ダメ出し上等? 社長が新入社員と対話を続ける理由通年採用時代の就活のトリセツ(12)

2021/2/8
ランチ会などで新入社員と対話する三井情報の小日山社長(写真左)
ランチ会などで新入社員と対話する三井情報の小日山社長(写真左)

こんにちは、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔です。新型コロナウイルスの感染拡大で生活が一変した2020年度も最終コーナーを迎えました。学期末のテスト対策やリポート課題に追われる日々ですね。3年生のみんなは、就職活動に本腰を入れるスイッチが入った頃でしょう。

大学がオンライン講義へと転換したように、企業もテレワークを導入した、変化に対応した1年でした。こうした社会変化の中で企業は今、組織をどう変えようとしていて、いかなる人材を求めているのでしょうか。ビジネスシーンで活躍するために、何をしておくべきか、どんなキャリア展望を描けばいいか、イメージをつかんでおきたいですよね。

そこで今回は、ランチ会やワークショップなどを通して新入社員と必ず対話する機会を設けているという企業のトップに話を聞きました。三井物産子会社でシステム開発を手掛ける三井情報(MKI、東京・港)の小日山功社長です。

入社5年目の葛原菜月さんにも一緒に話を聞きました。お二人にインタビューしたのは、次のような背景があります。「なんとなく」で入社してから、ファーストキャリア形成期に「将来のキャリア展望が描けない」とモヤモヤしている若手社員は多いのです。企業もキャリアも変化していくなかで、組織のトップが、今、何を感じているのか。そして、若手社員が何を思うのか。それぞれの生の声から、これからのキャリアのヒントを探りました。

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――社長として、最も大切にしていることは何ですか。

小日山 主体性を持ってキャリア形成していく人材の育成です。そのために、社員と日ごろから数多くのコミュニケーションをとることを意識的に行っています。今はコロナ禍なのでやり方を変えていますが、ランチ会などで新入社員とも直接話すようにしています。

――新入社員とはどんな話をするのでしょうか。

小日山 ランチ会では新入社員や中途社員に「うちの会社でおかしいと思うところ、どこ?」って聞いたりします。組織になじむ手前の段階で「おかしい」と思うところを聞くことは、経営者として組織を統括して方針や施策を考えていく上で、非常に参考になります。

葛原 入社前はこんなに話す機会があるなんて思っていなかったので驚きました。私が新入社員のときには、「自分の価値と会社の価値を考えてみよう」というお話が印象的でした。

小日山 社員一人一人が、まず何ができるか、「自らの価値」を考え、キャリアを主体的に捉えてほしいという意図です。上から言われて仕事をこなす、会社にキャリアを任せるという時代ではありませんから。人生100年だとすると、実は会社にいる時間って、1割ほど(1日の労働時間を8時間、60歳定年と仮定して計算した場合)しかないんです。

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