動もしくは撤去された。これは近年にない動きだという。

 だが、そもそも数百もの記念碑やシンボルが作られ、配置されたというのは、どういう経緯だったのか? 南北戦争当時にはなかったアラスカ州やモンタナ州にまで、南部連合のシンボルがあるのは、なぜだろう?

 そうした疑問の答えを探してたどり着いたのが、バージニア州リッチモンドに本部を構える「南部連合の娘たち」(UDC)という団体だ。

 この団体は1894年に発足し、南部連合の「失われた大義」という解釈を広めてきた。その解釈において、奴隷制は南北対立の主要課題から外されている。中心メンバーは中・上流階級の白人女性で、高い資金調達力と強い影響力を発揮して、南部だけでなく全米に、南軍兵士のモニュメントを建てることに尽力してきた。

 UDCが南部連合の英雄たちをたたえる物語を作ることや、兵士たちの思い出を守ることにここまで固執するのはなぜか? ノースカロライナ大学シャーロット校のカレン・コックス教授は、その疑問に30年にわたって取り組んできた。

 「『南部連合の娘たち』は、過去の歴史にこだわっているわけではなく、未来の世代のために歴史をつくり替えようとしているのです」とコックスは話す。「UDCは、先祖の名誉を回復すること、そして、先祖のレガシーとして未来の世代に見せたいものだけを注意深く選んで、まとめ直すことに注力してきました」。全米各地の公共の場に、南軍の兵士たちをたたえる像や記念碑、公園があるのは、UDCによるモニュメント建立キャンペーンの産物なのだ。

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