アイドルグループ出身で、現在はネット上で大きな影響力を持つインフルエンサーとして活躍する「ゆうこす」こと菅本裕子(すがもと・ゆうこ)さん。「モテクリエイター」を自称し、モテたい思いから生まれるアイデアなどを発信してきた。新型コロナウイルスの感染拡大でオンラインサービスが注目された2020年には「#ライブ配信の教科書」(日経BP)を出版するなど、ライバー(ライブ配信を手掛ける人)育成にも関心を広げている。「炎上」リスクもあるSNS(交流サイト)との付き合い方や「自分らしさ」の見つけ方を聞いた。
140字の世界は「難しくて面白い」
――SNSを始めたきっかけは。
「本格的に始めたのは12年にアイドルを辞めた後です。当時、ネットや雑誌などであることないことを書かれてしまい、自分の気持ちを発信するためにツイッターを始めました。『デマを払拭したい』くらいの気持ちで始めましたが、何かを発信したいという意識は少なからず持っていました」
「自分のやりたいことや好きなことって一人で考えていても分からないと思うんです。私はいろいろと発信していく中で『モテたいのかも』と気付くことができました。一番みんなとコミュニケーションが取れる方法はなんだろうと考えて、行きついたのが生配信です。15年から個人での配信を始めました」
――発信を他者に見てもらうことが自己分析につながったんでしょうか。
「私の場合はそうでしたね。ツイッターを始めたとき、140字で思いを伝えるのって難しくて面白いなぁと思ったんです。思ったことをパっと目につく言葉で発信しないといけない。例えば『きょうは美術館に行って楽しかった』だとしたら、『なぜ楽しかったのか』を掘り下げ、感想をキャッチーな言葉に落とし込む」
「『私モテたいんです』という思いを2000文字で書くと、自分のファンしか見てくれないけど、『モテるために生きてる』って書くと、より多くの人が興味を持ってくれる。新聞の見出しをつける作業に近いと思いますが、これが結果的に自己分析になりました」
――自己分析といえば、イベントに数人のファンしか集まらなかったとき、ゆうこすさんが「私の何がいけないと思う?」と聞いたというエピソードが印象に残っています。
「(ツイッターの)フォロワーが約6万人いたころのことですが、イベントを開いたらファンが3人しか集まらなかったんです。どうあがいてもカッコつけられないですよね。でも、こんなふうにプライドがへし折られることって、人生に何度もないと思うんです。この経験のおかげで、自分のことを大きく見せようとしなくなりました。20代で恥をかいても『この嘲笑は将来の糧になるんだ』と思えるといいですよね」
「私もまだまだ失敗しています。20年には、ツイッターで素を見せるつもりが暴言を吐いてしまい、反省しました。恥ずかしいことだと気付けたので、よかったのかなと思います」
――「モテクリエイター」を名乗り始めてから、つらかったことはありますか。
「『いろんな男をたぶらかしたいんですか?』などという反応もあって、落ち込みましたね。否定する人がいるだろうとは思っていましたけど……。そもそも『モテ』って、男性に向けるのが分かりやすい。でも私は、30人のクラスに1~2人はいるだろう『モテたいけどブリっ子できない』女の子に向けて発信したかったんです。クラスの残りの28人から否定されたとしても、1~2人の気持ちに刺さればいいと思って」