
パエリアが特に充実しており、イカ墨を使ったものや魚介と鶏肉のミックスパエリアなど、常時20種類以上を取りそろえる。特に人気だという『イベリコ豚希少部位“セクレト”ときのこのパエリア』(2600円、税別)を赤ワインといただいた。セクレトとはその店の秘密(肉の部位など)を意味するそうで、ほんのりピンクに焼き上げられたイベリコ豚とキノコはうま味たっぷり。コメはだしが染み込んでいるが、粒が立って歯応えを残し、コクのある赤ワインにぴったりだ。
「外から見て『うわ、なんかスペインだ』と気づかれるお客さまが多く、オープン当初は予想以上の方に来ていただきました。終息後にぜひ、丸の内のスペインバルを味わいに来てください」(幸地さん)。なお、同店は現在、緊急事態宣言を受けて休業しており、2月8日から再開を予定している。
最後はぐんと上層階へ。9階と最上階の10階に入るモダンフレンチ店「THE UPPER(アッパー)」だ。レストランの位置もアッパーだが、シドニーの世界的デザイン事務所が手がけたというオシャレな内観もアッパー。大きく取った窓や最上階のテラス席からは周囲のオフィスビルがよく見えて開放感たっぷりだ。

『ミシュランガイド大阪2021』で二つ星を獲得、国際的な賞も受賞しているスターシェフの高田裕介さんをパートナーシェフに迎え、同店の徳島亨シェフが作る美しく独創的なフレンチが売りだ。
シグニチャーメニューの『ティアン・ド・クルジェット』(1650円、税込み)を食べてみた。鮮やかな緑と黄色がパズルのように組み合わされ、一見お菓子のようだが、野菜の前菜(ズッキーニの重ね焼き)だ。フランス南東部のプロヴァンス地方の郷土料理にヒントを得たという。

モダンな空間で食べるスタイリッシュな料理。思わず「東京にいるのを忘れますね」とつぶやくと、「まさに『世界を旅している気分になるレストラン』が同店のコンセプトです。海外旅行が難しい今、ぜひ当店でリフレッシュしていただければ。日本の女性客や近隣のビジネスマンが来店されていますが、近い将来、海外の観光客の方にも『丸の内で感じる新しい東京』を体験していただきたいです」(PRマネージャーの飯島大輔さん)。こちらも現在、緊急事態宣言を受けて休業中。再開は2月9日を予定している。
以上、丸の内テラスの飲食店を紹介した。お世辞抜きにどの店も味わい深くて新しい。ワクワクする場所で食べたり飲んだりすると、大きな活力が湧いてくるのだと実感した日でもあった。こんなに面白い場所が閑散としているのはとても残念。フードライターとしては1日も早くコロナ禍が終息することを願ってならない。
(フードライター 浅野陽子)