仕事忙しくても第六感は子どもに 息子の病が道変えたモデラート社長 市原明日香さん

会社員時代のファッションの悩みをビジネスにしたモデラート社長の市原明日香さん
会社員時代のファッションの悩みをビジネスにしたモデラート社長の市原明日香さん

女性向けにパーソナルスタイリングサービス「ソージュ」を展開するモデラート(東京・渋谷)社長の市原明日香さん。プロのスタイリストがカウンセリングし、一人ひとりにあったコーディネートの提案画像を毎月定額配信している。その背景には会社員時代に何を着ればよいのか悩んだという経験があった。長男の白血病で仕事を辞めたときは成長の道が閉ざされたと感じたが、2度の再発を経て元気になった今、「息子のおかげで想像もしなかった道が開けた」と振り返る。忙しい中でも常に働かせているのは「息子に向けた第六感」だ。

苦手なファッション、悩みをビジネスに

ずっと自分のファッションには自信が持てませんでした。東京大学を卒業して入ったアクセンチュアでは仕事一辺倒。週末に洋服を買いに行く時間もありません。若い人たちでBBQに行ったとき、自分一人だけビジネスカジュアルでかなり浮きました。ファッションセンスってどうやって身につけるのでしょう。中学、高校、大学と3回も受験し、勉強はたくさんしましたが、ファッションについては誰にも教えてもらったことがありません。それでも勉強と同じように正解を求め、間違えてはいけないと考えてしまいます。百貨店に行っても館内を歩き回るだけで何を買っていいのか分からず、帰ってしまうことが度々ありました。「あそこに行けばファッションの悩みを解決してくれる」、そんな信頼できるセレクトショップのようなところがあればいいのにと、ずっと思っていました。おしゃれを楽しむというより、ファッションにまつわる不便なことを解決したいという長年の思いが今のビジネスにつながっています。でも最初からこのビジネスを考えていたわけではありません。たどり着くまでには多くの困難がありました。

アクセンチュアでは働くというより学びたいという思いが強く、コンサルティングファームで経験を積んだ後に経営学修士号(MBA)を取りに海外に留学して、それから自分のキャリアを考えようと思っていました。MBAを受けるために入った社会人サークルで同僚だった5歳上の夫と親しくなり、思っていたよりかなり早く26歳で結婚しました。その頃にはルイ・ヴィトンジャパンに転職していました。コンサルティングの仕事も充実していたのですが、提案したことが必ずしも実行されるわけではなく、事業会社で力を試してみたいと思ったのです。

ただ、華やかな世界にはそれなりのドレスコードがあって、仕事でおしゃれをしなければいけないというのは衝撃でした。おしゃれな先輩に頼んで一緒に百貨店に行き、服を選んでもらいました。それまでは母と買い物に行ったくらいしか経験がなかったので「おしゃれな人ってこういう風に選ぶんだ」とずいぶん驚いたことを覚えています。先輩には私が選びそうなもの、私が好きそうなものではなく、私に似合うものを選んでくださいとお願いしました。そしたら自分が絶対手に取らないような、ミリタリー風のファスナーがついたスーツを選んでくれたのです。自分に合うのか自信はありませんでしたが、会社に着ていくとみんなが褒めてくれます。人に選んでもらうっていいな、と思ったのはそのときが最初です。その後は自分で着こなしを考えて先輩に見せ、時折ダメ出しをされながら徐々に学んでいきました。もともとストイックな性格だし、難しいものほど挑戦したくなってそれなりに頑張ったと思います。

ルイ・ヴィトンではマルチメディア部に所属しました。まだオンラインストアもない時代でしたが、お客様にどんな情報を届けたら反響があるのか、自分の提案がそのまま数字になって返ってくるのでやりがいがありました。

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「忙しくてもお味噌汁さえあれば」